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ありがとう。優しい人だ

 首を自分で割き、タンカで運ばれる俺は、人体実験施設の全貌を見て絶望した。


 そして、せめて次に変化を持たせるための最後の行動を選んだ。


 それは血で衣服や布を切って文字を書き、託せる人に渡すことである。



 

「お、俺は。助かるのか?」



 白衣「…しゃべらないで。数分で手術室に着きます」


 まだ話が通じる人だ。射殺してくる銃野郎とは違う。



「こ、小声で話す。頼みがある。俺が死んだら、渡した布の文字を公表して欲しい」



 白衣「…。ほら開けて!! 急患!! どいて!!」


 狭い通路にいる兵士たちを押し退いて、病室まで運んでいく。


「見ての通り、金に目がくらんだただの大学生だ。相方は死んだ。俺はこのクソみたいな実験をやめさせたい」


 涙が止まらない。


「片方がクローンだったとしても、こんな結末ないだろ…」



 白衣「…。あなたがクローンです。同化液で本物と記憶と構造を持ちますが、数日で細胞分裂できなくなります」


「撃たれなくても数日で死ぬのか。ではなぜ助ける?」


 白衣「私はヒトの命を助けるためにこの仕事をやっています」


「…。そうか。ありがとう。優しい人だ」




 残ったニセモノの時間、首を抑えたガーゼに指を押し付けてから、破った自分の衣服で刻む。



 伝えられる文字数は限られている。もう死ぬまで数分もないからだ。



 力が入らない右手で、書き終わった布を白衣の人のポケットに入れようとする。



 だが血まみれで気づかれてしまう。咄嗟に腕を隠し、ベッドの布にこすりつけて血をぬぐう。



「こんなクソみたいな実験、もう終わりにしてくれ。頼む」


 俺がポケットに入れた事を、白衣の人は気づいたが無言でタンカを押し進める。


 白衣「…」


 それで俺は安堵したのか、そこからの記憶はない。




 この先、あの白衣の人がどう行動が変わったのかはわからない。ただ、俺が、俺たちがやった愚かなことは、死んだ先の希望として生き続ける。










 た ま し い の ふ く せ い は で き な い 














 研究者S「ダメか。また次のを探そう」

最後まで読了ありがとうございました! これにて完結です。


どう考えて行動しても、相手側が一枚も二枚も上手なので、自分がやれるのはこれが精いっぱいでした。

この地獄のループを脱する読者コメント案があれば、続編で脱出させる物語を書くかもしれません。


偽物は人工生物で、治験の薬によって生まれる前の過去の記憶を植え付けられて本物とミラーできた成功例です。両者の死後、最後のセリフを聞いたのは、本物と偽物、どちらの魂でしょうか?

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