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らいふでぃわあるど  作者: 福乃 吹風
3/36

三日

 翌日のこと、琴音の叫びによって目を覚ますと、むにゃむにゃと私の手を掴んで寝ている彗であり私も叫んでしまう。なんでここで寝ているのよと枕でバシバシ叩いていたら風葉と永遠が来てくれた。風葉と永遠が部屋から出してくれて一体なんなのと深呼吸する。


「何もされてない?」

「大丈夫。びっくりしただけだから」

「あの人目を覚ましたらいるからびっくりした」

「そりゃあ誰だって驚く。だって僕も似たような経験したから」


 似たような経験と首を傾げていたら、廊下で寝るな番犬と言われている彗であっても起きようとはしない。


「起こさないとだよね?」

「だな。そうしないと鳥居行けないし」

「どうやって起こすの?さっき枕でバシバシやっても起きなかったし」


 どうしたものかと考えていたら永遠が何かを閃いたようで、近くにより何かを囁くとガバッと起きたのだ。何を囁いたのだろうかと思いきや、永遠と両頬を抓る彗。

 会ったばかりだというのにあんなに仲よかったっけと思ってしまうほどだ。


「おっはよう。よく眠れた?」

「まあなんとかな。起きた時は驚いたけど」

「驚いた?」

「さっきみたいに永遠を握っていた人がいてさ。しかも女で永遠は暴れまくってた」


 暴れてなんかないっと言い放つ永遠だが顔真っ赤だよっと言いたいぐらいだ。へえと微笑を浮かべる琴音は先へ行ってしまい、待ってと琴音を追いかける永遠である。

 

「あ!やばい」

「どうかしたの?」

「食堂は右に曲がったところにあるから先行ってて。司令官を起こす義務があるからね。んじゃまた後で」


 一瞬でいなくなってしまいただその場にいた人たちの髪が乱れ、番犬と大声で叫ぶ人たち。なぜ番犬と呼ばれているのか不思議に思うも、教えてくれた食堂へ行き朝食をいただくことになった。

 A食かB食どっちにしようかなと迷っていたら、昨日子供達を連れてった女の子が私の隣で同じポーズをとっている。


「ふむふむ、今日はA食が焼き魚でB食がサンドウィッチか」

「えっと」

「初めまして、たわしは瑠衣るい。あ!今朝は驚かせちゃってごめんね、永遠ちん」


 ぱんっと手を合わせて謝る瑠衣で、永遠は琴音の後ろへと隠れてしまった。


「ありゃ、照れ屋さんなのかな?」

「照れてなんかない!」

「顔真っ赤だよ、永遠」


 琴音に言われて余計に赤くなってしまう永遠はさっさと選び先へ行ってしまう。

 私と永遠はB食を選び、風葉と琴音、それから瑠衣はA食を頼んで一緒に食べることになった。


「たわしは彗の幼なじみで一緒にライフディワールドに来たの。最初はマジで怪物たちしかいなくて、誰も味方にはなってくれず、ゲームに挑んだ」

「どんなゲーム?」


 問うと瑠衣はお味噌汁を飲んでただの鬼ごっごと言われ、私たちはぽかんとしてしまう。


「鬼ごっこ?」

「そう簡単な鬼ごっこじゃなかったよ。鳥居に行くまで追いかけられてたからね」

「到着したんじゃないんですか?」

「到着したよ。でもねその時点で四十九日を過ぎてしまったことがわかって、たわしたちは諦めたの。再び起きうることを想定して、信頼できる人たちをかき集めてここができたって感じかな」


 今年もと彗は店主に言っていたのを思い出し、毎年ライフディワールドに来てしまった人たちがいるってことなんだ。彗と瑠衣はいつここに来たのか知りたい。そう思って尋ねようとしたら彗が大盛り定食を持って私の隣に座る。


