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不老の姉妹たちの旅物語  作者: Soryi
二章 姉妹と文学少女
12/13

最終話 旅立ち

説子視点。


時が流れて、翌年の三月。

『三年生の皆さん、卒業おめでとうございます――』

校長の演説が右から左に流れていく。


――私は今日、この高校を卒業して、異世界に旅立つ。







体育館から出て、人の流れの邪魔にならないところで周囲を見回す。こうも人が多いと、目立つ二人でも探すのは大変だな……。


「説子、こっちこっち!」


すっかり聞きなれた声が私の名前を呼ぶ。振り返ると、飛び跳ねながら手を振るクーねぇと、その後ろで微笑むリアねぇがいた。


「クーねぇ! 待たせてしまったか」

「大丈夫、わたしも着いたばっかりだから」


柔らかく笑うクーねぇにほっと息をつく。そのままさりげなく手を取られて、三人で歩き出した。




「あ、ねえ、一緒に写真撮らない?」


校門で、『××高校 卒業式』の看板を指さすクーねぇ。

初めてでもないはずなのに、はしゃいでるな……。

一人で撮ってくれ、と言おうとしたが、わくわくした顔でこちらを見つめる姉が可愛くて、どうにも突き放せなかった。


「……仕方ないな。一枚だけだぞ」

「やった! 姉さん、お願い!」


クーねぇが早速看板の隣に陣取った。リアねぇも懐からデジカメを取り出して、準備万端で構えている。

二人とも行動が早い。


「準備はいいわね? はい、チーズ」


――パシャッ


「可愛く撮れた?」

「大丈夫、ちゃんと撮れてるわ」


顔を寄せ合ってカメラを確認する姉妹に苦笑する。本当に仲が良いな。

……元々注目は浴びていたが、この空気だと遠くないうちに話しかけてくる奴が居そうだ。


「リアねぇ、クーねぇ、そろそろ行こう」


声をかけると、二人は素直にカメラを仕舞った。

よし、面倒なことになる前に移動しよう。


「ふふっ。手を繋いで歩くのも、すっかり慣れたね」


……クーねぇにそう言われて、やっと無意識に二人の手を掴んでいたことに気が付いた。


「妹に手を引かれるのは新鮮だわ」

「……言わないでくれ……」


嬉しそうに笑うリアねぇから目を逸らす。

クーねぇとはよく手を繋ぐようになったが、リアねぇは一歩後ろで見守っていることが多いので、改めて意識するとなんだか新鮮だ。

リアねぇの手は、クーねぇより若干温度が低い。だけどちゃんと人間らしい温かさがあって、女神様にも体温はあるんだな、なんて思う。まあ偽装かもしれないが。


手を繋いだまま、細い路地に続く角を曲がる。

視界の端で、私たちを追いかけようとしていた保護者の一人が、自分の子供に止められるのが見えた。


さりげない仕草で、コツン、とリアねぇが靴音を鳴らす。

その途端、体育館を出てからずっと感じていた大量の視線が消え失せた。


「……流石」

「ふふ、有難う」


魔法陣を見られても困るから、学校を出たらいったん全ての注目を外す、と聞いてはいたが……あんな僅かなモーションで魔法が発動するなんて、やっぱりリアねぇはすごいな。

自分も姉二人に教わって、簡単な魔法なら使えるようになったからこそ、そのすごさが分かる。











到着したのは、人気のない小さな公園。

公園の中央に空けられたスペースにリアねぇがしゃがみ込んで、さらさらと魔法陣を描く。

行先は、この国の遥か過去。日本最古の物語が、実在した歴史として存在する世界。


魔法陣の手前で、ふと足を止めた。


……二年前の私に今の状況を伝えても、きっと信じないだろうな。

私が読書大好きなのは変わらない。リアねぇに貰ったチャームの中では、自室から回収した約二千冊の本が今も出番を待っている。

だけどまさか、私が「本よりも大事にしたい」と思える友達……姉ができるなんて!

二人と出会う前は、まったく思いもしていなかった未来だ。


こちらの様子に気づいて、半歩前で振り返った姉に、私は笑顔を向けた。


「リアねぇ。これから、末永くよろしくな」

「……ええ。ずっと一緒にいましょうね」


柔らかい弧を描く琥珀色を、愛おしく感じられる自分が嬉しい。


……転移先はどんな場所だろうか。竹林か、屋敷か、それとも月か。

足元で膨れ上がった魔力に身を任せて、私は目を閉じた。




三章につづく

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