厨二病○○襲来! 6
あけましておめでとうございます!
本年もどうぞよろしくお願いいたします(*^^*)
瘴気溜まりが発生したことと、その瘴気溜まりが急に大きくなったのは、恐らくトルデリーゼの存在の影響だろう。
引っかかっていた解明してすっきりすると同時に、トルデリーゼが瘴気の制御が出来なければ、この調子であっちこっちに瘴気溜まりが生まれるのではなかろうかと、一抹の不安も覚える。
……それに、ライナルトの呪いの件よね。完全に解けてなかったなんて……。
かつて呪いの影響で全身に痛みが走っていたみたいだけど、今はそれはないようだ。
呪いは解けていないけれど、わたしが瘴気の影響を浄化しているから、呪いが進行せずにいるという認識でいいのだろうか。
ライナルトは気にしないでいいと言ってくれたけれど、やっぱり気にしちゃうよ。
バルトルトさんは、聖女では呪いを完全に解くのは「難しい」と言ったんだもの。つまり、不可能ではないということよ。
……わたしの力が強かったら、ライナルトの呪いも完全に解くことができたはずなのよ。
ライナルトは今、どんな気分だろうか。
何ともないという表情を浮かべていたけれど、内心では傷ついているのかもしれない。
「ねえ、ギーゼラ、この後でライナルトの部屋に行きたいんだけど」
わたしは今、お風呂でギーゼラに頭を洗ってもらっている。
トルデリーゼが去って、わたしたちは改めてお見合いパーティーに参加していたお客さんたちに、魔王が去ったこととお詫びをして回った。
お見合いパーティーは中途半端な形で終わってしまったけど、みんな気分を害してはいなかったみたいだからひとまずほっとする。
魔人は天災扱いされるから、みんな仕方がないという認識みたい。
お兄様の婚約者探しは今後どのように行うのかはわからないけど、またお見合いパーティーをすることになったらぜひ参加してほしいわ。
「お嬢様、夜に殿方の部屋に行くのはどうかと思いますよ。まあ、今更ではございますが」
「そうなんだけど、ほら、ライナルトのうさ耳もまだあのままだし」
そうなのだ。
トルデリーゼたちが去ってライナルトのうさ耳を浄化して消そうと思ったのだけど、ライナルトがあとでいいと遠慮したのである。
お見合いパーティーのお客さんたちへの対応とかもろもろあって慌ただしかったからだろうと思うのだけど、ライナルトはあのうさ耳が好きじゃないから早く消してあげたい。
「そういうことなら、わたくしは何も申しませんけどね。ただ、お嬢様も大人になりましたね。ライナルト殿下のうさ耳を見て興奮しなくなりました」
いえ、心の中では結構フィーバーしてますよ?
ただ、ライナルト本人があのうさ耳のことが嫌いだから、顔に出さないように一生懸命自制しているだけです。
なんて言えば、ギーゼラにあきれられるから言わないけどね。
お風呂から上がって、お兄様開発のドライヤーで髪を乾かしたあと、わたしはライナルトの部屋に向かった。
「ライナルト、今いいですか?」
こんこんと扉を叩くとライナルトが開けてくれた。
ちょうどライナルトもお風呂から上がったばかりで、タオルで髪を拭いている。うさ耳があるから拭きにくそうだ。
「髪、わたしがやりますよ」
「ありがとう」
ソファに座ったライナルトの背後に立って丁寧にタオルドライをした後で、ドライヤーで髪を乾かしていく。
ライナルトの髪は柔らかいし、うさ耳もふわふわしている。
ドライヤーをかけていると、ライナルトが気持ちよさそうに目を細めているのがわかった。
「今日はお疲れさまでした。あんなことになっちゃって、びっくりしましたよね」
「ヴィルもお疲れ様。驚いたけど、攻撃的な魔王じゃなくてよかったね。まあ、なんかいろいろ、すごい子ではあったけど」
ええ、まったくですよ。
聖女を手下にして聖レーツェル国を乗っ取ろうなんて考える魔王は、トルデリーゼくらいなものだろう。
それ以前に、性格もいろいろヤバかったし、できることならもう二度と関わりたくないわね。
ライナルトの銀髪が艶々さらさらに乾いたところでドライヤーを止める。
そっと遠慮がちに黒い耳に触れた。
「これ、消しますね」
「……待って」
うさ耳に触れていたわたしの手に、ライナルトの手が重ねられる。
お風呂上がりのライナルトの手はいつもより暖かくて、なんかどきどきしてくる。
「け、消さないんですか?」
鼓動が早くなったせいだろうか、ちょっと声が上ずってしまった。
「消してはもらいたいけど、もう少し待って。……だって、ヴィルは、これ、好きでしょう?」
どきん、と鼓動が大きく跳ねる。
「な、な、なんで……」
「見てたらわかるよ。これが生えたときは、ヴィル、ずーっと見てるから」
……わたしのばかー!