「僕たちの探りをいれようとしても無駄だよ、美星」

「なんでわかったの?」

「そりゃあね、瑠衣」


 ねえとご馳走様でしたと瑠衣はトレーを持って行ってしまわれ、どういうことと永遠が彗に問い正す。するとお米を頬張りながら教えてくれた。


「あっちに戻ったら、僕たちと過ごした記憶が消える。家族に伝えてほしくてもできないってわけ。だから何も知らずに鳥居を潜るのがベストなんだ」

「そんなの辛過ぎる。覚えていられる方法はきっとあるはずだよ」

「琴音の言う通り覚えていられる方法はあるのかもしれない。だけど人の記憶は脆いものなんだ。どんなに願っていたとしてもふと忘れてしまう」


 彗はいつの人なのかわからなくとも、お母さんがここに来たのは間違いはない。母の症状を聞けるかなと考えていたら代わりに永遠が聞いてくれたんだ。


「美星の母さん、すみれさんは美星が産まれた直後から体調を崩すようになって入院してる。何かその妖狐と接触したとかでもある?」

「丈夫だったすみれが……」


 箸を止め思い当たる節があるのだろうかと、彗の言葉を待っていたらそういうことかと沢庵を頬張った。


「おそらくすみれが逃げ切った時、魂が半分こっちに落とした可能性が高い。その影響で丈夫だった体が弱くなっていた」

「魂が落ちるだなんて」

「時に起きることなんだ。あの時は本当にギリギリで逃げ切ってくれたからね」


 母の魂が半分こっちにあるだなんて信じられない。まるで後遺症のように母は夏祭りに敏感だったのは確かだ。

 ぺろっと食べ切ったことで、まずは旅支度をするため必要な道具を買いに行くことになった。


 ◆


 美星ちゃんたちがいなくなって翌日を迎えた朝。昨日子連れの親と友達と来ていたらしい中学生や高校生に聞き込みをして全員が風車を手にしていたことが判明。

 以前はハーメルン事件と言われていたが風車事件と新しい件ができ、全捜査課が集まって会議が行われていた。内容はほぼハーメルン事件と同じだ。子供が一斉に消える妙な出来事。鍵を握っているのは紛れもなくすみれであること。


