小さな違和感 10
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おじい様と騎士たちが駆けつけてきて、わたしは発見した瘴気溜まり(未満)を浄化した。
このままにしておいてロヴァルタ国に報告したあとで対処するかどうするかおじい様に判断を仰いだところ、国に報告をしても、恐らくこの地は後回しにされるだろうと判断が下ったのだ。
ロヴァルタ国王が浄化を急いでいるのは、国民たちにも発表してしまった北東の瘴気溜まりである。
浄化されずに放置されていることへの国民たちの不満が膨らまないうちに、さっさと消し去ってしまいたいのだ。
ゆえに、国民たちに発表されていない、まだ誰も知らない瘴気溜まり(未満)の浄化は、優先順位が低くなる。
そうなると、わたしの聖女認定式が終わり、北東の瘴気溜まりを浄化して戻って来てからの対応となるので、どんなに急いでも一か月近く放置されることになるのだ。
瘴気溜まりと呼べないくらい小さな瘴気の塊であっても、町の住人たちの生活に影響が出ている。
この瘴気の塊を浄化したからと言ってすぐに地下水が使用できるようにはならないが、早く浄化しておかなければそれだけ地下水の利用が再開できるのが遅くなるのだ。
ゆえに、おじい様の判断は「こっそり消しておけ」というものだった。
わたしも異論はないので、さくっと目の前の瘴気の塊を浄化したのである。
ロヴァルタ国に恩を着せるつもりはないけれど、瘴気溜まりになりかけていた瘴気の塊を発見したことは、おじい様がきちんと報告してくれるそうだ。
「地下水脈ごと浄化はできないですけど、瘴気の塊の大きさを考えると、大量の瘴気が溶け出しているわけではないと思うので、すぐに利用が再開できるようになりますよね?」
瘴気の塊を含め、瘴気の影響を受けていた範囲は全部浄化できた。
地下深くまでは無理だけど、水が変色するほどの影響はなかったので、溶けだしている瘴気も微量だと思われる。地下水は川のように流れていくので、そのうち、影響は消えると思いたい。
「しばらくは白魔術師を導入して水質検査をしてもらう必要があるだろうけど、根本である瘴気の塊が消えたからそのうち落ち着くと思うよ」
「そうですか、よかった……」
町に戻ったわたしたちは、大きなお風呂に水をためて、それをわたしが浄化した後でお風呂に入ることにした。
本当は町の水を浄化して回ってあげたかったのだけど、地下水が瘴気の影響を受けていると町人に報告するか否かは国の判断になる。わたしたちがうっかり喋っていい内容ではないので、聖女として浄化して回ることはできなかった。
この町にはこの町の領主がいるので、わたしたちが出しゃばって近くの町から飲料水の手配をすることもできない。
他国の人間が領主の頭上を飛び越えて援助なんてすれば、領主の顔を、ひいてはロヴァルタ国王の顔を潰すからだ。
つまり、わたしたちがこの町のためにできることはもうないので、今日は早めに寝て、明日の朝王都に向けて出立することにした。
あんなところに瘴気の塊が発生したことは引っかかってはいるけれど、ロヴァルタ国内のことはロヴァルタ国で調査することなので、わたしがいつまでも気にしていても仕方がない。
今日は浄化の力をたくさん使って疲れたので、ぼすんとベッドにダイブすると、わたしはあっという間に眠りに落ちた。
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あらすじ:
両親にも虐げられ、家族の中で孤立していた真面目女子のしおり。大好きだった祖母が亡くなり悲しんでいると――神社で狐の耳をつけた男性と小さな男の子に出会う。独りぼっちになってしまい、誰かと繋がっていたいと願うしおりは、ひょんなことから幽世から来た「おきつねさま」という青年・涼夜とその甥・光明と“疑似家族”を始めることに。しおりに恋人ができるまでの期間限定の家族ごっこだったけれど、次第に涼夜に家族以上の感情を抱くようになり……。








