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目覚め

私は最近、「目覚めたい!」と思うようになった。

何に目覚めたいのかは、よく分からない。


才能に?

仕事への意欲に?

それとも、目標を見つけること自体を「目覚め」と呼んでいるのか。


どうしてこんな思考が浮かぶようになったのかは分からない。

でも、“きっかけ”だけは、はっきりしている。


――この前、酔っ払って電柱に頭をぶつけた時からだ。


ただ、酔っていたせいか、それから今日までのことは、どこか霞がかかったようで。



試しに、絵を描いてみた。

芸術に目覚めるかもしれないと思ったからだ。


キャンバスと絵の具を買い、花瓶をモデルに描き始めたが、まったく上手くいかない。

描けない自分にイライラしてくる。

……これじゃあ、息子のほうがよっぽど上手い。


次に、歌を歌ってみた。

しかし、家族の反応は「聞くに耐えない」だった。

頑張ったつもりだったのに。


じゃあ、スポーツなら?

まずは持久力を測ろうと、ランニングに挑戦。

だが、2kmも持たずに足が攣った。どうやら、走るのも向いていないらしい。


じゃあ、走らないスポーツをやってみよう。

思いついたのはゴルフ。


……結果は散々だった。

土ごと抉る、池に落とす、林に打ち込む、そして最後にはボールがどこかへ消えた。

――スポーツ全般、無理らしい。


それなら文章を書いてみよう。

ペンと紙さえあれば、どこでもできる。

川辺に行き、思いつくままに書き始める。


……これは、楽しい。

私には、これが合っているのかもしれない。


これが、「目覚め」なのか。



目が覚めると、そこはベッドの上だった。

周囲では、家族が心配そうに私を見ていた。

さっきまで、いろんなことをしていたはずなのに。

なぜベッド? ここは……病院?

部屋の隅には、医者らしき人の姿も見える。


後で聞くと――

電柱に頭をぶつけてから、ずっと意識がなかったらしい。


けれど、夢ってバカにできない。

だって私は、あの電柱と引き換えに、“書くこと”に目覚めたのだから。

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