せっかく違いが判明して、どうにかなると思ったのに!!!
8日目の朝、俺たちの思考は間違い探しであることを確信していた。
朝の目覚め、同じ。
朝の問題、同じ。
朝の食事、野菜が追加されているが、動作は同じ。
俺は心の中で、「同期の呪い」と認識した。お互いのどちらかに、違う入力ができたら、呪いが解けて自由に行動ができる。
一卵性双生児の双子は、全く同じDNAなのに日常は別々に動くことができる。
だが、生まれてから完全に同じ部屋に隔離して、同じ機械動作で育成すれば、同じタイミングで返答ができるミラーリングが完成する。
この治験の実験は、金に目がくらんだ貧乏人をどうにかして、特殊な薬と技術で「全く同じ状態の人体を創造した」ことになる。
これだけ徹底的に同じに作られた部屋と装置だ。過去にも現在にも、同じような実験をして苦しんでいるに違いない。
その時は訪れた。
「「ん? 色が違う!!」」
夜の食事の時、いつものようにお互いが配られた食事を目の前に見せる儀式をやっていた。
俺が見たキャロリンメイトは茶色のチョコ味。窓の向こうの俺はピンクのイチゴ味だった。
「「おい! これで呪いが解けるぞ!」」
咄嗟に透明な窓に向かって俺たちは接近する。解決の糸口が降ってきた。
瞬時に頭を巡らせる。この違いをどうにかして同期を外さないと…。
ガシャン!!!
上から鉄板が降りてきて、窓が閉まってしまった。
5日から3日間あいていた窓が、最初に閉じた瞬間だった。
「おい! 開けろ!! 聞こえるか相方! 俺の色は茶色のチョコ味だ!!」
いくら叫んでも、相方のほうから声は届かない。完璧な防音で、一切向こうから聞こえない。
そして流れるいつもの殺風景なBGM。
「くそ!!! せっかく違いが判明して、どうにかなると思ったのに!!!」
もう俺は孤独だ。あっちの俺も孤独だ。いくら音を出しても、蹴っても、呪いの同期は解けない。
もう一度、もう一度だけあって話がしたい。
俺は茶色のキャロリンメイト、あっちの俺はピンクのキャロリンメイト。
今気づいた俺たちの違いはこれだけだ。
全く同じ入力では、いくらあがいても同じ結果になってしまう。
次に窓が開いて、対話ができるチャンスはもう訪れないかもしれない。
これは俺たちと実験者との戦いだ。時間はまだ2日ある。
まずは同期の呪いを解かなければ、強力して脱出もできない。
最悪、同期のままなら片方は不要だからと消されるか、まとめて口封じもある。
常時監視されているのだ、今日の反応から脱出への思考はバレている。
まるで漫画に出てきそうな、密室の心理戦ではないか。面白い。
このまま時間だけが経過する。だが解決の糸口は見つからない。
ピンポーン!
機械音声「問題の時間です」
問題は相変わらず簡単で捻りがない。出てくる食事には健康のためか、野菜サラダと魚が追加された。
ガシャン!!!
「この食事飽きた! もう少し豪勢なのはないのかー!!」
栄養素は足りている、だが8日間ずっとこの密室だ。窓の向こうは得体のしれない俺がいる。
ストレスのためか、フォークを鏡に思い切り投げつけて怒鳴る。
静かになると、冷静になって曲がったフォークを取りに行く。イライラが止まらない。
時間だけが過ぎる中、俺はどうすべきか考えた。どうしようか…↓
①諦めて、何もしない。抵抗をしないまま10日を終わらせ。隙を見て脱出する
②次に対面できた時、自分の色と同じもの、連想するものを作って窓に投げる
③色を大げさに口真似しながら、壁に唇を激突させて怪我をする
④そのほか ※コメントください
8日目は終わり、もう窓が開くことはなかった。俺は考えた末、③を実行した。
俺の色、チョコを ち よ こ と口を動かしながら壁に勢いよくぶつかる。
ドン!! 向こうの部屋から音は聞こえない。だが、同タイミングでぶつかっているであろう確信はあった。だって俺そのものだからだ。
痛い。だが、これではまだ同期の呪いは解けない。あっちの俺は、ピンクという口で痛い思いをしている。
何度も繰り返し、血だらけになれば口の衝突の違いで差は生まれる。
俺たちの勝利だ!!
一度崩れれば、食事する時に痛みでリアクションが変化するはずだ。当たり所が違うのだから。
30分、さらに休憩を入れて念入りに10分激突させて血だらけになった。
監視している研究員は意図を知ったうえで、血痕を消して何かしらの対応をしてくるだろう。
俺は警戒したまま、ベッドで眠った。
部屋脱獄まであと1日
凡人には、この閃きが限界です。
IQ200の天才的な解決法をお待ちしています。研究者視点で潰しに行きますので。




