聖女認定式と瘴気溜まり 3
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なあんですってえええええ⁉
と、悲鳴を上げなかっただけ、わたし、偉い。
……マリウス殿下が、くっついてくるですって⁉ いやあ~‼
マリウス殿下は、王太子殿下らしく、名前だけの役職をいくつも持っている。
その一つが、第一騎士団の副団長だ。
まあ、マリウス殿下は、あれで能力値は高いので、名誉職と言いながらも副団長に足る実力はあるのだけど。
というか、一個隊じゃなくて、第一騎士団とマリウス殿下が動くって、いったいどれだけの大人数で移動するつもりよ!
一個隊は十人から十五人くらいの規模だが、第一騎士団となると、所属は百名を超える。
なにせ、第一騎士団は王都と周辺を担当地区としており、王族の護衛も担当する騎士団の中でもエリート集団なので、それだけ規模も大きくなるのだ。
ちなみに、騎士団の指揮下に兵士団もあるので、その人数を含めると第一騎士団で動かせる人数は数千人にものぼる。
さすがに兵士団までは動かさないでしょうけど、どんな大名行列だよ……、と開いた口が塞がらないでいると、宰相が慌てたように咳ばらいをした。
「第一騎士団とは申しましたが、全員ではありません。第一騎士団所属の精鋭三十名ばかりでございます」
三十名でも多いと思ったけど、マリウス殿下が動くなら仕方がないか。
ついでに、ついつい忘れそうになるけどわたしも今や王女という身分だし。
あと、ライナルト殿下はシュティリエ国の第一王子殿下。
……うん、三十名でも最低限の護衛だわね。数名の護衛をつけて向かおうって考えてたわたしの考えが足りてなかったわ。
わたしもライナルト殿下も魔術が使えるから、ついつい自分たちを戦力にカウントしてしまうけど、普通ならばわたしたちは守られる側の立場である。
何かあれば自ら進んで戦おうと考える方が間違っていた。
……わたしも、ライナルト殿下も、流れている血が血だからね。うっかりしちゃうよね。
と、言うことにしておこう。
何と言っても王子や王女、公爵家の嫡男という立場で魔王討伐に向かった人たちの息子や娘だから。
これは断れないなと、わたしは渋々了承することにする。
騎士団の精鋭たちはいいけど、できればマリウス殿下は外してほしいな~、というのは無理なのだろう。
他国の王女となったわたしや、他国の王子であるライナルト殿下にすべてを押し付けて、自国の王太子が高みの見物……とは、いかないもんねえ。世間的に。それこそ非難囂々だわ。
国を円滑に動かすためには、国民たちに向けて、王太子が頑張っているという姿勢を見せるのも大切なことなのだ。
パフォーマンスというやつである。
どうせラウラは動かないのだろうから、せめて王太子が動いておかないと、国民たちに疑心を抱かせることになりかねない。
……あ~、でも、いっきに憂鬱になって来たわ。
片道一週間。滞在日数を換算して、往復で二週間から三週間弱ってところかしら。
……ライナルト殿下の側から離れないようにしよ~っと。
おじい様もライナルト殿下も、マリウス殿下の名前を聞いて顔をしかめていたけれど、国の事情もわかるからこそ文句は言わなかった。
わたしは食べかけていたショコラタルトをやけ食いして、はあ、とこっそりため息を吐いたのだった。








