小さな違和感 7
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ヴィル、脳内フィーバー中(笑)。
ちなみにですが、うさ耳復活要素は、ノベル①巻の加筆にて誕生しましたm(__)m
ちなみに城の裏庭の瘴気溜まりネタも書籍①巻の加筆文です。
WEB派の方は「?」となったかもしれません。すみません。
気になる方はぜひ、ノベル①巻をお読みいただければ、作者がとっても喜びます!
……うさ耳~~~~~~‼
久しぶりに見たうさ耳殿下に、わたしはくらりとよろめきかけた。
……うっさ耳! うっさ耳! うっさみ……じゃなくて!
えいやほいさと脳内で盛り上がっている場合ではない。
わたしは必死に煩悩を抑え込んで殿下の手を掴んで自ら引っ張り上げた。
殿下の頭にうさ耳が生えたということは、つまりこの水は瘴気に汚染されているということだ。
ライナルト殿下は長年魔王の呪いにかけられていたせいで、呪いが解けた今でも、瘴気を吸収しやすい体質なのである。
瘴気を吸収すると、呪いの名残でぴょこんとうさ耳が生えるのだ。
……なんて美味しい……だからそうじゃなくて! 煩悩退散っ!
「ライナルト殿下、水が瘴気に汚染されているみたいです。痛みはないですか?」
ライナルト殿下が自分の頭を撫でて確かめる。
「みたいだね。痛みはないよ、大丈夫。ヴィルの側だったら瘴気を吸収しても痛くないんだよね。ヴィルの力が痛みを相殺してくれているのかな? とはいえ、自分の頭にこれが生えるのは不思議ではあるよね。耳が増えたみたいで変な感じ」
久しぶりのうさ耳の感触に、ライナルト殿下は何とも言えない顔をした。
うさ耳激カワイケメンに萌えまくりのわたしは、ライナルト殿下の手を取って浄化の力を使う。
わたし的には美味しいが、この姿を他人に見られるのはまずいからだ。
ライナルト殿下の体に吸収された瘴気が浄化されると、頭に生えていたうさ耳はきれいさっぱり消えてなくなる。
決して口にできない本音をぶちまけるなら、もう少し久しぶりのうさ耳殿下を堪能していたかったが、こればかりは仕方ない。
ライナルト殿下も、うさ耳はあんまり好きそうじゃないので、「うさ耳きゃっほ~ぅ!」なわたしの脳内を知られるわけにはいかなかった。
……うぅ、我慢がまん。
わたしのお花畑な脳内を知っているギーゼラだけは、わたしが何を考えていたのかお見通しのようだけど……尊いとか、思ってないからね! ちょっとしか! そして拝まなくなっただけ成長したでしょう⁉
だからそんな可哀想な子を見るような目で見ないでちょうだい!
うさ耳うさ耳と盛り上がっている脳内をどうにか鎮静化させて、わたしは一生懸命真面目な顔を作った。
「どうして水が瘴気で汚されているんでしょう? 瘴気溜まりがあるのは国の北東ですよね。距離的に、この場所の地下水に影響が出るとは思えないんですが……」
「そうだね。ロヴァルタ国の瘴気溜まりは、まだ小さいものだと聞いているし、離れた場所の地下水に影響が出るとは思いにくいけど……、例の件もあるから」
「あ~」
わたしに一泡吹かせようと、マリウス殿下がしでかしたあれですね!
マリウス殿下はわたしを偽聖女だと決めつけて、パーティーでわたしに恥をかかせようと、可愛い兎を瘴気まみれにして浄化させようとした。
そのときの兎が、フロレンツィスカ(レンちゃん)なんだけど、そのレンちゃんを瘴気まみれにする際に、マリウス殿下はあろうことか、瘴気溜まりの近くから瘴気に染まった草木を王都に持ち運んだのだ。
そのせいで城の裏庭に小さな瘴気溜まりが発生するという目も当てられない事態になったのが、昨年の秋。
もし、城に発生した瘴気溜まりの影響が、王都周辺に出ていたと考えるなら、この地下水が汚染されていてもおかしくないのだが……。
「でも、時期的にちょっとおかしいですよね?」
城の裏庭の瘴気溜まりはわたしがすでに浄化済みだ。
去年の秋に発生した小さな瘴気溜まりの影響が今になって現れるのはおかしい気がする。
もちろん、地下水であるため、じわりじわりと地下に浸透した瘴気の影響が巡り巡ってここまで……という可能性は否定できないけれど、違和感は残った。
だって、瘴気溜まりが発生してすぐにわたしが浄化して消し去ったから、それほど影響を及ぼしたとは思えないんだもん。
「別に原因があるかもしれないですね」
「そう考えた方がいいかもね。この辺の地下水脈がどうなっているのかはわからないけど、順当に考えれば、近くの山からの水が流れ込んでいるのかな?」
「それだけじゃないかもしれませんけど、これまで通って来た町や村で水に関して何も言われなかったことを考えると、あの山から当たってみてもいいかもしれませんね」
調べたところで原因はわからないかもしれない。
だけど、瘴気の影響だというのなら、対処できるのは聖女だけだ。つまり、今この国にいるのは、わたしだけである。
「あの山を調べるだけなら一日あれば足りるでしょうから、おじい様に報告して出発を明後日にしてもらいましょうか。予定にも余裕がありますし」
「うん、そうしよう」
瘴気の影響が出ているとわかったのに、このまま知らん顔で通り過ぎることはわたしにはできない。
明日の調査でどこに瘴気の影響が出ているのか原因まではわからないかもしれないが、一番可能性が高そうな場所くらいは調べておきたかった。
もし明日の調査でわからなかったら、王都に到着した後でおじい様経由で陛下に調べるよう頼んでもらおう。
白魔術師たちが動いてくれれば、聖女認定式と瘴気溜まりの浄化に向かっている間に、どこに原因があるのかくらいは突き止められるはずだ。
……どうしてこんなところに瘴気の影響が出たのか気になるけど、考えるのは調べてからよね。
ライナルト殿下が配管の元栓を閉めて、わたしは浴槽に溜まった水を浄化する。
そして、わたしたちはおじい様とおばあ様に現状を報告するために浴室を後にした。








