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11話 異世界吸血鬼は学校の夢を見ない

「明日、わたしの高校で文化祭があってね? わたしのクラスはメイド喫茶をやるの」

「へえ」

「それでね? アイリスたんと日葵ちゃんも来てほしいなーって思って。どお、暇!?」


「すまないけど、私には富士山よりも高くて駿河湾よりも深いわけがあるから。文化祭には行けない。めんどくさい」

「最後に堂ヶ島のトンボロよりも浅い本音が出ちゃってるよ!?」


 だって明日は電撃大賞作を読んで、ポケモンのレートを三桁前半まで上げて、今度行く箱根一人旅の予定を立てなければいけない。大涌谷で卵を食べるのだ。


「日葵ちゃんは行けるよね!?」

「ごめんなさい露草さん。私も明日は一日塾が入っているんです。露草さんのメイド喫茶、非常に行きたかったんですけど……。よければ写真を送っておいてくれませんか?」


「……そっかそれは残念。写真めっちゃ送るね。ついでにお土産も!」

「ありがとうございます」


 それにしてもこの二人、あの日から本当に仲が良くなったな。まるで長い歳月を共にした幼馴染のようというか、戦場を共に戦い抜いた戦友のようというか。


「それよりもアイリスたん!?」


 瞬間、露草が私に詰めよってくる。


「な、なに」

「どーせ暇なんでしょ。暇なんだよね日がな一日中ゲームしてラノベ読んでアニメ見てるだけなんでしょ?」

「ぅ……」


 その通り過ぎてぐうの音も出ないが、それらは別に暇だからしているわけじゃない。私がしたいからしているのだ。


「だったら遊びに来てよ~! アイリスたんのこと友達に自慢したい~~!」


 文化祭を見に来てほしいんじゃないのか……。


「お願いだよ~! 後生だから~!」

「……」


 そこまでお願いされたら、流石の私も大した理由もないのに行かないのが悪く感じてきてしまう。……まあそれに、学校に興味がないわけじゃない。むしろある。私にとって学校とは、アニメやドラマ、映画や小説なんかでよく見る憧れの場所なのだ。


「……たしかに学校とやらには興味がある。私も古典部か奉仕部か隣人部を少し覗いてみたい」

「……いや、古典部はまだしもそんな部うちにはないよ」


「ないの!?」

「ないよ。……あっ。でもそういえば去年、彩芽が奉仕部と隣人部を作るんだーって躍起になってたっけ。活動目的があやふやだって理由で先生たちに却下されてたけど」


 その言葉を聞いて私は愕然とする。

 ……そ、そんな。奉仕部と隣人部が存在しないだなんて。フィクションは所詮フィクションでしかないということなのだろうか……。


「じゃ、じゃあただの人間に興味がない美少女は!?」

「いないね」


「炎髪灼眼の討ち手も!?」

「うん」


「手乗りタイガーとか冴えない彼女は!?」

「いない」


「も、もしかしてバニーガール先輩も……?」

「……いない」


「ロシア語でデレる隣のアーリャさんは!?」

「……いないって」


「だったらっ! 机は!? 授業中はみんな個々の机に向かって授業を受けるんだよね!?」

「……そう、だけど?」


 ……そ、それは本当なのか……!


「……よかった。この世のすべてが信じられなくなるところだった」

「アイリスたんは学校をなんだと思ってるの……じゃなくて!? 話が逸れまくってる!?」


「……はなし?」

「アイリスたんに文化祭来てほしいって話だったでしょ!」


 そういえばそんな話だったな。


「お願いアイリスた~ん! ほらっ、この前持ってったドーナツまた作ってあげるからさ~!」

「……」


「今度はオールドファッションだけじゃなくてポンデリングもつけるからぁ! なんなら白いポンデリングも買ってくからぁ~!」

「……」


「アイリスたんに好評だったガトーショコラも作るよ~!?」

「……はあ、わかった」


「なんならアイリスたんが好きなマカロンケーキも作って――ってマ!?」

「……マ」


「ほんとにっ!?」

「……ほんと」

「やったぜぇぇぇえええ!」


 ここまでお願いされたら行くしかないだろう。先ほども言ったが学校には興味がある。たとえ奉仕部や隣人部がなかったとしてもだ。それに少し。少ーしだけだが学校での露草も見てみたい……という理由も、本当に少しだけだがなくもない。

 そしてこれは余談だが、露草の作るスイーツは驚くほどに美味しい。


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