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【書籍化】家族と移住した先で隠しキャラ拾いました  作者: 狭山ひびき
ラスボス☆ダ~リンは譲りません

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モテすぎるのも困りもの 4

お気に入り登録、評価などありがとうございます!

 大広間につくと、お父様に挨拶に来ていた大勢の貴族たちがいる。

 ドリンクも料理もすでに提供をはじめていたから、飲んだり食べたりしながら思い思いの時間をすごしているようだ。


 そろそろパーティーがはじまるので、一度提供していた料理などが下げられはじめて、新しいものと入れ替えられているのが見えた。

 わたしたちがしれっと大広間の中に混ざると、近くにいた人が気づいてにこやかに話しかけてくれる。


「新年おめでとうございます、ライナルト殿下、ヴィルヘルミーネ王女殿下」

「おめでとうございます、ブッシュ男爵。その、王女殿下というのは慣れないので、これまで通り普通に呼んでください」


 四十過ぎくらいの少しぽっちゃりな男爵は、ドジョウみたいな口ひげをいじりながら笑う。


「いやいや、王女殿下は王女殿下ですからな。ああでも、数か月後には王子妃殿下になられるのか」


 ちょっぴり揶揄い口調の男爵に、わたしが調子に乗ってライナルト殿下の腕にこてんと頭をつけて微笑めば、殿下もふんわりと笑ってくれる。


 このくらいののろけは許されるだろうと幸せオーラをまき散らしていると、わたしたちの周りに人が集まりはじめた。わたしのお友達もやって来て、口々におめでとうと言ってくれる。

 新年がはじまったことへの「おめでとう」なのか、わたしたちの婚約に対する「おめでとう」なのか……、「おめでとう」が飛び交いすぎてだんだんわからなくなってきたとき、お父様とお母様が大広間に顔を出した。


 続いておじい様とおばあ様、そのあとにお兄様が続く。

 お兄様は婚約者がいないので一人だが、大広間に入った途端に女の子たちに囲まれている。いつものことだ。外見だけならパーフェクトなので、とってもモテるのである。


 ……中身が伴えば完璧なのにね。


 お父様が珍しくきりっとした顔で、新年の挨拶と、これからこの国をどのように導いていくのか、目標のようなものを述べて、新年パーティーがスタートした。


 うちがパーティーを開くときにはいつもお願いしている楽団の皆様が、新年にふさわしい華やかな、けれどもゆったりと優雅な曲を奏ではじめる。

 格式ばったパーティーだと、やれファーストダンスだとかなんだかんだと決まりごとがあるんだけど、今日はほぼ無礼講に近い状態なのでそんなものはない。

 ただみんな飲んで食べて楽しんで行ってね、今年もよろしく、という趣旨のパーティーだ。


 現に王族席なんてものは設けず、お父様もお母様も、大広間の中をあっちにこっちにと移動してはお友達と話し込んでいた。


「カールはすごいね」


 義兄になるけど年はライナルト殿下より二つ年下のお兄様の呼び方は「カール」に落ち着いたようである。


 ライナルト殿下がお兄様の方を見れば、お兄様を中心に女の子たちが輪を作っていた。すごいのは下は十歳くらいの社交デビュー前の女の子から、上はおばあちゃん世代の女性までいることである。

 本来、社交デビュー前の子供はパーティーには連れて来られないものだが、我が家の新年パーティーは別。事前に連絡さえしてあれば同伴可能なのだ。ただし、子供が何かやらかした場合は親の責任になるので、教育が行き届いていない幼い子はなかなか連れて来られないけれど。

 だからこそ、お兄様の前にはいつもよりすごい光景が広がっているのである。


 子供だろうとおばあちゃんだろうと、お兄様は女性と名のつくものには、よほど嫌いな相手以外には全員に平等に愛想を振りまくので、まあモテる。

 モテる自分に酔っているお兄様は、女性に対するサービス精神も旺盛なのだ。

 笑顔の大盤振る舞いにぽーっとなっている女性の、まあ多いこと!