 昨日は美星ちゃんが本当にいなくなったことで発作を起こし今は体を休めているから聞くことすらできない。風真は宮司の務めをしていてクレームが鳴り止まないそうだ。

 毎年夏祭りで子供が消えることはわかっていながらも、やり続ける理由も何か訳があって開催しているのだとしたら。許可を出しているのは紛れもなく花咲さん。


 休憩に入り私は自販機でコーヒーを買っていると花咲さんがいらっしゃった。


「花咲さん」

「すまんな。すみれが寝たタイミングで来たわい。それで内容は?」

「ハーメルン事件と全く内容は一緒です。あのそろそろ教えていただけませんか?私は空畠家の者として知る権利はある」

「そうじゃな……そろそろ明かせんと未来の子供たちにも影響が及ぶかもしれぬ。桜木さんと一緒に月星神社で話そう。風真はすでにすみれから聞いてるはずじゃからな」


 あの状況のすみれが風真に話したというのかと唖然としてしまうも、わかりましたと告げ会議が終わった後、月星神社へと向かうことに。



 お金はどうするんだろうと手ぶらのまま来てしまっても、彗は鼻歌交じりしながら前でスキップしながら歩いている。


「彗、どう思う?」

「何かを企んでるとかじゃなさそうだしな。ただみんなから番犬呼ばれされている理由が全くわからない」

「私もすっごく気になってた。番犬の意味を知りたい」

「番犬って犬じゃあるまいし、別な言い方ないのかな」


 私たちが番犬について話していたら、彗が立ち止まりくるりとこちらを向いた。


「さっきから丸聞こえなんだけどな」


 ごめんなさいと謝ると別にいいよと私たちに背を向けてまたスキップし始める彗だがまたピタリと止まった。


「みんなに番犬呼ばわれされてるのはね、こういうことだよ」


 どういうことと首を傾げていたら正面からドスッドスッと走ってくる妖怪たちが現れる。私は風葉にしがみつき、琴音は永遠にしがみつく。

 私たちを捕まえに来たのは間違いはない。


「やれやれ、僕がいるというのに堂々とこの道を走ってくるとはあんたら馬鹿なわけ?」

「化け猫の番犬!今度こそお前と一緒にいる獲物は狩らせてもらう!」

「やめとけば?この子たちには指一本触れさせないって店主に伝えたつもりだけど」


 どけと妖怪たちは大きな姿になって襲ってくると目を瞑った時だった。妖怪たちの悲鳴が聞こえ目を開けると腕に複数の傷ができており、出血をしている。

 彗は微笑みながら最初から言ったはずだけどという表情だった。


「二度触れたら今度は腕千切れるから要注意してね。んじゃみんな行こうか」


 覚えとけよと逃げ台詞を言って逃げていった妖怪たちで、美味しそうと出店にある食べ物によだれを垂らす。


「さっきはありがとう、彗」

「いいよ。これがやつがれの仕事だから。それより力使ったからお腹すいた」

「さっき大盛り食べてたじゃねえかよ!」

「あれは朝飯前のご飯。こっちが朝ご飯」

「どんなお腹してるんだよ」


 風葉と永遠に突っ込まれている彗は、なんだかとても嬉しそうな表情を出してこれ十五本くださいと店主に言った。お団子十五本を店主にもらい、お会計はせずに食べ歩きをする。

 ちょっと待ったと私と永遠が彗を止め、お金はと聞いた。


「お金?この世界には存在しない」

「だけど」

「僕は納得いかない」

「金銭に厳しく育てられてきた二人には納得いかないかもしれないけど、この世界は本当にお金という存在がないんだ。言ったでしょ?ここは名もなき世界でもあるから、価値があるお金というものは実在しない。価値があるのは人間のみだからね」


 永遠は我慢できない様子で、まるで盗人のように見えてしまったらしく、ちょっと来いと彗の耳たぶを掴んで遠くで話すらしい。本当に大丈夫かなと私たち三人は苦笑してしまう。

 この世界のことをもっと理解しておかなければならないかもしれないと感じた。


 永遠に解放された彗はお団子を頬張りつつ、その後をついていく私たちだが買い物だよねと定食屋さんへと着く。

「彗?いくらなんでも食べ過ぎはよくないよ?」

「ここであってるよ。外見は定食屋さんだけど、内見は実際に違うんだ」


 中へと入る彗でわけわからずお店の中へと入ったら、一見定食屋の内装だ。ただ彗が壁にあるボタンを押すとエレベーターになっており地下へと降りる。

 到着したらしくエレベーターから降りると武器や薬草たちがたくさん置かれてあったのだ。


「好きなもの持ってっていいよ」

「好きなものって俺たち浴衣で装備品はつけられない」


 ふっふうんと自慢げな顔をしながら彗がぱんぱんっと叩くとトランクが四つボンッと出てくる。トランクを開けると彗と似たような服が入っていたのだ。


「浴衣だと逃げづらいだろうから、それにまず着替えて。美星と琴音はここじゃ着替えづらいだろうから、あっちで着替えておいで」  


 大きく更衣室という看板を見つけて、私と琴音はそこで着替えることに。


「ねえ美星」

「ん?」

「彗って信頼してもいい人なのかな」

「急にどうしたの?」

 

