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太陽は学園都市で恋をする  作者: いつきのひと
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アサヒとクロード、二人の恋愛観

 今回やらかした人に、わたしが好きなのかどうかを聞いてみました。アサヒです。

 クロード君はすぐには答えてくれませんでした。



 そんなことは今の状況を全部見ていれば嫌でもわかります。

 両想いになりたいが為に効果のわからない魔法の道具を買ってしまい、使ってしまった。全てを明かしてはくれませんが、たぶん本人の前では恥ずかしいから言えないだけで、そういうことなんでしょう。


 言い寄る女生徒は以前程多くはありませんが、まだアタックは続けられています。

 自分に向けられた好意を差し置いてこんなチビのどこを見て好きになったのかも知りたいですが、聞かないでおきます。


 庇護欲から自分が守ってやらないといけないとか思われていたらわたしが怒ります。わたしは特別学級での成績は二番手にして委員長。やったのはただの自爆でしたが、サワガニさんの魔の手から学園都市を救ったのもわたしです。わたし達の知らないところでなにやら暗躍しているあなたとは違うんです。



 口にしてはいけない呪いがあるわけでもないのに、、YESかNOかすら答えてくれないのは酷いと思います。

 答えてくれないと想定していた次のステップに進めないんですが、いいや、教えてくれないなら次行きます。

 では、次の質問です。


「わたしの全部が好きだと言えますか。」


 好きだと発言してないのを突っ込んではいけません。特にそこの未来の自分。


 クロード君が普段見ているのはこの教室に居るわたしです。確かにそれはわたしだけども、この場で見せているのがわたしの全てではない。


 学園の中では見せてない自分が居ます。

 例えばトゥロモニの姓。事情を知らない皆には何かの称号か、誰かの養子に入ったか、独立するにあたって名乗りを上げたかに聞こえているでしょう。

 花火の魔法の事も特別学級の皆は知りません。

 先生の自室にしょっちゅうお邪魔していて、何度もお泊りしている事も知りません。これをバラすだけでもよさそうなんですが、学園に存在している慣習を見ると生徒に手を出すことは許されていませんので、先生の立場が危うくなる手段はなるべく避けます。聞かれないから答えないだけの秘密にしておきます。


 そして、先程までクロード君を詰っていたアサヒさんもわたしの側面です。

 未来視で見られた未来を正史と定義するならば、アサヒさんが本来あるべきわたしの姿と言ってもいい。


 誰一人信じてなくて、全部自分で事をなす独りよがり。一見朗らかなように見えるけど、根っこの暗い部分が見え隠れ手している。そんなわたしもわたしです。

 一面だけで好きになるのは構わないけど、勝手に幻滅して非難されたくない。



「コレもわたしです。好きですか。」

「アサヒ先生、コレ扱いは酷いと思います。」


 指さしたアサヒさんに抗議されましたが無視します。

 延々と説教をしてきた相手を好きになれというのは無理があるんでしょう。目が大きく見開かれました。でも残念、それは君が呼び出した君が求めるわたしなのです。


「わたしは先生が大好きです。」


 このことはそうやって自分に暗示をかけてる可能性を指摘される程言ってます。

 クロード君からわたしへの好意と、わたしから先生への好意に何の違いがあるというのか。

 そこに違いは無い? いいえ、違うのです。


 クロード君はわたしに自分だけを好きでいて欲しい。他の誰かに現を抜かす姿を見たくはない。

 それに対するわたしは先生が前妻や他の誰かを好きになってもいい。身を引いてもいいしキープ扱いで元鞘に戻るのも構わない。どうですか、違うでしょう?


 クロード君が好きになったのは、先生が好きなわたしなんです。

 先生を好きにならなかったアサヒ・トゥロモニは彼の望んでいた姿ではなかった。


「わたしは先生の奥さんも大好きです。わたしが好きなら先生も恋人として好きになってください。できますか、クロード君。」

「僕にはできない。」


 数時間ぶりに固く閉じられていた口が開きました。

 わたしにできてなぜわたしよりも成績の良いクロード君ができないのかはわかりません。

 クロード君はそのまま、栓のゴムが壊れて漏れ出した蛇口のように呟きました。


「もう、しません。」

「それはこんなバカ続けるのかわたしのこと諦めるのかどっちなんですか。」


 どっちを選ぶにしろ、あなたの恋のお相手が目の前に居るんだ。せめて顔見て言ってほしい。両手で頭を掴んでわたしの顔を向かせます。

 座っててもクロード君のほうが背が高いのでぎりぎり耳ぐらいまでが届かない。背伸びして手が届いたのは頬までですが構いません。


「ふぉ、ふぉふひはへう。」

「ハッキリ言ってください! 皆にも聞こえるように!」


 先刻、わたしの事を諦めさせると言いましたがちょっと訂正を。

 異世界の人物を呼び込んだりする大事件を起こさなければわたしの事を諦めなくても構いません。わたしが心動かされるのは先生一人ですが、その想いは受け取ります。そのかわり、期待に応えて一夜限りでも過ちを犯したりはしません。