 ……前世では平平凡凡でまったくモテなかった反動なのかもしれないけど、さすがにあれはないわあ~……。


 お兄様があんな調子だから、全然婚約者も決まらない。

 何故ならお兄様が「まだモテ人生を謳歌したい!」と宣い、さらに「俺が誰かのものになったら世の中の女の子たちがショックで倒れる!」なんてふざけたことまで言っているからだ。

 どれだけ有頂天なんだよと言いたい。


 ……とはいえ、あながち冗談でもないんだろうけど。


 ふと、前世でトップアイドルが結婚したときのことを思い出す。

 ニュースでファンが本気で泣いている映像とかも見たことがあるし、ショックで仕事を休みましたというコメントも聞いたことがある。そのトップアイドルと何ら変わらない、もしかしたらそれ以上にモテるお兄様の婚約者が決まった暁には、とんでもなく大変なことになりそうだ。

 殺傷沙汰が起きなければいいけれど、と本気で心配になって来た。


「ダメですよ殿下、あれは決して参考にしてはいけないやつです」


 もしライナルト殿下がお兄様と同じようなことをはじめたら、わたしは本気で泣く。

 絶対に真似しないようにと釘を刺すわたしに、殿下がくすくすと笑った。


「俺はヴィルしかいらないよ」

「殿下……」


 ……ちょっと聞きました奥さんっ! わたしの殿下、最高すぎない⁉


 ああ、尊い! 

 拝みたい!

 お兄様も少しは見習え!


 な~んて言ったところでお兄様が聞く耳を持つとは思えないけどね。

 イケメンに生まれ変わらせてくれてありがとうと、日々神様に感謝しているお兄様は、たぶん死ぬまであのままだ。モテ人生を存分に謳歌したいらしい。もう勝手にすればいいと思う。


「あ、ライナルト殿下、あれですよ、お雑煮……じゃなくてお餅スープ」


 新しく運び込まれた料理の中に、赤い漆塗りのお椀が並んでいた。

 お椀まで作らせるとか徹底しているわ~と思いつつ、わたしとライナルト殿下は食事が並べられているテーブルへ向かう。

 見慣れないスープはみんなに警戒されていて、まだ誰も手を付けていなかった。ここは率先していただかなくてはならない。何せ、お餅がうちの国の特産になるかどうかは、みんなの評価にかかっている。


 ……お箸はさすがにない、か。お雑煮をフォークで食べるのは違和感あるんだけど仕方ないね。


 スープは、ハマグリっぽい貝の出汁だった。味噌はこの世界にないので澄ましだ。


 うん、いい出汁が出てる。懐かしいお味。

 まず汁を口にして味を確認した後で、フォークを使ってお餅を食べる。ライナルト殿下もわたしと同じように一口食べて「美味しいね」と表情をほころばせた。


「ヴィルヘルミーネ様、それはなんですの?」


 わたしたちがお雑煮に舌鼓を打っていると、顔見知りの子爵令嬢がやってくる。

気の弱そうな子爵令嬢は、お兄様の周りの陣取り合戦に敗れて、わたしたちの方に近づいてきたようだ。


「お餅入りのスープです」

「お餅……?」


 ご近所さんには配ったけど、まだ貴族の皆様には披露していなかったので、お餅の説明からしなければならないようだが……正直面倒くさいから、食べて判断してほしい。

 美味しいですよ、と半ば強引にお椀を押し付けたら、子爵令嬢が不思議そうな顔でフォークを手に取った。


「面白い食感ですけど、確かに美味しいですわね」


 と、子爵令嬢の高評価が得られたところで、一人、二人とまた人が集まって来る。


 お雑煮のPRは成功かしら?


 お雑煮コーナーの前にどんどん人が集まり始めたので、わたしたちは脇に避難することにした。このままでは囲まれて、お雑煮の説明をしなければならない羽目になりそうだったからだ。




ブックマークや下の☆☆☆☆☆にて評価いただけると嬉しいですヾ(≧▽≦)ノ




次は5/5、更新予定です!

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― 新着の感想 ―
Σハッ お兄様がモテモテで、第二部!完! なのか?(なお、ラスボスとかダーリンとかは誤字だった模様という強引なドリブルで突破を試みます。)
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