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太陽は学園都市で恋をする  作者: いつきのひと
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自分との勝負

 先生とのスイートタイムにとんでもないお邪魔虫が湧いていました。

 まさかのまさか、大人の自分です。


 身体も魔法もあちらが上。

 恋人として付き合いこそしていないものの、先生との時間も相手のほうが長い。

 そんな相手には正攻法では到底勝てません。でも勝ってみせます。相手が完全上位互換ではない事を証明してみせましょう。。




 今日も先生と料理教室とお食事会でした。 

 ジャマが入りましたが、その予定は変わりません。

 出歩かれるのも困るので、アサヒさんも先生の家に連れていきました。



 アサヒさんは、先生が愛する人を失った事で二度と恋愛などしようと思わなかったように見えていたらしいです。自分の事を気にしていたのは知っていたが、あくまで教師と生徒の立場を踏まえた上での関係だと思っていたと。


 わたしがそのままサイズアップしたような外見で、わたしの何年後の姿なのか全くわかりません。飲酒も喫煙も許される歳だけど、飲むと怪訝な顔されるそうです。そりゃそうだ。



「わたし、明日までどっかに隠れてましょうか? なんなら自分の部屋で引きこもってても?」

「わたしが迷惑しますので目につく所に居てください。それから、宿舎のはわたしの部屋です!」


 恋人同士の間に入っているのが気まずいようですが、同じ顔がウロウロしているだけで変な噂が立っていたのです。こうして監視していた方が安心できます。


「ご自分の部屋だと思って寛いで貰っても構いませんよ。こっちのアサヒさんはそうしてますし。」


 ダラダラしてるのを横目に調理するのは癪ですが、あちらのアサヒさんは料理などしたことが無いと仰いました。未経験者がどんな失敗をやらかすのかは自分達の体験から身に染みています。なので、大人しくしていてもらいましょう。



 食べる量もスピードも負けるわけにはいきません。

 先生は無理するなと仰られましたが、今日はいつもの二倍盛りつけました。

 もちろん完食なんてできません。すぐにギブアップしてしまい、わたしの食べ残しは先生の元へ。


「いいなあ。」


 突然どうしましたかアサヒさん。おかわりはセルフサービスなので自分でよそってください。

 おかわりじゃないと手を振り、わたしと先生のやりとりを眺めていました。


 ペースを乱されてしまったのでお腹が苦しいのですが、片付けせずして料理なし。食器を片付けるまでが自炊です。

 先に動きだしていた先生の横に立ち、布巾を片手に。拭くのはお任せください。


 寝る前の入浴、一番風呂はアサヒさんに譲ります。わたし二人の後という贅沢を許されるのはこの部屋の主、先生の特権です。

 布団はわたしがシャワー浴びてる間に先生が準備してくれていました。



 会話も確認もしないのに、上手くかみ合う熟年夫婦のようなこの連携。見事だと思いませんか。


 共同作業に手も口も出さず、ずっと背後で眺めていたアサヒさんから、勝負する気はないけど勝てる気がしない。との感想を頂きました。

 負けを認めたので、わたしの勝ちです。自分に勝ちました。





 勝ちを取ったことに油断して、先に眠ってしまったようです。

 目が覚めると日付が変わる前で、リビングで先生とアサヒさんがお話をしていました。

 大人の時間というやつですか。おのれ羨ましい。


 聞き耳をたててみましたが、途中からなので内容がよくわかりません。

 お酒の入ったグラスを片手にアサヒさんは続けています。


「あんなに幸せなわたしを見せつけるなんて、とんだ嫌がらせです。」


 クロード君が何か魔法の道具に手を出してしまったのは自分の責任だと、先生は頭を下げました。

 それに対してアサヒさんは、明晰夢ではない現実として自分の別の側面が見れたのだから、先生に怒るつもりはないと言っています。


「あの子は、幸せなんでしょうか?」

「幸せですよー。」


 わたしに尋ねれば深読みのし過ぎだと笑って返されるけど、やはり心配なんだそうです。わたしが親から見捨てられる形で送り出されたこの学園で、問題児だらけの学級のまとめ役を任され、教師からの期待も背負わされて無理をしていないかと。


