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不老の姉妹たちの旅物語  作者: Soryi
二章 姉妹と文学少女
9/13

第4話 友達

だいたい説子視点だけど、最後だけリア視点。

前話の一か月後ぐらい。

別の日。

早めに登校した私が教室のドアを開けると、ロッカーの前にローヴァー姉妹が居た。


「わっ、説子さん早いね」

「アティアさんもな。……私は早起きできた日は静かな教室で本を読むのが好きなんだ」


アティアさんが何か赤いものを持っていたのがちらりと見えた気がしたが、振り返った彼女の手には何もない。

……まあいいか、本読もう。




「…………」

「…………」



『私、妹にしか興味がないの』


ページをめくりながら、いつかの告白でアンリーアさんが言っていた言葉を思い出す。


「姉さん、見すぎ」

「あら、ごめんなさい」


……アティアさんにしか興味がないと公言している彼女は、どうして私をこんなに見つめるんだろうな。







また別の日のお昼休み。

母に持たされた弁当を食べていると、ふと視線を感じた。


「美味しそうなお芋だなぁ」

「……良かったら一口分けようか?」


無意識に口に出してしまったのだろう。ちらちらと私の弁当を見ているアティアさんに、思わず声をかける。


「え、いいの!? じゃあ私のからあげと交換で!」

「わかった」


私の弁当箱から大学芋を一つ提供して、代わりに差し出された弁当箱からもからあげを一つもらう。

うわなんだこれ揚げたてか? いやそんな訳はないんだが、衣がまだサクサクしていて美味しい。


「これ、アティアさんが作ったのか?」

「ううん、今日は姉さんだよ」


お姉さんの手作りだったのかこれ……。道理で、というとおかしいかもしれないが、なんとなく納得した。


「あ、そうだ。私のことはアティアって呼んでよ」

「……? 呼び捨てにしてほしい、ということか?」

「そうそう! ダメかな?」

「別に構わないが……それなら、私のことも呼び捨てでいい」


そう言うと、アティアさん……アティアは無言でガッツポーズした。

もしかして、前から狙っていたんだろうか。アンリーアさんがすごく微笑ましそうな表情で私たちを見ているんだが。

……ま、いいか。

早く食べないと本を読む時間がなくなる。







ある日の放課後。


「クーアティアさん!好きです!」

「ごめんなさい」

「即答!?」


すぐ後ろでそんなやり取りが始まって、内心で溜め息を一つ。

アティアは気が合うし、アンリーアさんも悪い人ではないのだが、こうも距離が近いと騒がしくて面倒になってくる。

……でも、実際に彼女たちと離れる気になれないのもまた、事実だった。

二人とも、私が本に集中している時は決して邪魔しないし。多少不思議なことはあれど、居心地がいいのも確かなのだ。


「理由とか……」

「わたし、一生姉さんのそばにいるって決めてるんです。だから、あなたが悪いとかじゃなくて、わたしが誰かとお付き合いすることはないと思ってください」

「そんな! アンリーアさんに縛られることは……っ」

「――それ、本気で言ってる?」

「ひっ」

「ああ、ごめんなさい。聞き間違えてしまったみたいです。……それで、何のお話でしたっけ?」

「あ、えっと、その……し、失礼しましたっ」


…………うん、ちょっとアティアを見る目が変わったかもしれない。

室温が急に冷えた気がして腕をさすっていると、私が本を読んでいないことに気づいたアティアが声を掛けてきた。


「あ、説子! 一緒に帰らない?」

「ん、いいぞ。アンリーアさんは?」


赤い・・髪を揺らして笑うアティアはもういつも通りで……だったら、まあいいか、なんて。

私が話を聞いていたのは分かっているだろうに、何も言わない彼女に付き合って鞄にプリントを仕舞う。

……むしろ、少し親近感がわいた、なんて言ったら驚かれるだろうか。あっちから触れてこない限り、言うつもりはないけれど。


「今先生に呼び出されてて……そんなに時間かからないと思うし、姉さんが戻ってきたら三人で帰ろ」

「わかった」


にしても、友達と一緒に下校なんて初めてだな。







帰り道は平和だった(多少通行人からの視線は感じたが)


