第拾肆話 運命の子(チャイルド・オブ・フォーチュン)
「信雄よ、“物語”というのはなぁ…”生き物”なんだ」
ヤンセがいきなり語り出した。
「実際に命があったり、生物学的な動植物だったりするワケじゃあない。だが、親たる作者が設定や展開という糧を与えればその分、成長してゆく。生き物であり“子”なのが、物語なのだよ」
成る程、例え話か。
「全ての物語は親の育て方次第で、それぞれ違う姿へと育ってゆく。その黒歴史ノートはお前と、この物語の“母子手帳”でもあるのだ」
回りくどい言い方だな。何が言いたいんだ?
「創作者にとって作品は子共……お前はこの物語を“滅ぼす”と言った。即ちそれは、我が子を手に掛けるという意味でもあるのだぞ?」
にやりと笑うヤンセ。
「それは、あくまで“例え”だろう」
俺は嫁も子もいないまんま死んだんだ。子共を例えに出されても、解るものかよ。
「そうだな。だがなぁ、親の気持ちは解らんでも子の気持ちは解るだろう?お前は親に黒歴史ノートの中を見られたかもしれないと思った時、どう思った?」
「死にたいと思った」
というかマジに死んだ。
「子というものは、割かし早い段階から親から口出しや干渉される事を嫌う。この世界が、お前による“干渉”から“抵抗”した事で起こったのが、物語の“動き”さ」
つまり、この『エターナル・サーガ』の世界には意思があって、生みの親たる俺でさえ思い通りには出来ないということか。
「……解ったよ、ヤンセ。今、俺のやるべきことが」
俺は、黒歴史ノートの表紙だけを捲る。
「俺は、今一度、こいつと向き合う! 1からこのノートに書かれた事を読んで理解するんだッ」
文字通り、1ページ目から“漆黒の聖典”に書かれた内容を読み、感じ、触れる、作品が子であるとするなら、親は子に寄り添い、対話するべきだろう。自分の考えを一方的押し付けでは駄目だ。少なくとも俺に子供がいたら、そんな親でありたい。俺は最初のページに目を通す。
永遠の神話……神々の箱庭は、かつて8匹の竜達によって統治されていた。8竜のうち一匹、闇竜は、魔界の王ドルパゴスと結託し、フォーゲルニームン帝国を滅ぼした。残った7竜達は一人の人間の子にその力を託す。その名はアルフレッド・ザン・社……
「なあ……やっぱり向き合うの、やめていい?」
覚悟はしていたが、1ページ目から恥ずかしすぎる。
「我慢しろ、それを書いたのはお前なんだから責任を持て!」




