九日
酒呑童子を倒しても意味がないんじゃと思っていても、彗がなぜ助けようと必死でいるのか。何か意図があるのはわかっていても、私たちは理解できず攻撃を回避しながら戦っていると猿鬼たちが来てくれた。
「二人が途端に消えたから焦ったが、まさか酒呑童子があんな姿になるとはな。彗、風で囲めるか?」
「楽勝だよ。たださっき暴走しちゃっどちらかというと体力があんまりない。一発で決めてよ」
「承知した」
「美星たちは下がってて」
彗に言われ私たちは下がり彗が風の力を利用しその中に猿鬼のボスが酒呑童子に攻撃を当てていく。
「目を覚ませ!酒呑童子!」
酒呑童子は咆哮をしながら猿鬼のボスを倒そうとしていた。それに彗が作る風の力が弱まったりしていて私は彗の手に触れると私についてる風車がくるくると回転し始めたのだ。
それによって彗の風車が私の風車より早く回転していく。それをみた三人は手を繋ぎ、彗の力になっていった。
風の力もあることで酒呑童子の威力が段々と落ちて行き、猿鬼のボスは最後の一撃を当てる。酒呑童子が倒れたのを確認したことで風が止み、彗は酒呑童子に触れようとした時、何かを察知したのか逃げろと彗は力尽きているはずなのに風を利用してこの場から離れた。
そしたらお酒もあったからなのか火事が起きてしまう。救いたくても救えない状況で、私たちはただ見ていることしか出来なかった。
その翌日、眼鏡くんたちが酒呑童子の遺体を運んで行き、誰があんなことをしたのか検討はついている。私と少し話した天狗くんだ。
見物していてきっと私たちに暴露するから、火を放ったとしか言いようがない。
「あれ?もう作業終わっちゃった感じ?」
「瑠衣」
「やっほーと言いたいんだけど、彗に話さなくちゃならないことがある」
手を合わせて言う瑠衣で、そう言えば私が戦っている時助けてくれたよね。弦くんをちゃんと送ってあげてくれたのだろうかと少々不安になる。
「そいや弦は?」
「えっと実は…」
人差し指で頬を掻き彗が圧をかけていると、瑠衣は苦笑いしなが私たちに告げたんだ。
「鳥居を潜らせたら消えちゃった」
「は?」
「本当だって!ちゃんと入口調べたもん!だけど仕掛けとかもなくて、あいつの都に行こうとしたらめっさ警備入ってたから入れないわけ。確認できるのはこんこんかなって探してはいるんだけどいなくってさ。この前圧かけちゃったから、たわしの前にに現れてくれなくて」
「まさか手紙に書かれてたとかじゃなかったのかな?」
ぎくっと反応する彗でやらかしたと四つん這いになり、どんまいと励ます風葉だ。鳥居は三つ潜らなきゃいけないんだよね。どういうことなのかな。
「子供たちは?」
「二つ目の鳥居の近くで待機してもらってる。ただなんか変だから待機して今はその鳥居を調べてるってわけ」
「なら僕らは先に一つ目の鳥居を潜りに行こう。そのほうが早いんじゃないの?」
まだ凹んでいる彗で瑠衣に鳥居を教えてもらうことになった。
◆
音はずっといなくなってしまった弦くんと再会し、姉である琴音を待ってもらうことになった。それに私たちは消えた友人が今も時が止まった姿でいることを告げられ言葉を失うほどだった。
弦くんは鼓と琵琶を連れ戻そうと家には帰らず、この山にひっそり暮らしていたと言う。そして毎年行われる祭りで、風車を手にしあっち側の世界へと行っていた。
一度は彗に助けられ二度目はいい加減音のところへ帰れと鼓に放り投げられたそうだ。そして三度目に美星ちゃんたちと会い、瑠衣に連れてってもらって鳥居を潜ったら月星神社の鳥居の前にいた。
「花咲さん、そろそろ…」
「そうじゃな。弦くんが三度も帰って来れたのなら、全員帰って来れると信じるしかなかろう。それをすみれに話せば打ち明けてくれるかもしれん」
「そうと決まれば病院行くか」
私たちはすみれが入院している病院へと向かおうとした時のことだ。花咲さんが手を上げ僕は拳銃を構えた瞬間のこと。何が起きたのかわからず、花咲さんが血塗れになって倒れてしまう。
