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20話 KICK BACK

 露草がほっぺにチューするかバックハグさせてくれないと泣き止まないと喚いたため、私は仕方なく露草の懐に収まった。私と露草の身長差もあり、私の体が露草にすっぽりと収まっているところがなかなか癪に障る。


「……ひっく……ひっ」


 泣き止んだはいいけれど先ほどからひきつけが止まらない。赤ちゃんかお前は。


「……ひっく……ひっく……ぅう」


 ……ああ、もう。なにか話題を振るか。


「……そういえば、私。箱根旅行の計画を立てていたんだけど、一人じゃやっぱ寂しくて。よかったら露草と日葵ちゃんも一緒に行かない?」

「……ふぇっ? 箱根? ……行く」


 速攻でひきつけが止まる。現金な奴である。


「箱根……いいですね。ここからなら電車で一時間くらいで行けますし」

「ああ。私車出すよ」

「「えッ!?」」


 急に踏みつぶされたカエルのような声を出す二人。


「な、なに」

「いえ、なんでも。そういえばアイリス姉さん十九歳だったな、と」


「……見た目良くても中学生くらいにしか見えないし、絵面的には完璧にアウトだよね」

「そうですよね。私、アイリス姉さんのこと二歳年上くらいにしか思っていませんでしたし。なんというか、違和感が凄いです」


「んね。忘れがちだけどアイリスたんは十九歳。あと一年で二十歳だよ。お酒飲んでるアイリスたんなんて想像できない」


「ですがアイリス姉さんは子供舌ですし、お酒が飲めるようになってもきっとジュースばかり飲んでいるのではないでしょうか」

「たしかに。どうせ今と同じ毎日ピルクル生活だよね」


「ですね」

「アイリスたんはお酒の代わりにピルクル飲んで、たばこの代わりにココアシガレットくわえてる姿のが似合うよ」

「……」


 それ以上言ったら今度は私が泣く番になる。


「ていうかそもそも、アイリスたんっていつの間に免許取ってたんだ」

「……まあ。露草と出会う以前に既に取ってた」


「へえ、そうだったんだ。家族とメイドさん以外の車に乗るのってわたし初めてかも。アイリスたんの運転楽しみだなぁ~!」


 日本に来たばかりの最初のころ、『洗脳魔法』を駆使して住民票やら戸籍やらを作っていたのは良い思い出である。免許はちゃんと車校(教習所)に通ったけれど。


「……とにかく。日付はおいおい決めるとして、箱根に行くってことは決定でいい?」

「はぁいっ!」

「大丈夫です。とても楽しみです」

「じゃあそういうことで」


 本当は一人で行きたかったのだけれど、よく考えてみれば私は日本で誰かと旅行をしたことがない。もしかしたらいい機会なのかもしれないな。



 数日後、旅行当日。


「じゃあ二人とも乗って。あ、荷物は後ろね」

「……アイリスたん、車持ってたんだ」「アイリス姉さん、車持ってたんですか」

「え? ……まあうん、一応」


 呆けている二人をよそに私は愛車、水色のラパンちゃんのドアを開ける。


「レンタカーじゃないんだよね? 今までどこに停めてたの?」

「そりゃあまあ。……駐車場を……借りて……?」


 うちのアパートは車を停めておけるスペースなんてないので、今までずっと私の『異空間収納』で保管していたのだが、そんなこと日葵ちゃんもいるこの場では言えるわけがない。


「ほら、そんなことよりも早く乗って」

「……はあ。じゃあよろしくねアイリスたん」

「よろしくお願いします。アイリス姉さん」


 どこか釈然としていなさそうだが、助手席に露草、後ろの席に日葵ちゃんが乗り込んだ。私も運転席へと移る。私はスマホを操作し車のスピーカーにつなぐと

Spotifyを開いた。

 アニソンキャラソン、最近のドラマの主題歌。


 back number、髭男、米津玄師、菅田将暉、ゆず、嵐etc……までが無造作に入れられた統一性のない世界一キモいプレイリストを再生する。


「ええと、旅館までのナビをつゆ……日葵ちゃんお願い」

「任せてくださいっ!」

「今こっち見たよね!? 言いかけてやめたよね!? なんで!?」


「……なんでって。事故りたくないし」

「どういう意味!?」


 ……うるさいな。


「シートベルト締めた? じゃあ出発するよ。あなたのそのー、むねー、のー、なぁ~かぁ~」

「それサビで人はねるやつだよ! 事故るやつだよアイリスたん! ちょっと古いしっ!」


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