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太陽は学園都市で恋をする  作者: いつきのひと
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秘密の暴露

 先生の好みが知りたいです。

 わたしやカエデさんを好きだというのは確かなのですが、それと嗜好は別の話。


 先生好みの体型は? 背の大きさは? 胸のサイズは?

 何をできる人がいいんでしょう。料理でしょうか? それとも優しく包み込む母性がある人でしょうか?


 好きな相手をもっと知りたいのです。そう願うのは恋人として当然です。それがどんなに受け入れがたいものであっても、後で知ったのでは不和の元になってしまいます。今のうちから知って慣れておきたいのです。




 はぐらかされるかもしれないと思いつつも、先生に直接聞いてみました。

 頂けた回答は、体型や体格は関係ない、大事なのは中身という当たり障りのないものでした。

 違うんだ。わたしが今欲しいのはそんな話じゃない。もっと根底の部分、カエデさんにも聞かせたことがない秘めたる部分を明かして欲しい。

 敢えてわたしにも隠すというのならば、こちらから攻めさせて頂きます。


「先生は小さい子が好きなんですね!」


 わかってます。この発言は誤解を招きます。わかっていてこれを発言したアサヒは悪い子です。

 わたしのようにどこかに毛も生えてないような娘を好む人はロリコンと呼ばれ、多くの場面において人としての権利すら許されない外道と蔑視されています。母子ともに無事な状態でお産ができる前の段階にある者に手を出すのはいけない事なんだとか。


 これは世間一般の考え方で、わたしの認識とは違います。わたしは先生が子供好きでも構いません。

 ロリコン?であれば、自分を変えたり合わせる必要が無く、今のままでいいので好都合。

 でも育ってはいけないというのは悩ましい。人は必ず育っていきます。特別学級でわたしだけ靴のサイズが変わってませんが、育つはずです。


 ロリコンを許容する意思は伝えていません。なので、嫌われたくないと願うのなら否定するでしょう。その勢いで本当の嗜好を教えてくれる可能性に賭けました。


「あー、やっぱりそう見えますか?」


 先生がカエデさん亡き後に、確たる意思で見初めたのは他ならぬアサヒ・タダノ。誰もが認めるちんちくりん。

 年齢に似つかぬ幼い外見の持ち主であればまだ言い訳もついた。だが実際年端もいってない。世間が見ればこの組み合わせは異端。

 実家にあった本の中の物語でも否定的であり、ほぼ全てが悲恋だった。教師と生徒の関係は、歳の差恋愛同様、成し得ることのできない禁断の恋。


 今その禁断の恋真っ最中なんですが、先生は幼女好きを認めたため、当初の目論見が外れてしまいました。

 自分はロリコンではなく、好きになった相手が小さかっただけだと早口でまくし立てる姿を見ることはできませんでした。




 先生は作業の手を止め、天井を仰いで呟きます。


「小さいのが良いというか、大きいほうにちょっとトラウマがありまして。」


 ある授業中、制服の上からでもわかる大きな乳房を持つ女子とペアを組むことになった。そこで彼女が突然胸を触られたと大泣きしはじめ授業は中断。先生がいくら弁明しようと誰も聞く耳持たず。そこからしばらく無作為に女性の乳を揉むおっぱい魔人とからかわれる事になったそうだ。太めの同性から揉んで満足しろと上半身裸で壁に押し付けられた時など生きた心地がしなかったとも言っていました。


 そんな事件があり、大きめのおっぱいを持つ人を警戒するようになってしまったんだそうです。近付いたら最後、痴漢だと叫ばれ冤罪を認められぬまま地位を奪われて、ひとり寂しく野山を彷徨う事になるのではないかと今も恐々としているそうです。


 事実を解き明かすことなく被害者の主観のみで断罪されてしまった先生がかわいそうです。そんな一辺倒がまかり通る当時の環境も恐ろしい。先生が少しでも救われるよう願うばかりです。 

 とりあえず、おっぱいが大きいのは苦手。覚えました。


「そのままの君が一番です。アサヒさんはアサヒさんでいてください。」


 今のままの自分を認めてくれるのはとても嬉しいです。嬉しいのだけど……なんか違う!




