厨二病○○襲来! 4
ちょっと早いですが、メリークリスマス♪
みなさま素敵なクリスマスをお過ごしください!
わたしは楽しく仕事します(笑)
……この世界にも土下座文化あるのね~。
と、あきれすぎて思考をトリップさせたわたしとみんなは、場所を移すことにした。
誰もがぽかんとする中、おじい様が気を取り直したように「庭から移動しよう」って提案してくれたのよ。
おじい様は、いくら相手が魔王でも、十代前半くらいにしか見えない女の子が涙目で土下座をしているのは見るに忍びなかったらしい。
しかも、格好が格好だからね。
露出の高い服にマントを羽織っただけの女の子が土下座しているところを見られたら、どっちが悪者かわかったもんじゃないわ。
ダイニングに場所を移したわたしたちは、温かい紅茶をずずっとすすっているトルデリーゼを見やる。
「それで、一応訊いてみるけど、なんで聖女を子分にしたいの? 魔王と聖女なんて、水と油みたいなもんでしょう?」
魔王にとって聖女は天敵のはずだ。少なくとも、世の中ではそう思われている。
トルデリーゼは、目の前にクッキーに手を伸ばし。
「もぐもぐもぐ……。だって聖女を子分にした魔王なんて今までいなかったもの。カッコイイじゃない」
と、わけのわからないことを宣った。
「……どうでもいいけど、あんた、さっき盛大に舌を噛んでなかった? 痛くないの?」
「魔王は治癒力が高いからあんなのもう治ったわよ」
トルデリーゼは、べっと舌を出して傷が治ったことをアピールする。
「カッコイイかどうかは置いておいて、聖女を子分にして、あなたは具体的に何がしたいの?」
お母様が優雅にティーカップを傾けながら訊ねる。
するとトルデリーゼは、ダイニングの椅子から立ち上がると、ばっさあ~っと、マントをひるがえし。
「世界征服よ! 魔王になったんだもの、世界征服をするの!」
「世界征服って、具体的に?」
「え?」
まさか具体性を訊かれると思っていなかったのか、トルデリーゼはきょとんとし、それから腕を組んでうんうんと唸った後で、またマントをばさりとした。
どーでもいいけど、埃が立つからマントをばさばさやるのはやめてほしい。
「手始めに聖女を仲間にしたあとで聖レーツェル国に殴り込みに行くのよ! そして『ふっふっふっ、ここにいる聖女を殺されたくなければ、この国をわたしに明け渡しなさい! そして光栄に思うのね! ここは今日から新生魔王国になるのだから!』と宣言するのよ!」
また馬鹿なことを言い出したよ。
「あんた、魔王国が作りたいの?」
「そうよ」
「なんで?」
「なんでって、魔王なのよ? 王と名がつくんだから国がないとおかしいじゃない」
それは、一理あるようなないような。
「そしてわたしは新生魔王国の初代女王として君臨して、みんなで面白おかしく暮らすの! 女王なんだから王も必要よね? ということで、そこの……そこの、キュートなうさ耳男子をわたしの夫に……」
よし、やっぱりボコろう。
赤い顔してもじもじすんな‼
わたしが拳を握り締めると、お兄様が横からわたしの後頭部をばしりとはたく。
「やめろ。お前が話をややこしくしてどうする」
「そう言うけどお兄様、ライナルトはわたしの婚約者よ!」
「子ども相手にむきになるな!」
「大丈夫だよ、ヴィル。俺はヴィルのものだよ」
わたしとお兄様、そしてライナルトがわいわいと騒いでいるのを無視して、お母様がこほんと咳ばらいを一つした。
「百歩譲って魔王国を作るのはいいとして、そのあとでどうやって世界征服をするつもり?」
「決まってるわ。レツェル教とかいうふざけた宗教を撤廃して、世界中に魔王を神とする魔王教を広めるのよ!」
「魔王教って何かしら? 魔人たちの中で信仰されているの?」
「え? そんなわけないでしょ? 今思いついたんだもの」
……やっぱりこのふざけた魔王には鉄拳制裁が必要ではなかろうか。
だんだんおちょくられている気分になって来たのはわたしだけではないはずだ。
トルデリーゼはまたまたマントをばさりとやって、わたしを指さした。
「喜びなさいそこの聖女! あなたには魔王教において、初代魔聖女を名乗ることを許してあげるわ!」
魔聖女ってなんだよ。なんで聖女に「魔」がつくのよ。嫌に決まってるでしょう、そんな怪しげでイタイ名前の付く職業!
