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太陽は学園都市で恋をする  作者: いつきのひと
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はじめての味

 まずはじめに。まだ学生であるわたしと先生との子供は気が早いです。

 関係が末永く続く事でいずれ愛を育み子を為すことにもなるでしょうけれど、わたし自身がまだ子供なので、授かるのはまだまだ先です。


 そういうものはわたしの成人までは待つと先生とも約束しています。

 成人とはあくまでそこまでの時間があれば常識を学び終えて理解できているはずだという形式のもの。

 時間制限なのです。わたしはそれまでに、どれだけ学習しなければいけないのかもまだわかりません。


 わたしはまだ知らない事が多いです。無知なのは人としても未熟な証。

 ついでに語ると、マツリさんがそういう目で見たように、教師と生徒とでは立場から顧みても対等な関係を築けないと思われています。固定観念に捕らわれた現代社会にわたしと先生という例外を見せつけてやるのです。

 そうして社会的にも許される年齢に至った時に、先生の隣に自信を持って立つことのできる人物にわたしはなりたい。

 そんな諸々を全部すっ飛ばして全ての結果である子供だなんて、あまりにも気が早いのです。



 わたしの突然の雄弁にたじろいだ二人に、彼氏持ち先駆者のわたしが教えてさしあげましょう。これは優位に立っている者がまだ持たぬ相手に対してマウントを取るものではありません。断じて。


「どうしてキスが子供の話に……」

「口づけすると子供が産まれてしまいます。だからまだです。」


 なんということでしょう。二人が硬直していました。

 魔法を使ったつもりは無いんですが、熱く語っているうちに時間を止める力を手にしてしまったようです。あ、時計動いてます。これは時間を止めるのではなく、私自身が物凄い加速をする魔法、もしくは人を対象とした凍結の魔法でしょうか。

 先生への想いを語っただけで目覚めてしまうとは、人の感情とはなんて恐ろしいのでしょう。



 硬直から解放された二人からの質問は日付が変わる時間まで続きました。

 止まった分の時間を取り戻すかのような勢いでしたが、後ろめたさはありませんのでちゃんと答えました。


 手を繋いだのは数えられない程。ボディタッチをどれだけしたかなんて覚えてません。

 想いを伝えたのは初日から。ラブレターよりも先に口で宣言してます。お返事は半年ぐらい待ちましたけど頂きました。

 先生の部屋へ訪問するのは週の半分以上。事実上の通い妻です。お風呂も寝るのもご一緒しました。既に裸の付き合いもできる仲でございます。


「それ、特に何も無かったんですよね?」


 そうなのです。全く同じ状況のはずなのに、恋愛小説で見る朝チュンなるものがありませんでした。

 裸ゆえに先生の、コメディ作品では息子と称される股間から飛び出しているモノを見る機会もありました。他の人の物を見たことはありませんが、先生のそれは恥ずかしがるようなサイズでもないと思います。決してわたしにも誇れないようなお粗末な物ではありません。


「順番が……恋の順番が……」

「アサヒさんは凄い……凄い……」


 こんな時間まで喋り続けた疲れが出たのでしょう。二人ともうわ言を並べ始めていたので、わたしの判断で楽しい女子会もお開きになりました。




 翌日、先生がナミさんにお説教されてしまいました。

 大事にするのはいいのだけど教えるものはちゃんと教えるべきだとまくし立てるナミさんに、先生は返す言葉も無いと言わんばかりに項垂れていたのは印象的でした。


 そして、夜には先生からの釈明がありました。

 わたしの無知に甘えて、好き勝手やる少女のありのままを受け入れていた自分が嫌われないか不安なんだそうです。


 何を仰いますか。わたしと同年代の女の子が布面積の小さい水着で体操するような動画を先生が持っていたり、寝相の悪さからあられもない姿で寝てるわたしの写真をこっそり撮っていたとして、それが社会的にはダメでもわたしは許します。

 先生は今まで散々苦労してきたのです。今更、大の男を甘えさせるなとは言わせない。



 個人授業の前に、わたしの年齢で教わるのはタイミングが早すぎて刺激が強いので、気分が悪くなったらすぐ止めるから言って欲しいと前置きがありました。

 愛の為に盲目になるわたしですらドン引きする可能性を秘めた、世界の真実が先生の口から語られます。



 この世界における生物の繁殖にまつわる事柄と、人間もそれに準じているものであること。人体の構造、主に下半身の腰周りの内臓の機能について。先生の股間に生えている物体や、わたしの身体の中にもあって、まだ機能していない臓器の役割も。

 どんなエグい内容なのかと身構えていたのですが、そこまで衝撃的な物ではありませんでした。


 驚いたとすれば、キスでは子供ができないことと、「キスで子供ができる」の意味はそこから発展して繁殖行動に至った際に子供ができるという未来予測だった事。

 この一連のセイキョウイクなるものを受けたことで、今までずっと不思議だったものを理解することができました。朝チュンとか、描写されていない部分にはこの繁殖行為があったんです。


 おかしいとは思っていました。

 一緒に寝るだけでは子供は産まれません。寝るだけで生産できるならわたしと先生の間には何十人もの子供達が出来上がっているはずです。朝起きたら全裸になってたというのも考えてみればおかしい。どれだけ寝相が悪いんだ。


 性の知識に関しては分別の付かぬ子供には与えられない知恵なんだそうです。

 身長や魔力の総量のように個人差があり、第二次性徴の進み具合の違いでいじめが起きたり、自分の心と体の成長を受け入れられずに戸惑ってしまったりで、教える側としては難しいものなんだとか。

 わたしのようにあっさりと受け入れてしまうのは立派だと褒めてくださいました。今まで読んできた本の中にあった不思議な描写の正体もわかりましたので、まさに一石二鳥な時間でした。




 まだ幼い生徒との子供ができてしまうという先生の社会的地位の失墜の心配も、子育てに関わる経済的圧迫の不安もなくなりました。これから必要になる話をして頂いたお礼に、感謝の口づけをしようと思ったのです。


 届きません。先生の顔が遠い。物理的な意味でとても遠い。背が低い自分を今ばかりは責め立てました。肝心な時に、そんな理由で目的が達成できない自分が腹立たしい。


「先生、しゃがんでください。」


 先生の腕を引いて椅子から下ろし、床に膝立ちにさせました。目的の部位にわたしを届けるにはまだちょっと遠いかもしれない。つま先立ちしたら届かないでしょうか。いや、届けよう。やりたいとはずっと思ってたけど、それをしたら子供ができるという勘違いでずっと我慢してたんだ。


 舌なめずりしたわたしの顔を見て、何かに気付いて引っ込めようとした先生の頭を両手で挟み、唇を頂戴いたしました。





「生姜焼きのタレでしたね。」


 後日行われた女子会で先生との初めてを終えた事を報告したら、初めてのキスの味を聞かれたので正直に答えました。

 自家製のものではなく、既製品の調味料です。自炊を始めたばかりの二人にオリジナル調味料を作れというのは難しい話です。それに既製品だっておいしいものはおいしい。

 一緒に調理して同じ食卓を囲んだ喜びに、今までずっと我慢してた分が上乗せされています。これがおいしくないわけがありません。


「違うの……恋はもっとロマンティックに……そんなんじゃ……」


 愕然とする二人の反応を見るに、想像していたものとはだいぶ違ってしまったようです。可哀想ですが、他人の為に恋をしているわけではありません。わたしと先生が納得していれば、どんな形でも全部良いのです。


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