第拾話 目覚めのち破壊(アウェイク・アフター・デストロイ)
一翌朝
「どうしました?大王様、お顔色が優れませんが」
と、ショウが俺に顔を近づけて問う。
「いや、 大丈夫だ。気にするでない……」
俺が寝不足なのはショウのせいであり、俺自身のせいでもある。宿にチェックインした際、 一人用の部屋を取ったため、当然ベッドは一つ。しかし、ショウを顕現させたことによりべッドの数が足りなくなってしまった。
ショウは、「私は起きて大魔王様を護衛します」等と言ってはいたものの、見張られていると気になって眠れないので、一つのベッドに二人で寝ることを提案した。
しかし、女の子みたいな顔の美少年が同じベッドに入って寝息を立てていたため、別の意味で眠れなかった……というわけなのだ。
「では、参りましょう。大魔王様」
「うむ ……だがその前にショウよ、俺の事は大魔王ではなく名前で呼ぶのだ」
何故なら、人前で大魔王などと呼ばれているのを見聞きされたら、警戒されるか頭のおかしい奴らだと思われるからだ。
「畏まりました。ノブオ様」
姓の佐丹で呼ばせると、「サタン様」となり、大魔王様とあまり変わらないので、人前ではノブオ様でいいだろう。俺も人前では小脇に抱えた大魔王装備を着るつもりは無いし。
宿のフロントにチェックアウトをしに行った時だった。
「お客さん、困るよ。二人で泊まったんなら二人分の宿泊料を払わなきゃ!」
宿屋のオヤジに言われて、俺も一人分の料金しか払っていないことを思い出したし、オヤジのいうことも尤もだ。
「ああ、すまない。今払う……よ?」
硬貨の入った革袋を開けて、俺はまたも思い出した。所持金は2000ゴーラムから一度全滅して1000ゴーラムに減り、宿泊代の600ゴーラム減り、残りは400ゴーラムしかないことを………
「どうしました?ノブオ様」
もちろん金は足りない。どうする?ショウをここに人質として残し、その間に大魔王装備を武具屋に売って換金するか?というか、このクソダサマントや仮面に、でかいカブトムシの足は売れるのか?
「ノブオ様」
ショウが俺の耳元で囁く。
「こんな宿、ぶっ壊して宿代も踏み倒しましょう」
と、おそろしい事を言うではないか。
「だ、駄目だそれは」
「何故です?人間どもは我々大魔王軍に滅ぼされる存在なのです。大魔王様がそんな奴らに何を気遣われましょうか」
言われてみれば、俺もショウも敵キャラ(ヴィラン)側なのだから、そうすればいいのだが、
「今の余は、一般人のサタン・ノブオとして極秘に人間社会の視察をしておるのだ。我々の正体が人間どもに知られるわけにはいかん!」
と、尤もらしい言い訳をするが、俺にはまだ人間を手に掛ける心の準備が出来ていないのだ……
「おい兄ちゃん、さっさと払いなよ、違約金含めた1000万ゴーラムをよ!」
と、宿屋のオヤジ。何だその小学生が考えたような馬鹿げた金額は!?
「どうしても払えねえなら、そっちの“お嬢ちゃん”の体で払ってもらおうか?そしてオメーは内臓でも売ってもらうがな!!」
オヤジの邪悪な笑みとふざけた言動で理解した。この宿屋は客に因縁と暴利をふっかけて裏で悪どい商売をしているのだろう。
「おい、オマエら!」
オヤジに呼ばれてカウンターの奥から三人の男達が現れた。
「ああっ!?」
と、俺。なんと、そいつらは昨日、森で俺を殺した盗賊達じゃないか。
「げへへへ………………」
と、汚い笑みを浮かべる盗賊達に、俺は怒りと恨みを思い出し、
「嘗めた真似をしてくれるな人間ども!この大魔王サタン・ノブオ様を陥れようなど1000万年早いわ!!」
と言い放ち、気が付けば大魔王のクソダサマントと仮面を装着した俺は、カブトムシ杖の先端をオヤジと盗賊達に向けていた。
「ショウよ、前言撤回である!こやつらに大魔王軍を嘗めた報いを受けさせよ!!」
「……御意に!」
ショウは頭巾を被り、二挺のナイフ拳銃を構えた。俺は大カブトムシの脚こと“大魔王の暴虐"に向かって叫ぶ。
「終世大爆発!!」




