episodeⅥ
「クソ人間コラァ!」
「ワシらの森に何の用じゃー!」
「生きて去ねる思うなやボケー!」
5匹のラフランサーは、槍を振り回しながら、汚い口調で向かってくる。
「アルフ、武器を持った魔物は厄介だぞ!前に教えた通り立ち回れ!!」
「はいっ!」
ラフランサーの1匹は、柄に近い方を握っている手の肘を引き、水平に構えた。
「これは……刺突だ!」
僕はサイドステップで右へと大きく移動し、槍の穂先は空を突いた。
「んなっ!?」
ラフランサーは困惑するが、再び槍を引いて戻そうとする…しかし
「遅い」
横へ難いだ僕の剣は、ラフランサーの胴体を真っ二つにしていた。断面から果汁と甘い匂いが飛び散る。
「やった……」
おじさん曰く、槍はリーチこそ長いが達人でもない限り動作が大振りになるため軌道が読みやすい武器である。水平に構えれば刺突、垂直ないし斜めに構えれば斬撃が来るため、先回りして避けるなり防げばいいのだ、と。
「上出来だ、アルフ!」
おじさんはラフランサーBの斬撃に対し、片手で穂先の付け根あたりを受け止めて握り、もう片方の手に握った剣でラフランサーCを斬りつけ、掴んでいた槍ごとラフランサーBを釣り竿のように持ち上げてDへ激突させた。僕が1匹倒す間に一瞬で3匹倒すなど、歴戦の戦士の力を見せつけられる。
「残り1匹はお前が倒してみろ!」
おじさんに言われなくともそのつもりだ。こんな梨に苦戦していては大魔王を倒すことなど夢のまた夢だから。
「人間にしちゃあやるじゃないか……」
ラフランサーEは、落ち着いた低い声で言う。よく見ればこの梨、顔だか胴体だかのボデイには傷跡が沢山あり、手にした槍も木と石で出来たものではなく、柄も穂先も金属製じゃないか。
「アルフ、気をつけろ。そいつは群れのボスだ!戦いの経験を積んで成長した個体だぞ!!」
モンスターの中には、時々こういった個体が現れるのだという。ゲームでいうところの、 レベルアップした敵ってとこだろう。
「ククク……吾輩が他の梨どもとは違うことに気付いたか。だが、もう遅い。纏めて地獄へ送ってやるぞ人間共!」
他の梨たちに比べて知性を感じさせる口調のラフランサーは、そう言うなり槍を構えて僕の方へと突進してきた。
「食らえ!疾風突!」
一瞬で距離を詰めたラフランサーの刺突は速かった。だが、
「だぁっ!」
僕は剣の腹で穂先を弾いた。
「なにっ!?」
勢いに任せて突進したラフランサーはすっ転ぶ。確かにこいつの技は速い。でも
「“アビス・スティンガー”に比べれば……遅い!」
僕は剣を構え直す。
「なぜ貴様のような人間如きが、かの魔槍伯の技を知っているのだッ……」
田舎の雑魚モンスターとはいえ、魔槍伯コホリーンの存在は知っていた様だ。そう言いながら、ラフランサーは再び刺突を繰り出してきたが、僕は“前の周”で、最強の槍使いと戦い、 最速の技を見ている。もはや、こいつの刺突など遅く見えるぜ。
僕は右足を半歩退き、上半身を90度捻る最低限の動きで攻撃をかわした。そして、大振りの一撃を叩き込むと、ラフランサーは縦に両断されていた。
「凄いじゃねえか、アルフ!」
おじさんは拍手で僕を賞賛した。自分でもびっくりするほど体が自然に動いて敵を倒していた。
「おじさんの指導のお陰だよ」
それは嘘ではない。が、そればかりではない。僕の中では、前の周での経験が潜在的に受け継がれている様だ。レベルアップもステータス数値も無い世界で、僕が強くなる為には地道に修行を続けるしかないのだった。