 琴音はんーと頭を悩ませているようで、まあ今朝のこともあったから信頼度が低いのだろう。


「今朝のことは置いといて、あたしたちがあそこで捕まっているところすぐ来たじゃない?なんか妙にタイミング良すぎじゃないかなって」

「まあ確かに起きたら混乱が多くあったし、助けてくれたのは間違いはないよね。彗の様子を窺ってた時、なんか店主と親しそうな感じはあったかも」


 でしょ?と着替え終え琴音も同じことを考えていたようだ。けれど店主から逃げ回っている時に助けてくれたのは彗自身だからなんとも言えない。

 大切な浴衣はどうするんだろうとトランクに入れてしまったけれど良かったのかな。


「おっ二人とも似合ってるね。一応武器はこの風車だけど念の為違う武器も所持していた方がいいよ」


 すでに選びきっている風葉は剣で、永遠は銃を装備している。いろんな武器がある中で私は一つの武器をとった。


「これってどうやって使うの?」


 彗に見せたのは花の蕾らしいもので、やっぱりねとなぜか微笑みながら私が手にした蕾を手にし披露してくれる。振り回すように動くと蕾が咲花びらが出てきて消えていく。


「使い方はこんな感じかな。人間には害がないから安心して振り回せる」

「なんか凄えな」

「まあ簡単に言えば鞭って捉えればいいよ。花咲家は大体それ使ってたからしっくりくるかもしれない。琴音はどうする?」

「あたしはこれかな」


 琴音が見せてくれたのは弓で、部活も確か弓道部だからなのかもしれない。


「さて武器も選んだことだし、薬草は必ず持ってね。後それからどこだっけな。棚で何かを探しあったあったと私たちに見せてくれた」

「一応、この香水は一日に一回かけといて。匂いを消すやつだから。あいつらに気づかれないようにはなってるけど、万が一のためにね」


 私たちは一つ疑問点が浮かび上がり、彗って有名人のように妖怪に目をつけられているんじゃなかったけと彗の顔を見た。するとなあにと笑顔で聞いてくるものだから風葉が起こり出しそうで落ち着いてと風葉を止める。


「これつけても意味ないんじゃない?」

「そうだよ。だって彗がいるから」

「永遠、琴音、案内してもらえなくなるからそう言うのはやめよ。彗がどっかいない時とかには便利かもしれないし」


 私が彗をフォローするとそっかと風葉の怒りは消え、二人とも納得してくれたのだ。



 装備も整ったことで私たちは彗がつけている羅針盤を見ながら歩いて行く。そう言えば他の子たちは一緒じゃないのかなと彗に聞いてみた。


「彗、他の子たちは?」

「安心して。先に行ってもらってるから後で合流すると思うよ」


 それならいいんだけど何かあったら、どうするんだかと少々心配になるも鳥居がある場所へ向かうしかない。それにしてもちらほらと妖怪たちが見て来て、目を合わせないように歩いていたら彗が止まった。

 なんだろうと彗が見ている方へ目をやったら、この前の店主を発見する。私は咄嗟に風葉の後ろへと隠れたのだ。

 それなのに平気で彗は店主を呼びかけると店主があの不気味な笑みでこちらに来てしまった。


「おやおや、取引でもやるかい?」

「するわけない。これをやる代わりに情報を渡せ」


 彗はポケットから取り出し、店主はほうほうと彗が持っている物を眺め始める。私はなぜか猫のようにシャーッと威嚇してたら一瞬だけこっちを見てはいいだろうとそれは店主の物になった。


「あのお方の名により、羅針盤はつけなかった。どうせ逃げ切れないだろうが、今回は星座が関わっていると聞いている。なんの星座かはわからん」

「星座か。ありがとう。行こっか」


 楽しんでなと手を振られても私たちは無視して彗についていく。


「なんであんなあっさり情報くれるんだよ。敵なんだろ?」

「時に味方になったり敵になったりするのが妖怪だよ。この世界は取引をすればいくらだって従ってくれるルールのようなもの。だから欲しい物を手にしていれば力になってくれる」

「さっき渡してたのってあれ僕のっ」


 んんと口を塞がれてしまった永遠で、口を塞いでいるのは琴音だ。ギブギブと合図しているも琴音はあることを口にした。


「聞きたいことがあるの」

「なんでも言って」

「彗はどうしてそこまで私たちを帰そうとしてくれているの?それにまだ苗字教えてもらってない」


 彗は琴音の質問に口籠もってしまい、言いたくないことだってあるはずだよと、琴音に伝えようとしたら彗が苗字を教えてくれる。


天川彗あまかわけい。それが僕の苗字。もしかして琴音、誰かを探しているのかな?」

「あたしの弟、弦は一昨年の夏祭りで失踪した。いくら探しても見つからなくて、その時は弦のみしか行方不明になってなかったから、誰かに誘拐されたんじゃないかって捜索願いも出したの。それなのにっ弦はっ」


