わかった。俺たちがやれることはやるからさ。なんでも言ってくれ
俺の顔は腫れたまま戻らない。片目は開かないが、視力は徐々に戻りつつある。
「なんだよこの食事は!! 俺はモルモットじゃないぞ! せめて人として殺してくれ!」
もう隠す必要はないだろう。これだけの事をされて、何もなく終わると思う人はいないからだ。
「やりたい実験に付き合うからさ!! だから、せめて命だけは助けてくれ! 俺だって、あっちにいる俺だって同じ言葉を発しているはずだ」
これも演技だ。助かりたい気持ちはあるが、それ以上に実験者から少しでも情報を捻りだして脱出の糸口を見つけてやる。
ただ死ぬより、足掻いて死んでやる!!
機械音声「治験の終了は、午後17時になります。それまではいつも通りに進めてください」
「わかったよ! こっちは空腹で実験もできない! 少しでも有用なデータを取りたいのだろう?」
反応はない。いや、向こう側で話し合いをしているのだろう。俺は、顔の腫れが引いて少しでも良い状態になるように努めた。
10分後、機械音声が流れる。
機械音声「12時の夕食以降は窓が開かれます。食事は食べられるものが提供されます」
「わかった。俺たちがやれることはやるからさ。なんでも言ってくれ」
返事は帰ってこない。だが伝わっているはずだ。
昨日の夜、火傷する液体を上からかけられる直前まで、ベッドの中のパンツの中で小細工を作っていた。食事の金属片
俺たちの武器は、俺たちしか知らないことがバレていないことだ。
そう、脱出系のドラマや映画が好きで、万が一のために仕込をする知識があった。
今はもうベッドに寝て、弄るチャンスはない。だが、俺のパンツの中にはくくりつけた鋭角の小さい刃物がある。あっちの俺も同じように仕込んでいる、つまり二本ある。
昼の12時から対面する音声があった。後は、俺たちがアイコンタクトして一斉に行動するのが最後のチャンスだ。
やつらには俺たちの意思までは見えない。警戒はしているだろうが、諦めているように見ているだろう。
だから、今の俺は俺と対面したら「同期の呪いを解こうとして動いてくれる」と確信している。
裏では、今までの情報交換をして、脱出のための手段を相談する。
あいつらは、12時に窓を開けると言っていたが、最後までとは言っていない。
数秒で閉じる可能性がある。
その時は、あいつらにとって俺たちが賢い危険人物まで格上げされたときだ。
せっかく良い実験データが取れたのに、従順に従う奴隷を手放すのは惜しいだろう。
俺たち二人のうち、片方が助かって脱出出来ればよい。だが、ココがどこかもわからない。
俺たちに同情してくれている作業員に、何かしらのメモを渡す事ができれば、俺たちは死んでも次につながる。
ピンポーン!
「食事の時間です」
開かずの窓がついに開いた。
部屋脱獄まであと12時間




