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太陽は学園都市で恋をする  作者: いつきのひと
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隠れる太陽

 身体の拘束は解いたのだから、そのまま外に逃げてしまえばよかった。

 後悔は後から意図せずしてしまうものだと身をもって思い知りました。


 廊下に出たところでランタンを掲げて歩いていた背丈の大きな大人と出くわしてしまったのです。

 男の人とは逆方向に走ろうとしたんですがすぐに転んでしまいました。引きこもり少女の運動神経なんてそんなもんです。

 小さい身体とアクロバティックな機動で大人を翻弄するなんてのは期待しないでください。わたしの魔法はそこまで便利じゃありません。疲れるんです、魔法。



 転んでしまいましたが、起き上がるより先に壁を作って廊下を塞ぐことで追跡を振り切る事はできました。

 がむしゃらに逃げたフリをしましたが、実は目覚めた部屋に戻っています。


 なくした物が実は一番最初に探した場所にあった、という話が頭に浮かんだんです。

 下手でも縄で縛っていたくらいですので、わたしはきっと大事な人質。ならば彼らは一生懸命探すはず。必死になればなるほど焦りもあって視野も狭くなる。まさかこんな場所にいるなんて思いもしないでしょう。



 戻っているとはつゆ知らず、大声を張り上げながら誘拐犯達がわたしを探しています。

 大人達の正確な数はわかりません。声色は三種類だけど、もっといるかも。


「魔法で探せないのか?」

「出来るならやってる。使ったら学園に見つかってしまうぞ。」


 なるほど、魔法を使えば学園の先生たちにこの場所を見つけて貰えるんですね。いいことを聞きました。



 遠ざかっていく足音を聞きながら、この後どうしようか考えます。

 部屋を飛び出してしまったのはあまりにも軽率で無計画でした。反省です。

 転んだ時につい壁を作ってしまいましたが、今思えば、トイレに行きたいとか演技してもよかった。


 反省したところで状況は変わりません。

 わたしがどこにもいない事で誘拐そのものを諦めてくれればよいのですが、私の荷物が行方不明のままという問題が残ります。私がこの部屋に居る事がバレれば状況は振り出しに戻ります。

 振り出しならいい方で、脱走の可能性から見張りが付けられたり、わたしから逃走の意志を奪う為に暴力が振るわれるかも。

 暴力に頼る大人には慣れてますが、やっぱり痛いのは嫌ですね。


 勘当済みで、持っていた通帳と財布以上のお金を持っていないわたしに人質としての価値があるとも思えません。

 それに関しては下働きとか奴隷として身体を売り払うとか利用の仕方は誘拐した人達の考え次第なので気にしない事にします。どうでもいいです。




 このままでは何の進展もないまま時間だけが過ぎていきます。

 新しい生活が始まろうとしている矢先からこの状況、どうにか変えなくてはいけません。

 魔法を使えば学園の誰かがここに来る。誘拐犯が心配している以上、それは間違いないでしょう。



 覚悟、決めました。


 探し疲れた誘拐犯達が戻ってきて、何かの拍子でこの扉を開けた時に窓から外に出ます。

 そこから先は状況に応じて何とか捕まらぬように立ち回ります。魔法を封じる魔法を使われても、相手は使った時点で負けなのです。



 さて、脱出経路の窓の外は……列車の中から見る限りそこまで背の高い建物は無かった気がするんですが、結構高いですね。着地をうまく行わないとその場で動けなくなりそうです。

 窓は開けておきます。格子も何もないので防犯上よろしくありませんが、今は好都合。



 どんな魔法で着地しようかとて悩んでいたら、先程遠ざかっていった足音が再び聞こえてきました。


「逃げたフリして隠れてたってマジか…?」

「ああ、魔力はこっちから流れてきてる。あの部屋にいるぞ。」

「何だかわからねぇんだが魔法の発生がメチャクチャ早かったから気を付けろよ。」


 戻ってくるのが思っていたよりもずっと早いです。壁の作成を加減もせず盛大にやっちゃったので少し休ませて欲しかったんですが。

 屋敷の使用人全員を相手にしてまる一日逃げ回った事もあるわたしです。鬼ごっこには負けません。


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