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【SF 宇宙】

とあるおまじないの言葉

作者: 小雨川蛙

 

 私の家には代々伝わるおまじないの言葉がある。

 発音するのはとても難しくて、おまけにその言葉の意味は誰も知らない。

 私が知っているのはありとあらゆる存在が、このおまじないを恐れているというだけ。

 それは例えば悪い人間。

 それは例えば恐ろしい幽霊。

 それは例えばおとぎ話に出てくる異形のもの。

 全てがこのおまじないの言葉を恐れている。

 実は私もこの言葉があまり好きじゃない。

 口にすると何か、不思議な気持ちになるから。

 それは、気づいてはいけない事に気づきそうになっている。

 そんな気分に。

 ずっと、遠くに。

 もしかしたら、地球の外。

 あるいは、宇宙の外側かもしれない。

 いずれにせよ、想像できないほど遠くにある、何かに気づきそうになる。

 そんな気分になる。

 だけど、私は何か危機が迫った時にはこのおまじないの言葉を使い続ける。

 だって、命より大切な物はないのだから。

 だから、私も今日もおまじないを唱える。

「Azath……」

 ・

 ・

 ・

 ずっと、ずっと昔に。

 恐ろしい魔王がいた。

 あらゆる命がそれを恐れた。

 恐れ続けた。

 しかし、ある時。

 その魔王は深い、深い眠りについた。

 そして、魔王は今も眠り続けている。

 従者の奏でる奇妙な音楽を聴きながら。

 ある、まじないの言葉があった。

 そのまじないは『慈悲深く覆い被されている』という意味を持つ。

 そして、その魔王の名前でもある。

 この言葉をあらゆる命は恐れる。

 それは、僅かばかりも魔王の存在を知りたくないから。


 自身の名前がそのようなことに使われているなど知りもせず。

 今日も魔王は微睡み続ける。

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