「また明日ね!」

「また明日会いましょう」

「……ああ、また明日」


別れ際、小さく手を振ってみたらアティアの笑顔が三割増しで輝いて目が焼かれたりしつつ、家の鍵を開ける。


「おかえりー」

「ただいま」

「説子、今庭にすごい美人さんが見えた気がしたんだけど」

「ああ、この間転校してきたクラスメイトだよ。サイドテールの方は友達で、ポニテの方はそのお姉さん」


ゴトッ、と重い音を立てて、母親が持っていたコップが転がる。危ないな。


「あんたに……ともだち……???」

「とりあえず着替えてきていいか?」

「あ、うん、いいけど……えっなに?奇跡??」


まだ混乱してるな。

とりあえず破損を免れたコップを近くの靴箱の上に置いて、自室に向かう。


……まあ、これが奇跡みたいな状況っていうのは、私も思うけどな。


アティアは、本を読んでいるときは邪魔しないでくれて、周りと協力しなければならない授業だったり、私が本を読んでいない本当に僅かな隙間時間を狙って「仲良くしたいな!」という感情が全面に出ている笑顔で話しかけてくれる。

それでも、今までの私なら「物好きだな」の一言で片づけて、我関せずと本を読んでいただろう。一緒に帰るなんて、しかももう一人アンリーアさんを待つというロスも込みでOKするなんて、あり得なかった。


「はっ、お父さんに連絡しなきゃ……!」

「何故?」





※リア視点




本屋での遭遇以降、明らかに仲良くなった二人は、時折一緒に帰るようになった。


「……じゃあ、今度持ってくるね」

「いいのか!?」

「ふふ、もちろん!」


私まで会話に参加することは少ないけれど、その分、楽しそうにお喋りしながら歩く妹を見守るのは楽しい。

だけど、この微笑ましさはそれだけではないような……。

なんて考えていると、不意にクーがこちらを振り返った。


「いいよね? 姉さん」

「……ええ。楽しんでくれる人に読んで貰った方が、本も幸せでしょう」


キラキラした目でこちらを見てくる二人が妙にそっくりに見えて、でも、そう感じたことが不快ではないと気づいて。

すとん、と今までのことが腑に落ちた。




どうして気になるのかしら、なんて、簡単な事。

私は、この子と家族になりたかったのだ。




「他にも貴方が気に入りそうな本があったら、それも持ってくるわね」

「えっ」


小さく声をあげて、凝視してくる妹に笑ってしまう。私から声を掛けたのがそんなに意外だったかしら。

説子が妹の様子に気づく前に、丁度よく彼女の家が見えた。私たちの家はもう少し歩いた先なので、彼女とはここでお別れだ。

まだ話したかったと残念がる妹を宥めて、説子にも手を振る。


「また明日ね、斎藤さん」

「あ、ああ……また明日……」

「説子、その……気を強く持ってね……」

「えっ」


ふふ。







帰宅後。


「で、急に名前呼んだりしたのはなんで?」

「良かったわね、クー。妹が増えるわよ」


にこ、と笑って言い切ると、クーは納得したようなしていないような、なんとも微妙な顔になった。


「……それ、もう確定事項なの?」


そうね。少し言い方は悪いけれど、あの子が承諾してくれるまで付きまとう気だもの。

クーの時も、本当はその心算だったのよ? 長期戦覚悟とまでは言わないけれど、一回目で頷かれるとも思っていなかった。


「あら、知らなかった? 私、諦めが悪いのよ」

「これそういう話かな?」

「そういう話なのよ」




補足コーナー

【今回のクーアティア】

恋愛に興味がない訳ではないけど、優先順位の一番はリア姉さんの傍にいることで、それを受け入れてくれる人であることが前提。

素の自分でいることを許してくれて、ずっと帰りたかった前世の故郷に連れてきてくれた女神様が大好き。

なのでそれを貶すようなことを言われてうっかりキレそうになった。わたしが傍にいたいから姉さんと一緒にいるんだけど???

あとそもそもの問題として、高校を卒業したら違う世界に移動(=消息不明)になる予定なので。期間限定のお付き合いになることが分かり切っている恋人はちょっと……。


【今回のアンリーア】

なんとなく気になっていた子が妹にしたい子に進化した。

クーの時と違って、説子には帰りたい故郷がある訳でもないし、家族仲が悪い訳でもない。だから長期戦でじっくり説得しなければいけない……はずなのだけど、この覚悟も無駄になる気がするのは何故なのかしら……。


【今回の説子】

お弁当は気を抜くと毎日栄養食だけで終わらせる娘を心配したママンが週二で持たせている。

クーに懐かれるまで友達というものが存在したことがない。


【それぞれの家】

説子の家は住宅街にある小さな一軒家。学校まで徒歩十分。

ローヴァー姉妹の家は小さめのアパート。

最初は毎日世界の狭間まで帰ってたけど、流石に不審がられると思って説子の家の近くの賃貸を借りた。おかげで一緒に帰りやすくて助かるなーとクーは思っている。

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