第拾参話 大魔王の城(フォートレス・オブ・サタニコ)
─魔王城改め大魔王城
かつて栄えた人間達の都・フォーゲルニームン帝国。魔王ドルパゴスら魔族の手によって滅ぼされた末、現在は首都ヨーナゴにラストダンジョンたる大魔王城が聳え建っていた。因みにフォーゲルニームンはドイツ語で『鳥取』、ヨーナゴは米子のもじりだ。
「大魔王サタン様のご帰還~~ッッ!!」
門番の魔族が高らかに言うと、あらゆるモンスターの群れが俺達を出迎える。先頭をコホリーンとハークレスの武闘派二人が、俺の両隣をメディケールとショウが挟む形で、堂々と門をくぐる。ここは魔王城改め大魔王城。つまりは俺の城なのだから。つい昨日決まったことだけどな!
─城の最深部
RPGのラスダンでラスボスがいるのは、大抵城の地下深くだな、そういえば。
そこには禍々しいデザイン─例えるならピッコロ大魔王が座っていた骸骨をあしらったアレみたいな玉座と、そのすぐ側に一人の大男が立っていた。
「おお大魔王様!ついに魔界より降臨なされましたか!!このドルパゴス、一日千秋の思いで待っておりましたぞ!!」
こいつは魔王ドルパゴス。肥えた巨体は青い肌をしており、いやらしい顔のおっさんだ。 彼の言うところの魔界より降臨した俺─現実世界から黒歴史ノートへと転生した俺によって、ラスボスの地位からゾーマに対するバラモスや、ギャブ・ファーに対するファットバジャーの様なポジションに格下げとなった“前座魔王”でもある。
「うむ。余がおらぬ間、大義であった」
俺の労いにドルパゴスは、ははーっと頭を垂れて、先日まで自身がふんぞり返っていたであろう玉座へと、俺に座れと促す。
「ふー」
ついロマサガ2の皇帝みたいに一息つく俺。これまでに腰掛けた、どんな椅子よりも座り心地が良い。
「余はしばらく一人になりたい。貴様らは持ち場へと戻れ」
「はっ」
四天王達は各自が部隊を率いて侵略を任された地方へ赴き、ドルパゴスは俺が今居る一個前のフロアとかその辺で侵入者を待ち構えるのだった。
「……よっこいしょ」
俺は兜とマントを脱いでカブトムシ杖を床に置き、大魔王サタンの姿から佐丹信雄へと戻った。
そして、漆黒の聖典こと黒歴史ノートを取り出す。
「一時はどうなる事かと思ったが、こいつを駆使することで何とかなったな」
窮地に陥っても、こいつにちょちょいと設定を書き足せば、ピンチを打開出来る。ドラえもんもビックリなひみつ道具ときたもんだ。
だが、問題も幾つかある。
「コホリーンにハークレス、メディケールにショウ……」
新たに増えてしまったキャラクターの名前を反芻する。物語において、キャラクターを登場させたら、今度は“退場”のさせ方も考えねばならない。勢いでキャラクターを増やしても中途半端に退場させたり、特に理由も無く放置するなんてのはあまり好きではないのだ、俺は。後者に関してはドラゴンボールやこち亀という超名作ですら、ランチさんや戸塚巡査みたいな例があるが。
そして、もう一つ。
「俺が書き込んだ設定によって、物語に『予期せぬ“動き”』が生まれてしまう様だな」
没キャラクターであるショウを生み出したことで、ジークハルトに生き別れの弟がいた設定も生まれてしまい、対決時に再会イベントが発生してしまった。あの時、メディケールがショウを再び洗脳しなければ、ショウはラインハルトとして勇者パーティー入りし、俺達大魔王軍にとって脅威となっただろう。
「……このノートは便利アイテムに見えて、使い方を誤れば物語と俺の運命をマイナスに導いてしまうみたいだ」
と、俺がつい口に出すと……
「はははっ!気付いたみたいだな、この世界のカラクリに」
と、言いながら玉座の裏から突然現れたのはピンク色の髪をした男。
「ヤンセ!!」
彼の名はヤンセ・ライマン。俺をこの世界に転生させた“神”であり、俺以外で唯一、この物語の登場人物ではない存在だ。