誤魔化せていると思っていたけど思いっきりバレバレだったよ‼
ライナルトがくすくす笑いながらわたしの手をくいっと引く。
回ってこいと言うことだとすぐにわかったから、わたしはおとなしく彼の隣に座った。
ちょこんと座ると、ライナルトがふんわりと抱きしめてくれる。
……うぅ、やっぱりお風呂上がりの高い体温はドキドキするー!
だけどライナルトにぎゅーっとしてもらうのは好きだから、もちろん大人しくしていますよ。というかむしろわたしから抱き着いちゃうもんね!
おずおずとライナルトの広い背中に腕を回して、鎖骨のあたりにこてんと頭を預ける。
今日はいろいろあったけど、もう何か全部どうでもよくなるよ。あ~幸せ。
「ずっとこの耳が生えた状態なのはまずいけど、今なら好きなだけ触ってもいいよ」
「……いいんですか? ライナルト、その耳……嫌いでしょう?」
「好きか嫌いかと言われたら好きじゃないけど、でも、魔王の呪いがなかったらヴィルとこうしていられなかったかもしれないし、今となってはそれほど嫌ってわけじゃないんだよ。困ると言えば困るけど、ヴィルがちょっと触るくらいは全然大丈夫だから」
瘴気溜まりも今のところ他にはなさそうだし、魔王もいなくなったから、次にいつ耳が生えるかわからないでしょうと、自分で自分のうさ耳を軽く引っ張りながらライナルトが苦笑する。
……こ、こんなときだけど、ライナルトが自分でうさ耳を引っ張ってる姿、尊い!
触っていいと言われたので、そーっとライナルトの頭に手を伸ばす。
さっきドライヤーで髪を乾かしていたときは、ここぞとばかりに触りまくったけど、改めて触っていいと言われると緊張するわね。
「……ふわふわ」
くすぐったいのか、ライナルトが軽く眉を寄せて困った顔をしているけど、その顔もまた……いい。
……ああもう、なんでライナルトってこんなにカッコよくて可愛くて素敵なのかしら?
ぎゅって抱きしめられているこの体勢もまたいいのよね。
わたし今、これまでの人生で一番幸せかもしれない‼
この場にもしギーゼラがいたら、こいつらいったい何をしているんだと半眼になりそうなものだけど、今は二人っきり。誰の目も気にしなくていいもんね。
ギーゼラがそろそろ帰ってこいと呼びに来るまではこのままでいたい。
「ライナルト……好きです」
はあ、ほんと、好きが溢れる‼
ぽわーんとしながら囁けば、ライナルトの顔が真っ赤に染まった。
……ああっ、もう、もうっ! このピュア王子が愛おしすぎる!
「……俺も、ヴィルが大好きだよ」
ライナルトが照れた顔のまま、わたしの頭に手を伸ばして、くるんくるんの髪を指に巻き付けて遊びはじめる。
ひと騒動というには大きな騒動があったけど、お兄様のお見合いパーティーも終わったし、わたしたちもようやくシュティリエ国に帰れる。
シュティリエ国に帰国したあとは、目前にまで迫っている結婚式の最終確認をして……そして、当日を迎えれば晴れてわたしはライナルトの妻を名乗れるのだ。
前世でゲームのコントローラーを握り締めて二次元にときめいていたこのわたしが、リア充もリア充ですよ。人生何が起こるかわからないね!
……わたしはもう、一生ライナルトといちゃいちゃして幸せに過ごすんだもんねー‼
ライナルトの呪いが完全に解けていなかったことは心配だけど、わたしがそばにいれば、日常生活に支障は出ないはずだし、痛みもないと思う。
むしろライナルトにべったりと張り付いていられる理由ができたと思えば……悪くない、と思っちゃうわたしは、完全に頭の中がピンクに汚染されているのだろう。
「ライナルト、ずーっと一緒にいましょうね」
「うん。ずっと一緒にいようね、ヴィル」
抱き着いたままくすくすと笑いあって。
わたしたちは、どちらからともなく、ゆっくりと唇を寄せた――








