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9話 露草VS日葵 前編

「ではアイリス姉さん、お願いします」

「ん」


 一問目だ。日葵ちゃんの言う通り最初の難易度は控えめにしよう。


「じゃあ一問目、私が夕食後毎日している最近ハマっていることは?」


 さながらクイズ番組の出題者になった気分だ。そう思うや否や、ピンポーン、と早押し機が押される。……速すぎないか。見ると、日葵ちゃんがボタンを押していた。


「……はい、日葵ちゃん」

「アラジンストーブで焼きマシュマロを作ること、です」


 おぉ、正解だ。凄い。たしかに毎日焼いてはいるけれど、ノータイムでわかるものじゃないだろうに。


「日葵ちゃんせいか――」

「――はいっ!」


 すると食い気味に露草が手を上げる。そうか、付け足し権か。


「露草」

「付け足しで、アイリスたんがいつも意識してる焼きマシュマロの食べ頃は、軸からマシュマロがズレてきたとき! クラッカーでマシュマロを挟んでスモアにしたいといつも考えるけど、クラッカーはお腹にたまってたくさん食べられないから、アイリスたんはいつもマシュマロだけを食べてるっ!」


「……」

「……」

「日葵ちゃん! 付け足し権の使い方はこれでいいんだよね!?」

「そうですね。問題ありません。アイリス姉さん、露草さんに一ポイントです」

「……わ、わかった」

「やったぜっ!」


 露草は嬉しそうにガッツポーズをしているが、私はそれどころではない。


「……露草。なんでそんなことまで知ってるの。たしかにスモアのくだりはいつも考えてるけど口に出したことはないのに」


 私がジト目で問うと、露草はちっちっち、と人差し指を振る。


「甘いねアイリスたん。アイリスたんが考えていることなんてわたしレベルになれば表情を見るだけでわかるんだよっ! といいたいところだけど。これに関してはアイリスたんがいつも焼きマシュマロを食べてるとき、クラッカーとにらめっこしてるからだよ」


「し、してない!」

「いやしてたよ」

「してますね」

「……」


 していたらしい。


「……こほん。気を取り直して二問目」

「ああっ、誤魔化そうとしてる! アイリスたん恥ずかしいんだぁ~? 顔真っ赤だよぉ? アイリスたんってば、か~わ~い~い~!」


「それ以上言ったら今得たポイントはなしにするから」

「理不尽!?」


 どこで習ってきたのだろう。そのウザすぎる顔面に後でグーパンチすると誓い、私は早速二問目に映る。


「二問目、私が最近した無駄な出費は?」


 これは私の中では記憶に新しい出来事なのだけど、しかし毎日している焼きマシュマロよりは難易度が高いのではないだろうか。と考えていると再び即座に早押し機が押される。

 ……さっきから速すぎないか? 次に押したのは露草だった。


「ボードゲームのタイムボム! 確か一回もやってないのにお蔵入りしてたよね?」


 一応、正解だ。しかしこのゲームには付け足し権がある。日葵ちゃんを見やると、案の定露草に続いて早押し機を押していた。


「付け足しです。アイリス姉さんは人狼系のゲームをずっとやりたがっていました。そんな中でやっと購入した人狼系のボードゲームであるタイムボム。しかし人狼系のゲームは最低でも四人いなければ十分に楽しむことができません。アイリス姉さんが集められる人員といえば、アイリス姉さん自分自身、露草さん、そして私の三人しかいません。よってアイリス姉さんはタイムボムをやる人数が揃えられず、そのゲームはお蔵入りとなったのです」


「……せいかい」


 正解だ。……正解ではあるのだけど、改めて他人に詳しく話されると私がかわいそうな人みたいでなんか嫌だ。


「……アイリスたん。こんど彩芽もつれてこよっか……?」

「……ぜ、ぜひそうして欲しいけどそんな憐れむような瞳で私を見るなっ!?」


 ってん? たしかに、買ったけどやったことがないタイムボムの話は、いつか二人には話したことがあったかもしれない。けれど理由までは絶対に話したことがない。

 それは確信をもって言える。だってなんか惨めだし。それをなぜ日葵ちゃんはわかったのだろうか。


「日葵ちゃん、タイムボムがお蔵入りになった理由までよくわかったね」

「当然です。私は常日頃からアイリス姉さん及び周辺の人間関係を観察しているのですから。そこからこうじゃないかと推察したまでです」

「へえ。洞察力があるとは前から思っていたけど、まさかここでとは思わなかった。日葵ちゃんは凄いね」

「えへへぇ~」


 私が日葵ちゃんの頭を撫でてやると、日葵ちゃんは気持ちよさそうに目を細める。小学生なのにここまでの洞察力があるとは。この子はきっとビッグになる。


「ええぇ~。日葵ちゃんだけずるーい! ねえねえアイリスたん、わたしには~? わたしもアイリスたんの小さくて愛おしい手でいい子いい子されたい~! わたしだってアイリスたんとスキンシップしたいぃ~!」

「露草はもう少し頭にも努力値を割いたほうがいいと思う」

「どういう意味!?」


 しかしこれで露草と日葵ちゃんは同点だ。二人のクイズ勝負は私が当初思っていたよりも白熱していた。


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