episodeⅡ
ーインゼルヴェルツェル王国領ツワーノ村
王国領の端に存在する小さな村・ツワーノ。ここが僕ことアルフレッドの生まれ育った地だ。その生家にあるベッドで目が覚めたところから、僕の新たな一日 (ニューゲーム)がスタートした。
「ステータス、オープン!」
朝一番の一声だった。しかし、目の前に半透明のウィンドウが現れることは無い。レベル、パラメーター、スキル、アイテムボックス等……便利で都合のいい設定は全て無くなっている。
「アルフ、起きてるの?朝ご飯出来てるわよ」
ドアの向こうから、この世界での僕の母にあたる人物の声が聞こえる。ひとまず、アルフレッド・ザン・社としての生活を始めることにした。
「続いてのニュースです。ヒルマウント公国にてモンスターが大量発生し、甚大な被害が……』
木造のファンタジックな家屋に似合わぬ薄型液晶テレビから流れる音声。そういえば、こういう世界観だった。
「あらやだ、物騒な世の中ねえ」
「アルフが大学を出て大人になるまでに、平和な世の中になるといいが……」
と、両親。そうか、大学まであるのか。この世界は。
「父さん、母さん、僕たち社家の人間は、聖竜様の力を受け継いでいるんでしょ?それなら……」
「お前が魔王と戦う、とでもいうのか?」
僕が言い終わる前に、父の言葉がそれを遮る。
「アルフ、ヤシロ一族が大いなる力を受け継いでいたとしても、我々が……ましてやお前が過酷な戦いに身を投じる義務は無いんだ」
「そうよ。我が子を、そんな危ない目に遭わせられるものですか」
両親の言い分は、家族を想う大人としては尤もな意見だろう。でも、僕は…僕が立ち上がらなきゃいけないんだ。この世界を壊そうとする大魔王が、もう一人の僕なのだから。
「そうだね……ごめん」
僕は素直に食い下がる。ここで両親と揉めたって、何にもならないのだから。
だからと言って、諦めたわけじゃない。指を咥えて世界が滅ぶまで待っていては、自らを犠牲にして時を戻した聖竜様たちの行為が無駄になってしまう。
あと一年。大人になった僕がこの世界に転生してくるまでに、僕は勇者として戦える様にならなければ……
そのためには、体や技術を鍛えるしか、ないのか?
小中学と帰宅部で、格闘技もケンカも経験したことのない僕が、人や獣はおろか、魔物と戦わないといけない……ゲームに慣れた脳では簡単に思えるかもしれないが、実際にやる立場となれば、かなり大変な事じゃないのか。
しかし、どうやってただモンスターを倒してりゃ経験値が入ってレベルが上がって強くなるという世界ではなくなっているというのに。
それでも、やるしかない。別に、この世界でアルフレッドをしている僕が死んでも現実世界で中学生をしている僕が死ぬわけじゃない。
ただ、僕が作った世界を大人になった自分に否定され壊されるなんて、死んでも嫌だから。