 先生の事を良く知るのは理事長ですが、多分、先生はあの人にありのままを晒していない。つまり今の状況では役立たず。

 同期の人達を訪ねようにも、おっぱい魔人事件で先生をからかった当事者たちだ。間違った情報しか得られないでしょう。

 それならばやれることはひとつ。そう、家探しです。


 以前、三連休に片付けたのは洋服タンスだけ。他の引き出しや物置きにはまだ手を付けていません。先生の家にある大量の置き土産の持ち主からは夢のお告げで片付ける許可を貰っています。整理だと言ってごまかして、先生の性癖を探るのです。


 狙うのはずばり、エッチな本。

 元妻帯者といっても先生も大人の男性です。ひとつも無いとは言い切れません。もしかしたら、部屋に残されていた本物の女性用下着をオカズに自分を慰めているのかも。遺品の下着にもう会えない人の香りを求めていると考えるとロマンティックだと思います。それが名前も知らぬ他人だったら気持ち悪いですが、先生とカエデさんは事実婚の間柄ですからセーフです。


 木を隠すなら森。整理するのは雑誌や新聞が大量に積まれてなにがなんだかわからなくなっている居間の棚。

 先生にはそこを触るのかと驚かれました。衣服同様、どう片付けるか迷って手が出せなかったそうです。先生、もしかして掃除ができない人なんですか。



 本棚の整理は罠でした。

 古い雑誌の中に何か紛れ込んでいないかとめくったら中身が気になってしまい、つい読みふけってしまいます。本の虫に対して古本は捕虫器です。読みたい欲には抗えません。

 古本への没頭は、様子を見に来た先生に声を掛けられるまで続いてしまいました。


「これ、どこで見つけました?」


 先生の手には、カエデさんから頂いた楓の葉っぱのヘアピンがありました。

 外した際に壊れたのか留める部品がなくなっていたので、いつも大事に持ち歩いていました。転げ落ちるなんて今までなかったのですが、本に熱中しているうちに落としてしまったようです。


 返答に困りました。正直に言うのであれば、秘密にしていた事柄を洗いざらい話さないといけません。誕生日プレゼントの為に過去に転移したことや、二人の間に居たことや、カエデさんの最期を看取ったことまでも、全部。

 先生の秘密を暴こうとして、わたしの秘密を暴かれそうになってしまいました。攻守反転の瞬間です。


「僕が昔あげてから、ずっと付けてたんですよ、コレ。」


 先生は、棚から二人が写った写真を持ってきて、写真嫌いとは思えない、とてもいい笑顔のカエデさんの顔を指さして教えてくれました。

 わたしが撮ったものなのでちゃんと覚えています。もうヘアピンとしては壊れてしまいましたが、これは幼い頃から最後の最後まで先生が好きだった人の、先生に対する想いそのものです。初めて貰った玩具だけど、その時からずっと好きだったという証。受け取っておいて今更だけど、とても重い品です。


「わたしが貰ってもいいですか!?」


 つけていた人物はもう居ない。それに壊れてしまっている。流石にもう捨ててしまおう。彼女も許してくれるはず。

 言いかけた先生よりも先に、そのヘアピンが欲しいと口に出せました。


 危なかった。失った人を想う気持ちも、わたしが好きになった先生の一部。両想いだった気持ちを先生に捨てさせてしまうところでした。

 言った瞬間は訝しげでしたが、先生は壊れたヘアピンを快く渡して頂けました。元の持ち主から貰ったものなので、この状況は取り返したというのが正しい表現になりそうです。 


「あれ、壊れてたっけ? あいつ付けて行ってたよな?」


 記憶違いに首を傾げていましたが、せっかちで、いつも慌てて色々失敗するのがカエデさんだから、そういう事もあったんだろうと一人で納得していらっしゃいました。

 



 家探しは中止です。今日はこのまま、読みたい欲に駆られつつ本を片付けることにします。


 好きな人に隠していた秘密がバレそうな時に、こんなに息苦しく、早鐘のように心臓が高鳴るだなんて思ってもいませんでした。

 先生には穏やかに過ごして欲しい。こんな体調の変化を体験なされるのは望んでいません。


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