「花咲さん!風真!」
風真に救急車を呼んでもらい、出血しているところを押さえた。
「三…雲」
「喋らなくていいです!すぐ救急車をっ」
「覚悟は…しておった…」
「お願いですから喋らないでください!」
早く救急車は来ないのかと脈が弱まっていることが伝わっていて、美星ちゃんに合わせる顔がなくなる。だから生きて待ってましょうと花咲さんの顔をみた。
なぜ、なぜ僕たちは見えていなかったんだとすぐに救急隊が来てくれて運んでもらう。私の車で風真を乗せ病院へと向かっている途中、連絡が来て風真に操作してもらった。
「音、大丈夫か?」
『弦がまたいなくなったの!探すのを手伝ってちょうだいっ』
急ブレーキーをかけどういうことだと風真と顔を合わせる。さっきの花咲さんの出血に何か意味があると疑った私たちは引き返し、月星神社をこまなく探した。
どこにもおらず残すはあの社と恐る恐る社の扉を開けてみる。
「弦くん!」
弦くんは縄で縛られており壁中に貼られているお札が、おそらく花咲さんの血を使ってこう書かれてあった。仁の身体はどこにあるの?と。私はそこでパンドラの箱を開けられたかのように全身が震えた。
嘘だ、仁は死んだはずだ…。まさかと私は書いた人物を疑ってしまう。永遠なのか。そうなのかと触れようとしたら風真の手が乗る。
「三雲、触れるな。弦くん、犯人をみた?」
「…あっちにいる天狗の偉い人…だよ」
「偉い人はどんな人?」
「わからない。いつも天狗のお面つけてるし、翼もつけてるから」
仮に仁ならなぜ私を狙わなかった。なぜ花咲さんを狙う必要があったんだと混乱がしばらく続いた。
◆
鳥居に到着し鳥居を潜って、私たちはハイタッチして残り二つ。待機してもらっている鳥居を目指しに出発しようとしたら彗が顔を青ざめ胸を押さえていた
「大丈夫?」
「…感じる」
「何をだ?」
「こん、そこにいるんだろ?出て来い」
シュルッとこんは現れ、いきなりこんの首を掴む。
「どういうことかな?なぜすみれのおっちゃんを狙った?」
「…わかりませんよ。聞きたいなら直接天狗に聞いてください。これだけは言っときます。余たちは関わってません。おそらく君のお父さんを本当は殺したかったんじゃない?」
永遠の方を向き、仁がお爺ちゃんを殺したってことなの。そんなの信じたくはないよ。
「仁が人殺しするようなことしない!」
「待って永遠!」
永遠は仁を信じているから、疑いたくなくて行ってしまい、琴音が永遠を追いかけてもらった。お爺ちゃんは死んじゃったのとストンと体が落ちる。
「お爺ちゃんっ」
「いや、まだ生きてるから大丈夫。すみれのおっちゃんの命は今、白夜が繋いでるんでしょ?」
「さっさあ、なんのことでしょう?」
「さっき瑠衣から聞いた。妖狐の都で警備が硬くなっている。つまり今は白夜はおねんねの時間で誰かの命を守っているってことだ」
目を逸らすこんで白夜さんってやっぱりいい人なんじゃと思ってしまうほどだ。
「これで美星が帰った時、おっちゃんがいなくなってたら、僕が暴走すること起きたら伝えて。それまでに例の件は終わらせとく」
「はあ、わかりましたけど、美星様宛の手紙は今後食べないことを条件にします。あなたはヤギですかって白夜様言ってましたよ」
「嘘だ。白夜がそんなこと言うやつじゃない。それに白夜が送る手紙はラブレターと断定するから送らないこと。これ常識」
「かしこまりました。では美星様宛てのお手紙はヤギが真っ先に食べますとお伝えしときます」
そこはこだわるこんで解放されたこんはではと消えてしまい、私は風葉の力を使って立ち上がる。
「あのさ、今度はその天狗と挑むことになるのか?」
「どうだろうね。ただ仁については話さなくちゃならないから永遠と琴音を追いかけよっか」
星雨の力を使って永遠が行ってしまった方向へと向かった。
◆
