表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ファーストコンタクト

作者: 耕路

お気に召しましたら評価いただけますと幸いです。

 初めはノイズと思われた。アルゼンチンの電波天文台が受信した規則性のある波長の短いサブミリ波のなかに、メッセージと思われる信号が読み取れたのである。信号はコンピュータで変換された。その記録には電波を発信した相手、知的生命体と思われる発信者の地球へ向けた呼びかけが存在していた。

「私たちは、あなたたちのいう、太陽系の外側の惑星の住人です、あなたたちの宇宙へ飛躍する活動は、ずっと観察していました、あなた方と友好的な関係を築きたい。互いをよく知り、友情と親睦を育むために、こちらから親善使節を派遣します」

 この突然の申し出に地球では議論が沸騰した。親善使節とは名ばかりで、好戦的な意図を持ってやってきたら、どうするのか。

 そもそも未知の相手をどこまで信用できるのか。もっともな疑問だったが、各国の代表が国連で議論し、不安感を払拭するために、万一に備えて、武力による最低限の警戒は準備することになった。

 やがて、その交信相手の星から宇宙船がやってきた。大きな茶筒のような形をした宇宙船だった。地球側は、緊張しながらも誠意を持って、その異星からの客を迎えた。宇宙船は、北米の空軍基地に着陸した。扉が開き、中から現れたのは、二人の異星人だった。その様子は現地からの中継画面で全世界に伝えられ、人々は固唾(かたず)を飲んで画面を見守った。

 二人の人物は人間によく似ていた。すると、そのうちの一人が両手で奇妙なしぐさをした。

 異変が起こった。出迎えていた国連事務総長が、最初にその場に座りこんだ。続けて、各国大統領、首相、大使たちが、同じように座りこんだ。突如、宇宙船を囲んでいた人々は睡魔におそわれたのである。

 奇妙なことは続いた。中継画面を見ていた世界の視聴者も突然の眠気におそわれたのである。

 人々は、同じ夢を見た。甘味でそれまで経験したことのない、高揚感を感じる魅惑的な世界のイメージが夢の中で伝えられた。

 夢のなかで誰かが語りかける。自分たちは、地球の人々を見守る存在で、未知の意識を持つ生命体であると。

 やがて人々は目覚めた。

 気づくと、誰もが幸福感に満ちた経験を得ていた。

 宇宙船を取り囲んでいた人々の中から、一人の科学者が異星の人物に近づいた。科学者はそっと手のひらで異星人の手に触れた。そして額にも触れた。それは、人間に非常によく似たロボットだった。

 この人間を模したロボットを作った存在は何者なのか。

 その日からロボットと着陸した宇宙船が綿密に調査された。三年後、人類は恒星間宇宙船の技術を会得した。人類共通の遠大な外宇宙への探査計画の端緒となった出来事である。


読んでいただきありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