 それに対してのアサヒさんの回答はその話を壁一枚隔てて聞いていたわたしと一緒。

 違う経歴を辿ったわたしでも、今のわたしはとても幸せに見えるそうです。幸福が過ぎて爆発しそうだと笑っていました。

 そりゃそうです。どれほど高望みしたら今の状況が不幸なのでしょうか。



 先生はわたしが凄すぎて、自分のほうが不釣り合いではないかと仰っていました。


「僕の方が愛想尽かされそうです。」


 アサヒさんは、わたしにそれを伝えて別れ話持ち掛けたら刺されるぞと先生を脅してしまいました。


 もし先生にわたしよりも好きな相手ができたのなら、わたしは身を引いて先生の隣を譲ります。その上で二人の関係を見守りますし、絆を深める為にどこまでも協力いたします。披露宴での司会も喜んで務めましょう。

 今のわたしは先生の幸せが一番なのです。刺すだなんてとんでもない。


 わたしにもっと良い相手が居るかもしれないとか考えるな。自分を信じてくれと言ったのなら、その信頼に応えてほしいと言っていました。他人の視点でわたし達を応援してくれるのはありがたいことです。


「そう思うんなら、釣り合うように頑張らないとですねぇ。」


 壁越しのアサヒさんが、わたしのほうに目を向けたような気がしました。




「アサヒさんはお休みにはならないのですか?」

「いつどのタイミングでこの世界から追い出されるか分かりませんし、起きてる事にします。心配なさらなくても、見ての通り人間辞めちゃってますんで、寝なくても大丈夫です。」


 お開きになりそうなので布団に戻ろうとしたんですが、とんでもない発言が飛び出しました。

 なにそれ。人間辞めたってなんだそれ。見ての通りって、確かに老成したような言動に比べて見た目は若々しいけれども。なんだそれ。


「いやはや、死んで欲しくないって願いは残酷ですわ。マジで何やっても死にませんからねえ。」


 大人になったアサヒさんの、眠気もすっ飛ぶ過酷な経歴を知ってしまいました。

 聞き耳を立てていた限りでも、その話はスケールが大きすぎです。


 時間としては今から数年後に、サワガニさんが完全に力を取り戻したことで、人間社会も魔法使いの社会もありとあらゆる世界がめちゃくちゃになってしまう。

 理事長とクロード君が揃っている事でサワガニさんが手出しできなかったこの学園都市が最後の砦となる。

 内乱で理事長が倒れてしまったことで、学園都市の防衛網も崩壊。ここも戦場になる。そして大勢死んでしまう。


 最終的に、どうやって習得したかはわからないが、わたしの魔法を基礎として練られた『なんでも願いが叶う魔法』を用いて宿命の少年が願ったのは、まさかのアサヒ・トゥロモニただ一人の生存だった。という物語。


「そのタイミングでまさかの願い、笑い話もいいとこですよ。」


 既に過ぎてしまった、もうどうしようもないことだと笑い飛ばしていました。


 彼女は滅ぶ世界を救うためにここにいるわけではありませんし、変える力もない。

 それに加え、アサヒがアサヒ・タダノを名乗って先生に好意を抱き、既に恋人関係まで結んでいる事で破滅へのルートは違う方向に進んでいる。同じ展開にはならないだろうと予測していました。



 世界滅亡とかはどうでもいいです。いえ、恐ろしい話なんですが、今は別の部分が気になります。


 なぜクロード君がわたしを助けようとしたんでしょうか。

 日々成長を続ける彼は引く手数多の超絶モテ男。年齢や種族や男女を問わず人望も厚く、選べるはずの選択肢は恐ろしいほど多い。

 よりどりみどりなのに、そちらの未来では死の淵にある中でわたしが死なない事を望んだ? なぜ?


 クロード君のせいで自分がここにいる、とアサヒさんは言っていました。

 既に滅亡とは別のルートに入っているのなら、彼の意思も別の所にあるのでは?


「その辺は後で直接本人を問い詰めればいいッスよ。」


 やはり壁越しでしたが、この言葉は、確実にわたしに向けられていました。いつ気付いたのかまでは定かでありませんが、起きていたのがバレているようです。


 やはり手強い、未来の自分。


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