仁っ美星の爺ちゃんを本当に殺しちゃったのと、空を見上げながら走っていたせいで誰かとぶつかってしまう。その衝動で僕は尻もちをついてしまい、ごめんなさいと謝ろうとしたらぶつかった人が妖怪だった。
「こいつ、番犬と一緒にいたやつじゃねえかよ」
「来るな!」
思わず拳銃を取り出し引き金を引き打ってしまう。命中してしまい倒れてしまった妖怪で、周りにいた人たちが僕を襲い掛かろうとした。
僕はなぜか目を瞑ってしまうと銃声の音が何発か聞こえる。ゆっくり目を開けるとそこには別れたばかりの瑠衣がいたのだ。
「瑠衣っ」
なぜか無性に怖くなって僕はつい瑠衣にしがみつくと、大丈夫と優しく撫でてくれる。
「一人で行動しちゃ駄目でしょ。彗は何してんだか。美星といい、永遠まで単独行動するだなんて。あ!もう一人いた」
え?と瑠衣が見ている方へ見ると琴音がいて、僕を心配して来たのか琴音が立っていた。琴音は僕に飛びついて琴音は泣いてしまう理由はなんとなくわかる。
琴音は仁が好きで僕は琴音が好き。だけど仁は美星が好きだったから四角いや五角関係になるかな。風葉も美星が好きだけどまだ本音は言えていないっぽい。
甘酸っぱいなってあの当初は思ってた。ライバルが減ったことで、嬉しいという気持ちがあってもそうはならない。
なぜなら僕はずっと後悔していたことがあったからだ。仁が苦しんでいる時期、僕は嘘を吐いてしまったこと。それは僕も月星神社に行く度に、妖怪が見えてたから。きっと僕の憶測で仕方ないけど、僕と美星に伝えたことで狙われた。黙っていれば今も生きていたのかもしれない。
「瑠衣、天狗はどこにいるの?」
「会ってどうする気?」
「謝りに行きたい。例え僕たちが知っている仁じゃなくても伝えたいことがある」
「それを決めるのは彗自身。彗に聞いてみな。たわしは任務に戻らなくちゃならないしね。もうすぐ来ると思うからたわしは行くよ。またね」
モグラが出てきてそれに乗り瑠衣は行ってしまわれ、琴音を慰めていると美星たちが僕と琴音の名を呼ぶ方角へ目を向けた。
◆
星雨の力で到着した場所になんと妖怪が倒れて、琴音は泣いているしまさか狙われたと思った。そしたら瑠衣が助けてくれたっぽく、そういえば大きな穴がある。
「仁に会いたいっ」
琴音はそう言って私たちもだよと琴音を後ろからハグして私たちもだよと伝える。私は知っていた。琴音が仁のこと大好きで今も仁に会えたらと呟いていることがあるから。
「さて真実を明かさなければならないことがあるから、喫茶店で話そう」
まだ琴音は泣いていても和風の喫茶店へと入り、店員はげっという顔をしながら席に案内してもらった。好きな飲み物を選び、風葉はプラスで抹茶パフェを頼んだ。
「天狗は以前から空畠家を狙っていた。その前に空畠家は月星神社に行く度に見えていたものがあったはずだ。さっき教えてくれた時、永遠正直に答えて。怒らないから」
「…あの時、僕も仁に伝えておけばよかったってずっと後悔してる。月星神社に行く度に妖怪が見えてた。それなのに僕は見えてないって言っちゃったせいで仁はっ」
永遠が珍しく大きな涙をポロポロと流し、風葉がなぜか謝る。
「ごめん。俺がしっかりしていればこうはならなかった。俺も実際に見えてたし、父さんに言われてたんだ。決して見えていたとしても、絶対に誰にも打ち明けるなと。ただ俺たちに何か起きようとしているなら、みんなに例え変なものが見えたとしても口に出さないよう注意してあげてほしいって。それなのに俺は仁が悩んでいたのに気づけなかった」
そっか。風葉ん家でもあるから風葉はわかっていたんだ。仁はなぜ私たちにだけ言ってしまったのだろう。風葉に相談していればお祓いとかできたはず。
「だから永遠が正しいと俺は思う。仁が社の前で倒れたって聞いた時、恐れていた。今度は誰かが狙われてしまうんじゃないかって。だからずっと願ってた。どうか俺の大切な仲間をこれ以上奪わないでほしいって」
