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太陽は学園都市で恋をする  作者: いつきのひと
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直接対決

 わたしが大好きなのは先生です。


 クロード君に対しては、クラスメイトだったり友人としてはとても頼りになりますが、恋愛意識は今も無いとしか答えられません。

 好きすぎるあまりやらかした事件から月日も経ちます。今現在彼がわたしをどう思っているかはわかりませんが、変に意識して気まずくなったり等はありません。


 そんなクロード君には先生と共通する部分が多く見られます。

 髪は黒いし、眼鏡だし、早くに両親を喪い天涯孤独。先生は学園への在籍時は特別学級に属していました。先生の圧縮と短縮の魔法とは相性が悪く、たまに授業の息抜きで遊ぶ際はいつも弄ばれる役になります。

 見られる外見の特徴だけを伝えられていれば認識の間違いが起きてしまうのは仕方ないと溜飲を下げましょう。


 サワガニさんはご高齢ということもあり、教師と生徒の年の差恋愛が続かない、または破綻するという昔ながらの先入観があるのかもしれません。その前例に倣って関係が継続せず、先生に手痛くフラれたわたしは似た特徴を持つ相手に鞍替えした。この数ヶ月の間に状況が一気に変化したと判断した可能性もあります。


 認識の修正を願います。わたしが大好きなのは先生です。


 わたしに先生が死ぬ予言を伝えて、どんな手を使ってでも恋人を救いたいと意思を誘導し、仲間に引き入れようとしたのは貴方ではないですか。それとも、わたしの「好き」は教師として人間としての尊敬だと思っていたのですか。

 何度だって言ってやりましょう。わたしは先生が大好きです。愛してます。変わるつもりも変えるつもりもありません。




 突然こんな夢の中に潜り込んできて死にたくない自分のことを一生懸命語るくせに、それを聞く身のわたしのことは一切気にしない。部下からの報告もメチャクチャで、誰に対して好意を抱いて熱烈なアピールまでしているのかも認識していない。

 自分勝手で自己中心的なのは貴方じゃないですか。


「ならば説明せよ。なぜお前の行動が我の死を近づける?」


 サワガニさんが抱いた疑いをわたしが晴らせとか、そんなの知りません。

 わたしはサワガニさんなんてどうでもいい。願いを形にする魔法で人の死を願ったりはした事も無いし、恨まれるのは嫌なのでやる気もありません。クロード君との因縁に関しては直接本人とぶつかって解決してほしい。クロード君は大変だと思うけど、わたし達を巻き込まないで頂きたい。


 いくら本人が無関心であっても、わたしの一挙一動が連鎖して大きなうねりとなり、結果としてサワガニさんの破滅の未来に繋がっている。だからとにかく自分の手元に置いておきたい。単語のみポツポツと話すので話す内容が把握しづらいのですが、どうやらそれが今回の来訪の理由のようです。


 言いたいことを理解できたので、次に考えるのはこの勧誘を上手く切り抜けて、穏便に断る言い訳。

 サワガニさんは連れ出したい。わたしは学園都市を離れたくない。どうやっても平行線。わたしが我を押し通すには彼を説得しないといけない。

 サワガニさんの目の前で、たくさん読んだ本の内容から、上手い立ち回りがなかったかを一生懸命思い出していました。




 先生と別れるだなんて死ぬのと一緒です。わたしが死ぬということは、わたししか使えない願いを叶える魔法も失われます。そうなればサワガニさんは万能の魔法を得られない。

 サワガニさんには有り余る膨大な量の魔力がありますので、万能の魔法はあってもなくても一緒。これは断る理由にはできない。


 養子縁組の話の際にあった、切ったら死んでしまうという先生との師弟関係は、おそらくは嘘だとバレます。




 アサヒ・タダノという存在を監視下に置きたいのであって、願いを形にする魔法の喪失やわたしの生死は問題じゃない。殺して死体を隠しておいて、既に故人となったわたしの名をちらつかせて交渉の材料にするなんて手段も考えられます。




 従うしかないのでしょうか?

 いいや、だめだ。自覚は無いけれど、もし、わたしの意思で世界が変わるのならば、わたしが思いついた事柄でサワガニさんを動かす必要がある。言われるがまま彼の側につくのはわたしの意思じゃない。未来を変える条件を満たさない。


 サワガニさんがわたしを手元に置こうと願うのは未来を変えたいと願ってのことです。

 ですが、もしかすると、その選択が破滅の未来に行き着くのでは?

 今日は何もせずに帰る。そしてわたしにはもう関わらない。それで見えた未来が変えられるのではないかと聞いてみました。


「命知らずめ。我に命令か。」


 今突き付けられている問い、サワガニさんに味方するかしないかにNOと答えれば、わたしはたぶん殺されます。選ぶのなら生きる可能性を選びます。先生ともっと一緒に居たいので死にたくありません。


 魔王に命令するのかという問いに対しての返答を待たず、闇の魔法使いは目を閉じ、そしてすぐに大きく目を見開きました。全てが反転した教室を見渡し、最後にわたしの身体を捕らえます。その表情は、とても驚いていらっしゃいました。


「お前は、何をした?」


 先生と別れない為の言い訳を考えました。発表しました。以上。

 未来が視えているのはサワガニさんだけなので、何が見えたのかはわかりません。でもこの反応を見ればわかります。わたしの予想は大当たりだったのでしょう。


 知りたそうな表情でサワガニさんを眺めていたのでしょう。彼は視たものを興奮気味に教えてくれました。

 今まで見ていた最期の風景、相討ちで共倒れする場面が、痛み分けの引き分けに置き換わったそうです。バッドエンドだった地点から先の未来が開かれるのは、真っ暗な森で彷徨っていたら隠されていた道が月明りに照らされたような感覚なんでしょう。

 直近のその日ではなくなったけど、最終的に破滅する日はいずれ訪れる。だから手放しには喜べないとも言っていました。


「今日は引く。」


 その言葉がスイッチとなり、夢の中なのに、急に眠気が来ました。

 多分サワガニさんの術でしょうわたしがクロード君が好きなわけではないという認識の修正ができたので引き止める理由もありません。帰ると言っていますので、そのままお帰り願いましょう。


 ああ、待て。眠りに落ちる前に、ひとつだけ聞きたいことがありました。

 これはどこからが夢なんですか。学園都市が大雪でパニックなんですが。


「雪など与り知らぬ。」


 サワガニさんの夢のタイミングから、彼らが学園に直接侵攻してきたのかとも考えたのですが、それは違うみたいです。

 いったいどこの誰が何をしてあんな異常気象になったんでしょう。





 眠さから船を漕いでいた頭が机にぶつかって、痛みで目が覚めて、顔を上げると、元の教室がそこにありました。


「あ、おはようございます。」

「アサヒさん、まだ夜よ。」


 窓の外は今もなお降り積もる大粒の雪が見えます。

 大雪は夢ではない。教室での一泊も夢ではない。

 夢と現実の境界がはっきりしませんが、危険な相手を無傷で追い払えたのでヨシとしましょう。



 教室の、横一列の机の後ろにある広いスペースに布団が六人分敷かれていました。ほんの十分ほど前に先生が魔法で敷いてくれたんだそうです。肝心の本人はまだやることが残っていると言って出て行かれたようです。サワガニさんとの交信中に事が済んでしまっていました。

 生徒五人に対して一人分多いのは、先生の分。今日は先生も一緒に寝てくれるんだそうです。


 四度目の来訪は、次に先生が来た時にお話ししましょう。


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