この頭のおかしい厨二病魔王、いったいいつまでここにいるつもりなのかしら?
もう疲れたし、さっさと立ち去ってくれないものかしらね。
「魔王国の王と魔聖女はゲットしたし、次は臣下を捕まえなきゃいけないわね」
おいこら、勝手にゲットしたことにしないでくれない?
そしてまだライナルトを自分の伴侶にするつもりなわけ? 本気で怒るわよ。
それに某ゲームでモンスターをテイムするかのように、臣下が簡単に手に入るわけないでしょう?
おじい様とおばあ様は、もはや話についていけないのか、それとも馬鹿馬鹿しくて相手にしていられないのか、お茶を飲みつつ完全に傍観者となっていた。
でも、呑気にお茶をすすっている場合じゃないと思いますよ。
この流れで行けば、その臣下と言うのはきっと――
トルデリーゼは、もうお決まりのマントばさあ~をやって、腰に手を当てると、ない胸を大きく反らす。
「決めたわ! ここにいる者たちを、我が国の臣下にしてあげましょう! 光栄に思いなさい! あなたたちは、今日から、この偉大なる魔王トルデリーゼ様に仕えることができるのだから‼」
……ほ~らね。
想像通りのことを言い出したトルデリーゼに、わたしは脱力感を覚える。
もうね、フルマラソンを走り切ったくらいの疲労感だわ。ま、四十二・一九五キロを走り切ったことなんて、前世含めて、人生において一度もないけどね。
「なあ、あの子の保護者っていないのかな」
お兄様もものすごく嫌そうな顔で言う。
女の子に優しいフェミニストのお兄様でも、厨二病魔王はさすがにストライクゾーンの遥か彼方に存在しているようだ。
「ほんとよね。ちょっと、保護者の監督責任だと思うわこれ」
「保護者にクレーム入れないとな」
「ね。どこにいるのかしら、この子の保護者」
こんな面倒くさい子を野放しにしているなんて、魔王の両親は何を考えているのだろう。
椅子に座り直してクッキーをばくばく食べはじめたトルデリーゼは、どこからどう見ても帰るつもりはなさそうだった。
まさかこのままうちに居座る気ではなかろうかと、いや~な予感を覚える。
「悪いけど、魔聖女とか言うのになる気もないし子分にもならないし、ライナルトはわたしの夫になる人だから上げないわよ。わかったらさっさと帰ってちょうだい」
「なんでよ‼ どうして⁉ わたしは魔王よ! 一体なにが不満だって言うの⁉」
「全部よ全部‼」
むしろどうしてそこまで自信満々になれるのか、謎すぎるわ。
「そのお菓子お土産であげるから、ほら、お家に帰りなさい」
「うわあああああん! 魔王を子ども扱いしたー‼ もう許さないわ! 子分にならないなら成敗してやる‼」
涙目で立ち上がったトルデリーゼに、さすがにお父様たちも表情を引き締める。
今まで呑気に付き合ってあげていたのは、あくまでトルデリーゼが攻撃してこなかったからだ。
さすがにこちらを攻撃してくるというのなら黙って見ていることはできない。
……イタイ子でも、お父様の見立てでは実力はあるみたいだからね。
涙目で睨んでくるトルデリーゼと、わたしたちの間に、ピリピリとした緊張感が漂う。
けれど、魔王とわたしたちが衝突するより先に――
「あの、旦那様。そちらのお嬢様の保護者を名乗る方が、お迎えにいらしたみたいですが」
ニクラウスがダイニングに入って来ると、微苦笑を浮かべつつ、そう言った。
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