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不老の姉妹たちの旅物語  作者: Soryi
一章 一人の女神と炎の令嬢
4/5

最終話 日本へ

クー視点→リア視点


一週間後。

姉妹となったわたし達は、約束通り日本に訪れていた。

今目の前にいるのは、前世の家族たち。私を見つけた瞬間にビニール袋を落としたお姉ちゃんに苦笑する。正直、一目で見抜かれるとは思ってなかった。


「ほんとうに……クー……なの……?」

「うん。……ごめんね、遅くなって。ただいま、みんな……ぐえ」

待って全員で抱きつくのやめて?? うち何人家族だと思ってるの!?

まあ、姉さんの妹になったわたしはこれぐらいじゃ死なないけど。苦しいものは苦しいんだよ!

「いきなり警察から連絡が来て電話壊したあたしの身にもなりなさいよ、もう……」

「クーのばかぁ……」

「せっかく君の大好きな杏仁豆腐買ってきてたのに……」

でもまあ、仕方ないか。

正面に抱きつくお姉ちゃんの頭を撫でると、だばっと涙の量が増す。ええ……。

「あ、ちょっ、ブラウスに鼻水こすりつけるのは止めて!?」

ちなみに今日の服装は白いブラウスにオレンジ色のフレアスカートというシンプルなもの。前世でよくやっていた組み合わせだけど、転生してからは縁遠くなっていた。今回は姉さんにおねだりして洋服を出してもらった形だ。


「っていうか、杏仁豆腐ってどうしたの?」

捨てたなら勿体ないな、と思って聞くと、お母さんがああ、と言って。

「それはお父さんがヤケ食いしてたよ」

「えっ」

思わずお父さんを見る。少し痩せたように見えるお父さんは「ははは」と苦笑した。甘いものが苦手でバレンタインも頑としてしょっぱい系のものしか受け取らないお父さんが……?

「涙がたくさん入ってしまったからね、甘さは感じなくてしょっぱいばかりだったよ」

「ええ~もったいない……」

「そこで勿体ないって言葉が真っ先に出る辺り、本当に僕の娘だね……」

「そりゃ、お父さんとお母さんの娘だし」


見た目はすっかり変わっちゃったけど、中身はほとんど変わってない自覚はある。

薄い胸を張って笑うと、お母さんがじっと見つめてきた。……わたしの顔、というよりも、その下の……。

「……減ったわね……」

「お母さん!?」

そりゃまあ、前世と比べると小さいけども。というかせめて「小さい」って言ってくれればまだ身長のことかなーとか……いや、今のわたしは結構身長があるしその言い逃れはできないか。


「混乱すると突拍子もないことを言う癖、変わらないね」

「お父さん……」

セクハラされた娘をスルーしてほのぼのするのはやめてほしいな……?







しばらくじゃれて、リア姉さんのこともちゃんと紹介して。

空がすっかり赤く染まるまで、話は尽きなかった。


「……変わった家族なのね」

「あはは、確かに。でも、自慢の家族だよ」

後ろで見ていたリア姉さんの言葉に、振り返って笑う。

うぐ、と呻いた声がしたのは……誰だろう、お兄ちゃんかな。


――やっぱり、わたしの家族はこの人たちで。

幸せの原形も、この人たちと過ごした時間なのだ。


「ありがとう、リア姉さん。家族と会わせてくれて」

「貴女の笑顔のためなら、このぐらいお安い御用よ」











時は流れ、世界の狭間に置かれた拠点にて。

柔らかい色で統一され、過ごしやすさを重視した一室で、私は少し悩んでいた。

次に見に行く世界が決まらないのだ。


「そろそろ出かけたいけれど、何か興味を惹かれるものがある訳じゃないのよね……。クー、行きたい世界はある?」

「うーん……あ、久しぶりに学校に行きたいな。日本の」

「そういえば最近日本には行ってなかったわね。そうしましょうか」

「何百年ぶりぐらいかな?」

「貴女の家族と会うついでに五年ぐらい遊んだ以来だから……二百年ぐらいかしら」

「そんなに経ってるんだ……」

「折角だし並行世界に行きましょうか。時間は……」


魔法の準備をする私を横目に、自分も準備をしようとクローゼットを開いたクーは、見覚えのない色に目を瞬かせた。

「……あれ、姉さん、また装備増やした?」

「ええ、シュシュを作ったけど。気に入らなかった?」

クーの言葉に私は陣を書きながら答える。……うん、これでよし。

目線を上げてクーの様子を見ると、丁度話題に出た新しいシュシュをつけて、サイドテールにしているところだった。気に入ってくれたみたいで安心したわ。

私の視線に気づいて「どう?」とターンするクー。可愛い。

「あら、早速つけてくれたのね。よく似合ってるわ」

「えへへ」



……そうだわ。

髪を下ろしっぱなしにするのも飽きてきたし、お揃いにしましょうか。

「クー、クローゼットの黒い箱に入っている水色のシュシュを取ってくれる?」

「はーい。……これかな?」

「ええ。ありがとう」

ささっと髪をまとめて、ポニーテールにしてみる。


「わあ、姉さん可愛い!」

「ふふ、ありがとう。……さ、準備も終わったしそろそろ行きましょう」

「はーい!」

手を繋いで、陣に足を踏み入れる。風の魔法でもないのだし、必要はないのだけど……これも習慣よね。


――私にとって、何か面白いものがあると嬉しいのだけど。







つづく


補足コーナー

【リアの拠点】

世界の狭間を揺蕩う鉄壁の宇宙船。外に繋がる扉はなく、転移でしか出入りできない。

セキュリティにいろいろと仕掛けがある、絶対に安全な箱庭。リアが唯一気を抜ける場所。

面倒事になったときの退避先であり、ゆっくり過ごしたいときの休憩場所。

世界を移動するときに経由する中継地点でもあり、二人はここで移動先の世界に合わせた格好に着替えたり、持ち物を整理したりしてから転移する。

ちなみに現在二人が付けているシュシュには魔法が込められていて、装備者が怪我をした時自動で回復魔法が発動する効果があったりする。

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