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太陽は学園都市で恋をする  作者: いつきのひと
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休日の来訪者

 頂き物のパジャマにさっそく袖を通し気持ちよく眠れたアサヒです。

 休日二日目も先生の部屋から始まりました。


 そうです、今日も休みです。休日はなんと三日もありました。

 創立記念日と土日が連なる大型連休なのです。


 先生は宿題を山のように出す鬼ではありません。せっかくの休日は学業を離れ羽を伸ばして欲しいとの願いから、休みの間何をしていたのかをひとつ報告するという課題があるだけ。

 寝ていた。掃除した。ちょっとおいしい食事を摂った。冒険をした。世界を救ってきた等、何でもいい。学園を舞台にした物語でもここまで良心的な先生はなかなかいません。




 自分の意志で制服と運動着以外の服を着るのは入学以来初めてでした。


 実家で着ていた物は入学時に持たされた荷物の中に入ってませんでした。何の思い入れもない服でしたし、今更問い合わせる気にもなりません。おそらくは捨てられたのでしょう。


 学園都市だけが生活圏でよその街にお出かけもせず、寝る時も運動着のまま寝て何の問題もなかったので、面倒臭がりなアサヒは自分の服を今まで一つも買っていなかったのです。

 先生は女の子なんだからもっとお洒落してもいいと仰られましたが、わたしはその女の子らしさというものがよくわかりません。色んな本で得た知識を基に考えると、ただひたすらに面倒臭い。


 下着のように同じものを複数持っておいて、予備にしたり使いまわしたりする手法もわかります。ですが、先生の奥様のように衣装棚に入りきらない程所有したいとは思えないです。



 着るものは適当でも、同じ下着を何日も変えてない所には至ってません。

 毎朝の賭け事で、一度当たったことに味をしめて一週間続けて無地の白に賭け続けた男が居たのです。


 パンツは彼の為に履いてるのではありません。選ぶ権利はわたしにあります。汚れてなければそのままでいようか迷っていた時期だったので、思い直すいい切っ掛けになりました。

 その面だけで見れば、人の下着事情を賭け事に使うポールとマッシュには感謝です。


 持って帰るのは大変なので、大量に頂いてしまった服は奥様が使用していた棚に再び収納しました。中身はそのままに、所有権を引き継ぐ形になります。

 先生、奥様、この服は大切に使わせていただきます。ちょっと多すぎですが。





 さて、今日の予定ですが、特にありません。

 やるべきこととやりたいことは昨日ほとんど済ませてしまいました。


 新たに観たい演劇や映画があるわけでもないし、スポーツ観戦にも興味がない。身体を動かしても疲れるだけで面白くありませんし、特別食べたい物があるわけでもない。最低限、本が読めていればわたしはそれで十分です。つまらない女だと言いたくば言うがいい。わたしは許します。


 先生は隣の部屋で次の授業の資料作りをしています。できることならお手伝いしたいのですが、わたしにとっては予習どころか授業内容のネタバレになってしまいます。手の届く所に居てくれるだけでありがたいというお言葉を頂いたので、部屋にあった本を読みながらゴロゴロしてましょう。



 休日らしい怠惰を貪っていると、呼び鈴がけたたましく打ち鳴らされました。

 急を要する事態であっても限度があると思います。部屋の主の先生は作業中ですし。


 休日の午前中に来る客なんてロクなものじゃありませんし、先生の手を煩わせるものでもありません。セールスだか勧誘だか知りませんが、華麗に追い払ってみせましょう。

 手を止めて立ち上がりかけた先生を制し、玄関口へ向かいます。


「やっぱりここに居た!」


 呼び鈴を連打した犯人は怪しい商品を携えたセールスマンでも宗教の勧誘でもなく、ナミさんでした。

 中に入れて話を聞くと、一昨日の夜からずっと部屋に戻っていないのを心配して探してくれていたようです。連絡先や行先など、何か書置きや言伝をしておいておくべきでした。失敗です。



 宿舎の管理人への申請などが必要とは聞いていませんし、先生もそういったものは知らないそうです。 

 ですが、前日から丸一日以上戻ってきていない生徒がいるというのは、やはり事件や事故に巻き込まれた可能性が考えられます。


 食堂で小耳にした話では、外泊等に許可を必要とするように学園に働きかけ、自分達で生徒の行動を監視または管理しようとするグループの存在もあるそうです。

 空中分解する前例が多くあるのに、秩序を作ろうという運動が盛んなのはいい事なのでしょうか。


 休日でなくても外泊が多いわたしならば、特に彼らの目に留まることでしょう。

 朝一番で彼女らが抜き打ちの在室調査をしているのを見かけたナミさんは、確認の為に一直線にこちらまで走ってきたとのことでした。

 お手数おかけしてしまい申し訳ありません。



 正直に先生の部屋に居たと言ってしまったら彼女らに大義名分を与えてしまいます。ご覧の通り合意の上の健全な関係であっても、傍から見れば問題しかありません。

 ナミさんはここまで走ってくる間に不在の言い訳を考えていてくれました。


「連休中はずっと私の部屋に泊まったことにするわ!」


 帰りが遅くなったクラスメイトを見つけて泊めた。自由な彼女は明朝姿を消した。それが繰り返されているとごまかしてくれるそうです。

 深夜の外出や帰宅を目ざとく見つけようとする監視網をくぐる事など特別学級ならば朝飯前、ということにしよう。そうでなくても問題児揃いのわたし達だ、外泊や野営ぐらいやるだろう。


「私達も味方だからね!」


 何かあっても二人だけで抱え込まないで欲しいと言った後、ナミさんは忙しく宿舎のほうへと帰って行きました。

 特別学級の皆を敵視したことはありませんが、仲間たちを巻き込みたくないと、わたしが当事者になってしまった揉め事を言わずに済ませているのは事実です。


 こうやって何かの時は協力してくれるのはとても嬉しいです。

 全方位に噛み付いていて狂犬とまで呼ばれている彼女の背中がとても頼もしく感じられました。


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