「やはりね。風葉も見えていた。さてここからが本題。例え仁を救っても、仁は助からないのはわかってるよね?」
私は琴音の手を握り風葉は永遠の手を握り、四人で頷いた。仁はすでにお墓の下にあること。助からなくても、もう一度会えるなら会いたい。
「体を失ったことで帰ることもできなくなった仁は、天狗によって天狗にさせられた。僕も実際に会ったことがある。永遠に会った時、びっくりしたよ。まさか一卵性の双子だっただなんてね。つまり次狙われる可能性があるのが永遠。体を失った仁は例え記憶が抹消されていたとしても、帰る方法を探す」
「天狗ってまさか」
「そう。元は人間だ。帰る方法をずっと探し研究を重ねている」
「ちょっと待った。信じたくはないけど、社にある札って」
風葉の言葉で彗は悲しくて寂しそうな瞳をし、コーヒーを一口飲み私たちに告げる言葉。
「あの札はね、もう二度と天狗から奪わせないための札だった。だけどそれが弱まり天狗が侵入しやすくなったことにより、被害者がでた。それが仁なんだよ。仁が美星たちに言ってしまったことで狙われた。言わなければ美星たちと一緒にいたのかもしれない」
信じられない事実に私たちは唖然としてしまって、頼んだ飲み物を一斉に飲む。
「ただ一つ、記憶を呼び起こせることができる」
「どうやって?」
すると彗は手首を見せ私たちがつけているミサンガを示しているらしい。そう言えば仁もこれをつけていたはずだ。
「仁もこれをつけてる。きっと外せなかったんだろうね。ただ記憶が戻っても仁は」
「わかってる。そのことは僕に言わせてほしい。彗、いいよね?」
永遠は決意したような瞳をして、彗はもちろんと言ってくれた。二つ目の鳥居を目指す前に私たちは天狗について彗が教えてくれることに。
◆
命は保っているが、いつ死んでもおかしくはない状況でいる花咲さん。あの時、花咲さんに何が見えたのか知りたくても知れない。ずっと待合室で私は座り込んでいたら、すみれが車椅子で来たのだ。
「すみれ」
「三雲、ずっと何も言えずごめんなさい」
「無理はしなくていい。おじさんはきっとよくなるはずだから、今は自分の体を」
「大丈夫。もう泣かず美星たちの帰りを待つわ。それに弦くんが会いに来てくれて勇気をもらったの。だからずっと黙ってきたことを打ち明けます。ただ一つ、仁くんのこと…」
あの馬鹿、余計なこと言わなくてもいいだろと言いたかった。実は余計な心配をさせたくはなく、すみれには仁のこと伝えてはいない。
すでに仁の存在を知っているのなら打ち明けるしかないのだろう。
「仁はその…」
するとすみれは私の手を握り、すみれの久しぶりの笑顔を見せたのだ。
「仁くんならわかってくれるわ。だってライフディワールドには心強い仲間がいるもの。きっと大丈夫。乗り越えてくれるわ。それに美星たちもいるのよ」
私はどちらの選択をすればよかったのだろうと私はすみれに甘えて涙が止まらなかった。仁が救急車で運ばれたと聞いてすぐさま病院に駆けつけるも、医師から手の施しようがないと言われ妻と私はどれくらい泣いたか。
私と妻は冷え切った仁に触れ、本当に遺体に触れていると同然だったから死亡届を出した。それなのに私は何も知らなかったことで、仁を違う病院でもいいから移せばよかったと後悔がある。
すると足音が聞こえるも、涙が一向に止まらない。
「風真、少し待っててあげて。仁くんで泣いてしまってるから」
「おう。それにしてもすみれのおっちゃんに見えていた人物って何者だったんだ」
「おそらく天狗よ。天狗は元人間とあっちで聞いたわ。社にあるお札は天狗になった人間が入って来ないように貼っていたはいいものの弱まったせい。ペンダントを私が持っていたからだと思うわ。だから私の責任でもあるの。あの時ちゃんと社に保管されていたら仁くんは今も生きていたかもしれない」
仁に会いたい、会って謝りたくても、もう二度と会えなくて、今日はすみれの事情聴取ができないぐらい後悔という涙が止まらないでいた。