聖女認定式と瘴気溜まり 9
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ライナルト殿下、改め、ライナルトとまた少し距離が縮まった(ただ見つめあって名前を呼び合っただけだけど)素敵な夜から一夜明けて。
わたしはすっきりと気分良く目覚めると、窓の外を眺めて「ああいい天気だわ~」なんて言ってみる。
「そうですか? 今朝は思いっきり曇ってますけど」
ギーゼラ。余計なツッコミはいらないわ。
わたしの目には都合よくフィルターがかかっているんだから邪魔しないで。
「どうでもいいですけど、早く支度をしませんと、朝食の時間になりますよ」
くそぅ、現実的なギーゼラのせいで昨夜の余韻に浸る暇もないわ。
まあ、ギーゼラの言う通り、のんびりしていたら朝食の席に遅刻してしまう。
「ギーゼラ、今日はとびきり可愛くしてね!」
「瘴気溜まりを浄化しに行くんですから、厚化粧したら汗で落ちて大変なことになりますよ」
わたしを可愛くする=厚化粧なんですね。いえ、わかってますけど……。
「…………ほどほどに、可愛くしてね?」
「わかりました。落ちても悲惨なことにならないよう、ほどほどに善処いたします」
ギーゼラはいつでも冷静だわね。
まあ、わたしが浮かれすぎなんでしょうけど。
今日は森の瘴気溜まりを浄化しに行くから、動きやすい服装をする。
木々が密集した中、ひらひらのドレスで歩き回るとあちこち引っ掻けて大惨事になるからね。ちゃんと騎乗服を持って来ていますとも。
わたしのくるんくるんの髪も、出発前に一つにまとめる予定である。
寒いからコートは着るけど、もちろん装飾品なんて身につけない。
……いいもん、別に。ライナルトはどんな格好をしていても可愛いって言ってくれるから。
はあ、それにしても「ライナルト」。
……いいわ。
呼び方ひとつでぐぐんと距離が縮まった感じがする。もっと早くそう呼べばよかった。
顔を洗って着替えてギーゼラに薄くお化粧をしてもらうと、わたしはそわそわしながらライナルトを待つ。朝、迎えに来てくれるって言ったからね!
いつもと同じ朝のはずなのに、ちょっぴり違うような気がするのは、昨日からの高揚がまだ続いているからだろう。
ギーゼラはあきれ顔で「お嬢様はすっかり恋愛脳ですね」なんて言っているけど、別にいいでしょ? 恋愛脳でも!
あ、でも調子に乗りすぎると引かれるかもしれないから、自制は大事だと思うけどね。
だけど今は、結婚前だけど蜜月状態みたいなものなんだから、少しくらいは大目に見てほしい。
コンコン、と扉を叩く音がしたので、わたしはしゅたっと立ち上がる。
ぱたぱたと、ギーゼラに怒られない程度の早足で扉に向かえば、ギーゼラが、今日ばかりは扉を開ける役目をわたしに譲ってくれた。
どきどきしながら扉を開けると、わたしの素敵な婚約者様が立っている。
「おはよう、ヴィル」
「お、おはようございます、ライナルト……」
見つめあうこと十数秒。
こほん、とギーゼラが咳ばらいをしたので、わたしたちはハッと我に返った。
「い、行こうか」
「はい」
ライナルトにエスコートされて、わたしはしずしずと歩き出す。
……ああ、甘酸っぱ~い‼
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