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太陽は学園都市で恋をする  作者: いつきのひと
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悪い出来事は連鎖する

 後は任せて休日を過ごして欲しいという願いを聞かずに飛び出して行った同級生を見送りました。アサヒです。

 現在、まるで磁石に吸い寄せられるかのように飛んでくる様々な物を魔法で叩き落しつつ、先生を通じて警備隊に指定された空き地へと急いでいます。


 ポールとマッシュは追跡者の片割れ、小太りの魔法使いを早々に見つけ出して交戦に入ったようです。

 足止めに放たれていた泥沼と土壁の魔法が無くなりました。ですが、物が飛んでくる魔法は一度始動すると止まらないタイプなのでしょうか、止まりません。姿を変えれば回避できるかもしれませんが、もし学園都市の中にわたしによく似た人物がいたらその人に迷惑がかかります。やめておきましょう。

 わたしに向けて物が飛んでくるこの魔法、物を動かす魔法の応用だと思うのですが、追尾機能まで持たせているのには驚きました。身体の動きではどんなに頑張っても回避できません。当たり屋に身を落としたとはいえ発想の豊かさは見習いたいくらいです。




 二回ほど道を間違えたものの、なんとか到着できた広場には、誰もいませんでした。


 今、この空き地は、息を切らしつつも追いついた追跡者の長身と、二人きり。他には誰もいません。

 先生の話を信じたから頑張ってここまで逃げてきたのに、いるはずだった警備隊員が居ない。

 周囲の建物の特徴から判断すれば場所は合っていると思います。早く着きすぎたのでしょうか。


「もう何でもいいから財布置いてけ!」


 こんなに長時間追いかけっこしていながら、彼は最初の目的を忘れていませんでした。人間のお金に対しての執着は恐ろしい。いや、それよりもだ。警備隊員が居ない、または到着していないこの状況でわたしはどうすればいいんだろう。


 足を止めたわたしに近付いた長身が、魔法でわたしに向かって飛んできた物と同じように弾かれました。最初に出会った時から触れられたくないとは思っていましたが、これは僥倖。このまま触れられずにいる事での時間稼ぎができるかもしれない。


 空き地に到着してからわたしに向かってくる飛来物が無くなりました。

 小太りの魔法使いを探しに行った二人の状況もわかりません。わたしにわかるのは、探査の魔法で先生が今もこちらの行動を把握してくれている事ぐらいです。


 幸いなことに、魔法の作用で相手はわたしに触れることができません。ただ弾き飛ばされるだけで怪我をすることもないでしょう。

 目の前に居る長身の男をこの場に留め置いて、処罰を与える事の出来る人達に引き渡す。そうだ、これでいこう。




 気になった事があります。丁度いいので尋ねてみましょう。

 あくまで時間稼ぎですが、相手の話を一切聞いてはいけないルールは無い。


「お財布を渡す前に聞きたい事があります。」


 聞きたいのは、ポールとマッシュを騙って悪行を行っていた理由。

 学園の評価を落としたいのなら誰を騙ってもいいし、なんなら卒業生である自分達の経歴を使ってもいい。なぜ在籍する特別学級の生徒なのか。


「何を言ってるんだお前。俺がポールだ。」


 自分がポールだと思い込んでいる可哀想な人のようです。ズレた認識のまま話をするのも大変そうだ。すり合わせは骨が折れそうなので、彼がポールであると仮定したまま話を進めましょう。


 彼曰く、魔力が強いのは偉い。だから何をしてもいいんだ。お前こそ何を言ってるんだ。

 ずっとわたしの事を魔法が使えない不能者として見下しているようで、常識知らずの子供にお説教するような形で講義を頂きました。それは、かつて魔法使いの社会にあったと言われる魔力と血縁を大事にする価値観そのままです。



 まとまりのないお説教を要約すると、二人の名を利用したのに特別な理由は無くて、強い力を持つと噂される人物の名を騙っただけ。本の中の物語ならば主人公に絡んでボッコボコにされそうなキャラ付けは、そういう人物だろうと推測したから。

 本人達にも、特別学級にとってもいい迷惑です。


「だいたいお前はなんなんだ。俺を呼び捨てとは何様のつもりだ。」

「わたしはわたしです。ただのアサヒです。」


 ポールとマッシュと同じ教室で席を並べ共に学ぶ同級生。毎日顔を合わせているのに覚えていないのですかと問い詰めてみようかと考えましたが、自分が信じていた物が崩れた時に何を仕出かすかわからない。下手に刺激しないほうがいいでしょう。


「もういい。金だ。いい加減に出せ。」

「えと、それなんですけど、財布持ってきてないです。」


 わたしの一言で、今までの問答が全てただの時間稼ぎだったことを悟ったようです。長身の男の表情が凍り付きました。

 手の平を見つめ、天を仰ぎ、そして頭を抱え、最後に怒号と共にわたしの周りにある見えない壁を殴りつけ、勢いよく弾き飛ばされて地面を転がりました。



 思わず叫んでしまったのが彼の失敗です。今の大声でこの場所に居る自分達の存在をアピールしてしまいました。

 目撃者が居たのなら、小さい女の子に殴りかかった人として許されざる姿と、情けなく弾き飛ばされた姿の両方を見られていたかもしれません。


 そのまま我を忘れて当たり散らすのを恐れて身構えていたんですが、彼はこの場から離れる判断をしたようです。

 ふらふらと起き上がると、そのまま来た道を引き返そうとわたしに背を向けました。ですが、その長身が、地面から生えた蔓であっという間に縛り上げられます。


「お待たせしてすみません。お怪我はありませんか。」


 私の後ろから草の蔓を生やしたのは先生です。想定よりも早く着いてしまったわたしを心配してくれたのか、誰よりも先にこの場所に現れてくださいました。

 遅れる事は多いけど、ちゃんと来てくれる。やっぱり頼りになるのは先生だ。




 縛られた長身の男の周りには制服を着た警備隊員が集まり、身柄を確保されました。

 ポールとマッシュも無事小太りの魔法使いを確保し、偽物の二人をどちらも取り押さえた事でひとまず一件落着です。


 この日の後、被害者の方への謝罪だの賠償の話はどうなったのか定かではありません。

 そんな事よりも大変な事件が起きてしまい、彼らのその後を気にする余裕はなくなってしまいました。


 なんと、この偽物事件があったことで先生がサワガニさんの手先ではないのかと疑われてしまったのです。

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