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episodeⅣ

 僕がおじさんから最初に習ったのは、剣の持ち方、姿勢、刀身や鋼・柄など各種の名称や役割だった。剣道の竹刀や野球のバット、ゴルフのクラブなんかも、こういった基本から教わるのだろう。やった事ないけど。


 両手で柄を握り、臍の前辺りに構えて足を踏み出しながら持ち手を上げ、振り下ろす。後ろに避がる時も同様。その単調な基本動作を何度も繰り返す。


 おじさんは、息を切らしながら木剣を振るう僕を黙って見ている。


「そこまでだ」


 ようやく口を開き、一連の動きを止めさせた。


「思ったより筋が良い。アルバートの倅で聖竜様の加護を受けた一族の血筋か…それともお前個人の才能か」


 褒められた。現実の世界では木刀すら振ったことはないというのに。


「だが、実際の剣ってのは金属の塊だ。もっと重いし、敵は避けたり防いだり反撃もしてくる。実戦ではまだまだ使い物にはならん」


 おじさんの言うことは至極尤もだろう。


「剣の上達には大切な事が幾つかあるが、俺は特に二つの事に重きを置いている。一つは鍛錬を怠らないこと。もう一つは……」


 一拍置いて、おじさんは再び口を開く。


「アルフ、剣のことは好きか?」


「えっ」


 思わず聞き返してしまった。

 中世の騎士も戦国の武士も、主な武器は馬上でも扱える槍が多く、剣や刀は副武装(サブウェポン)的な扱いだったと、本だかネットだかで読んだことがある。   

 そして銃器が普及すると、ますます刀剣は武器としての役割を失ったことも。この世界には槍も銃もある。何ならロボットや飛行船がビームすら撃つという、我ながら小っ恥ずかしい世界観だ。でも、僕 =アルフレッドの武器が剣である理由は一つ。


「好きだよ。かっこいいから!」


 カッコイイ。それは男の子がものを好きになる動機としては充分であり絶対だろう。

 武器を使う漫画やゲームの主人公は人間だろうが巨大ロボットだろうが、ほぼ刀剣を使う。槍や斧や弓矢は勿論、銃器よりも圧倒的に多い。実践では槍が強いとか銃が便利とかは関係ない。かっこいいから剣なんだ。


「そうか。結構結構」


 と、おじさんは若干だが笑った。


「もしも、お前が“人や魔物を殺せるから”という理由で剣を好きだと言うのなら、俺はお前に剣の扱い方を教えるのはやめただろうよ」


 そして、おじさんは更に続ける。


「俺もアルバートも、冒険者に、戦士に、強い存在に憧れたから剣を手に取った。それはお前の言う“かっこいいから”と変わらんだろうな」


 僕は、自ら発した答えを鼻で笑われる覚悟だった。でもそれは杞憂で、おじさんは男の浪漫を解ってくれる人なんだ。だから父アルバートと違って未だに独身なのかもしれないけれど。


「しかしだ、剣を愛する理由をもう一つ持ってくれ。それは、剣で誰かや何かを守ることが出来るということだ」


 その“誰か”は仲間でも家族でも恋人でもいい、“何か”は宝物でも平和な暮らしでもいい…… おじさんはそう言って、この日の修行は終わった。



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