 言われてみれば弦くん、一昨年に失踪して未だに見つかってはいないってお爺ちゃんから聞いてた。琴音はあまり泣かないのに、涙を一粒、二粒と涙を流し永遠が琴音を慰める。

 彗は会ってきた人たちを思い出していて、もしここにいるのだとしたら会わせてあげたい。


「……年齢はいくつ?」

「当初は十一歳」

「ライフディワールドに来てた。ただその年にいた弦は、鳥居を潜って帰ったはずだ。僕が鳥居まで送ったし、鳥居を潜って消えたのも確認が取れてる。なぜ家に帰ってないんだ」


 彗が送ってくれたのに私たちが住む世界に帰って来なかった理由。お爺ちゃんもまだ弦くんを見つけられていないと言っていたのも確かだ。

 原因が掴めぬままの状態になるとは思わず、もしかしてと思い彗に尋ねる。


「彗、もし再びライフディーワールドに来れるとかはないの?」

「まだその頃は十一歳。今生きているのであれば十三の歳頃。来られる可能性は高いかもしれない」

「探し出す方法はある?」

「まあ取引を行えば情報はいくらでもくれるけど誰を奪ったとかは正直わからないと思う。ただ調べる方法があるからやってみよっか」 

 もしもなんらかの理由で再び弦くんがライフディワールドに来てしまったのなら、きっと彗のように私たちが住む世界には帰れないと言うこと。それでも琴音はいつも部活帰り、月星神社へと行き祈り続けてた。

 無事に弦くんが帰って来ますようにと。


 鳥居に行く途中に弦くんを探す方法の場所があるらしく、私たちはそこへ向かうことになった。



 月星神社へと着き風真の目がクマになっていて少しは休んだほうがいいんじゃないかって気がする。全員が集まったことにより花咲さんが例の件で話し始めた。


「このことは誰に言っても信じてもらえんくてな。この四家のみが知る過去のことじゃ。わしゃの先祖から聞いた話では生死の狭間に存在する世界、妖の世界が存在する。それを管理しているのが星月家なんじゃ」

「親父が管理していた社あっただろ?」

「あぁ。確か秘宝がそこにあったよな?」

「見たことあるわ」


 目を擦りながら風真はあることを打ち明ける。


「すみれたちが行方不明になった理由は俺が持ちかけた話で、すみれたちは賛同した。本来ならば撤去されるはずだった社を利用して肝試しをしてたんだよ。そしたらさ親父から絶対に触れるなと言われ続けた秘宝だったのに、すみれたちは触れてしまって、次の瞬間触れたみんなが消えた。秘宝と共に。その先は知ってるだろ?」

「すみれだけが帰ってきてその手には秘宝を手にしていた。まさか美星ちゃんに持たせるようにしたのって。おい!何やってんだよ!」


 私は風真の胸ぐらを掴み、その秘宝が鍵になっていただなんて信じられない。落ち着け、三雲と花咲さんに注意され離す。


「なぜそのことを美星ちゃんたちに言わなかった?帰って来なかったらどうする?」

「すみれが言ってたのは四十九日までに鳥居を潜らなければならないと言ってた。あの子たちを信じて待つしかない」

「捜査課にはなんて説明を?」

「今まで通り、捜索している風に見せかけるしかないじゃろ」


 納得ができない状況でも私たちには見えない妖怪をどう説明しようが信じる者は誰もいないだろう。この件に関しては知っているこの四家で守秘していくしかない。


「かしこまりました。なら私は普段通りに捜査に当たります。何かあれば連絡をください」

「わたくしも琴音を信じて店で待っているわ。風真、今はとにかくその顔をどうにかしなさいね。それじゃあ」


 私とおとは月星神社を出て一度あの場所を眺めてしまう。私もあの時行っていれば、みんなを助ける方法を見つけられたんじゃないかと思いながら警視庁へと戻ったのだ。

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