異世界のケバブ屋 その名はボブ
何処かでドラゴンの咆哮が聴こえる。
何処かでモンスターの喧騒が聴こえる。
何処かで冒険者は旅へ出掛ける。
ここはそんなファンタジーの世界。
そんな世界の何処かの道で。
一際目立つ物がありました。
「ふー…今日もいい天気ネー!こんな日はケバブもキット美味しいヨー!」
そう元気に声に出しながら、大型バイクの様な物を低速で運転している人が居ます。
それだけならよくある光景ですがーーー
問題はそのバイクの後ろに、誰もが見慣れない屋台のような物が連結されているのです。
それこそがケバブの屋台。
運転手の『ボブ』は、このファンタジーな世界でケバブを作り、売って旅をしているケバブ屋さんなのです。
さてー
今日もボブの屋台はお客様が並びます。
「Hey!お兄さん冒険者の人ネー?ケバブはどうヨー!」
ボブは並んでいたーーー
どちらかと言えば立ち止まり屋台を見ていた青年に笑顔でそう言います。
「ケバブ?一体なんだいそれは?匂いは随分と美味しそうだが…」
剣を腰に装備した騎士の様な青年はボブにそう尋ねます。
「オー!ケバブはお肉と野菜を〜、ピタに詰めてソースを掛けて食べるネー!ケバブ食べたら、どんなモンスターも倒せる元気でるヨー!」
ちなみにピタとは簡単に言えば生地である。
「どんなモンスターも!?それは興味深いな…一つ貰おうか」
青年はそう驚きながらボブにケバブを注文しました。
「Heyマイドー!作るまで少しだけ待つヨー!」
そう言ってボブはバイクから屋台に移動し、ケバブを作り始めます。
「こんな屋台は初めて見たな…この肉の形状も……」
青年は興味津々と言った様に屋台を観察しています。
「HAHAHA!これはボブしか持ってないヨー!ボブの特典ネー!」
そう笑いながらボブはピタに詰めた肉や野菜にソースを掛けます。
「と、特典?」
青年が何を言っているのかと首を傾げた所でーーー
青年の目の前に出来立てのケバブが現れました。
「Heyお待ちヨー!500イリーヨー!」
ボブはそう言って笑顔で青年にケバブを差し出しました。
「ああ、ありがとう、500イリーだな。はい」
青年はボブからケバブを受け取り、500イリーをボブに渡します。
ちなみにイリーとはこの世界の通貨である。
「ケバブ食べて力が出たら百人力ヨー!」
ボブはそう言ってお金を受け取ります。
「…頂きます!」
「!?これは…凄く美味いな!!このソースが少し辛めで…肉や野菜と良い具合に絡み合っている!」
青年は1口食べると、驚いた反応をボブに見せました。
「そうヨー!肉の味付けもソースのブレンドもボブのオリジナルネー!そうやってボブは美味しいケバブを作ってるヨー!」
ボブはそう言って笑顔で青年がケバブを食べているのを見ていました。
「ふぅ…ご馳走様!これは本当に美味いな!あんたに会えて良かったよ!」
青年はケバブを食べ終え、ボブにそう言いました。
「ありがとネー!ケバブは皆を笑顔にするネー!皆が笑顔になる為にボブは美味しいケバブを作るヨー!」
ボブはそう言ってまた笑顔を青年に向けました。
ケバブを食べ終えた青年が道を歩き出すのを見届けた後。
ボブはまたバイクを動かし走り出します。
ケバブの無かった異世界のまだ見ぬ人達へ、ケバブと笑顔を提供する為にーーー
ケバブを食べてる最中に思い付きました。