 諦めるのならばどうぞお好きなように。周囲にどんなに迷惑かけようとも、新たな恋の相談には乗りますし応援もします。


 彼の返答がどうであれ、これまでと変わらぬ関係でいるつもりでいます。


 この特別学級の担任は他でもない先生です。わたしの大好きな先生です。

 たった五人の教室で、生徒同士の関係がギクシャクして空気が重くなるのは先生にとっても良い事ではありません。

 だから今まで通り接しますし、クロード君の恋心を悪く言ったりもしませんし、からかったりもしないと約束しましょう。


 これがクロード君をあまり傷つけずに事を収めようと考えたわたしの出した答え。

 いわゆる、「これからも友達でいましょう」というやつです。




「もうしません! 変な物買ったり、黙って使ったりしません!」


 背伸びの限界でわたしの手から解放されたクロード君が、この場に居る全員がわかる言葉で、わたしに言われた通りハッキリと答えました。

 彼が選んだのは、変な魔法道具を買ってみたり無断使用をしないというもの。


 この選択肢は、わたし、まだ諦められていない? 横恋慕継続?

 それはそれでどうなのかと思いますが、わたしと先生との関係を邪魔しないのなら、まあ、いいのかな? わたしへの恋心じゃなくて、それを起点とした行動が悪かったんですし。


「えっと、大きいほうのアサヒさん、ごめんなさい。」

「言えたじゃないか少年。それを聞かせて欲しかったんだよ。」


 途中から水を差すことなく見守ってくれた被害者のアサヒさんは満面の笑みで、自分に向けて下げられたクロード君の頭をぐしゃぐしゃに撫でまわしていました。





 たぶん、これで全て丸く収められたと思います。

 教室に張り詰めていた緊張感も解け、先生も皆も胸を撫でおろして無事解決に至った事を喜んでいます。

 廊下の接続がめちゃくちゃになってしまった事件もありましたが、あれはあれで学園都市で発生した謎の不具合という事で学園七不思議に……


「お初にお目にかかります、魔女殿。」


 この教室では聞いたことが無いけれど、よく知っている野太い声がしました。

 生徒とは思えぬ巨躯がありました。。そしてサワガニさんが居た時にも感じた全身を潰されそうなよくわからない重さが肩にのしかかります。

 この重さには、警戒や恐れ、怒りを感じます。

 なぜこの学園に入り込んだ。何が目的だ。生徒に何をしている。直接耳に入ってきた言葉ではありませんが、そんな感情が思い起こされます。


 誰が呼んだんでしょうか。いや、いつの間にそこにいたんでしょうか。

 理事長が、教壇に立っていました。


「お久し、いや、初めましてになりますか。ええ、魔女にございます。」


 その重圧にただ一人動じていないアサヒさんが、声の主に答えました。


「お名前、お聞きしても構いませぬか。」

「今より先の時におきまして皆が勝手にそう呼び始めたので、黎明の魔女、アサヒ・トゥロモニを名乗らせてもらっております。」


 なんですかその格好いい称号。黎明という言葉は知りませんでしたが、小声で「夜明け」という意味だと教えてくれました。夜明けのアサヒ。そのまんまですけど、すごく合ってます。


「知らぬ名ですな。」

「ええ、そうでしょうとも。」


 解けた緊張が再び張り詰め、教室を包みました。

 理事長は外敵である黎明の魔女から生徒を守る為、何が何でも相手を追い払う気でいる。


 以前の食堂事件の犯人、メルベス講師を学園に招いてしまったのは誰でもない理事長だと聞いています。

 結果的にわたしが大怪我をしてしまったのを非常に悔いていて、床が落ちそうなくらい土下座されました。

 二度と生徒を傷つけさせまいとあの時誓ったんだそうな。


 その強い意志に、アサヒさんは受けて立つつもりだ。いや、戦わなくていいのでは? なんでやる気になってるんですかアサヒさん。


「学園への介入の目的、ご説明願えますかな?」

「その拳を先に下ろして頂けるのなら考えますわ。」


 しなくていい争いは止めてほしいという意思は、そう思った瞬間に声に出しておくべきだったと後悔しました。



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