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太陽は学園都市で恋をする  作者: いつきのひと
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アサヒとナミの仲違い

 わたし自身、まさかそんな事で言い争いになるとは思ってもいませんでした。

 仲の良い特別学級なのですが、思わぬところに価値観の違いが存在していたのです。



 先生の家で発掘した古い料理の本の話を皆にしたら大いに盛り上がり、自然な話の流れで各々が好きな親の手料理を語り合う発表会になりました。

 良好な関係を保つ家庭環境に育つ三人には当然それがある。生みの親のいないクロード君にさえ、育ての親であったおばあちゃんの手料理、母屋の調理時に出た生ゴミ行きになる野菜の切れ端を無駄なくふんだんに使ったお味噌汁がある。

 心の拠り所、親の味を持っていないのはわたしだけ。


 せっかくの盛り上がりに水を差してしまったのは大変申し訳なく思います。でもしょうがない。言う必要に駆られてしまったんだ。無いものを有ると嘘をつくのも気分が悪いですし、何度も言いますがわたしはあの両親が嫌いです。無いものとして扱いたいし、彼らを擁護したいとも思いません。あれのメンツを守る意味などわたしには無いのです。



 どんな形でも親は大事に思ってくれている。だから悪く言ってはならない。


 真正面に居たナミさんの発言です。

 開いた口が塞がらない。比喩表現でもあり、実際、閉じてしまったら息が詰まりそうでした。


 とても良いご両親の下で生まれ育っている。周囲に魔法使いが居ない環境で、魔法を使いたいと願ったナミさんの意向に寄り添った。彼女によりよい環境をと願って魔法学園へ送り出した。

 親の愛情を微塵たりとも疑っていない彼女は、わたしが受けてきた体罰や罵倒すらも愛だというのです。


 ナミさんにとって、親とは大切にしてくれた恩を返すべき相手。

 親は子供の全てであり絶対、子は親の所有物だから何をされても従順である必要があるといった朽ち木のような考え方ありません。

 無条件に愛しているのだから、無条件で感謝すべきだという、それはそれで間違ってはいない考え方。それ自体が間違っているとは思いません。ただ、わたしは親が嫌い。ただそれだけなのです。



 愛ならばそれがどんなに嫌でも受け入れなければならぬのか。

 向こうの都合で捨てたかと思いきや、またすぐに思い直して、新たな環境に適応しきった娘を「やはり実家が一番に違いない」と強引に連れ戻そうという身勝手さも愛なのか。親の言葉は絶対なのか。子は親の都合に振り回されるべきなのか。


 ナミさんとは、出会った日以来の口論となってしまいました。

 わたしは皆にとっての良いご両親は否定していないのだけど、どうもその辺りを勘違いしているようです。子を虐待する親の存在を認識できないのか。それとも、友人が酷い環境に身を置いていたなどと考えられぬのか。


 何があろうとわたしの考え方は変えません。

 親不孝で構わない。先に家から追い出したあちらのほうだ。交際相手の顔は見られてしまったが、孫の顔は絶対に拝ませない。病で倒れようと知った事か。先方にどんな不幸が舞い降りようと、認知せずに遠いこの地で毎日楽しく過ごしてやろう。





 喧嘩別れの翌日から、ナミさんからの報復が始まりました。

 集団であれば個人同士のすれ違いは免れない。排斥しようとする動きは人間に限ったものではない。意見の違う相手を自分の領域から追い出したいと考えた時、生物が真っ先にする行為がはじまりました。


 相手を存在しないものとする。つまり無視です。

 広いながらも狭い教室の中、どうしても面と向かってしまいます。彼女はその度に、わざとらしく目を逸らしました。



 無視とは集団から除け者にすることを目的としています。

 コミュニケーションを断つことで、共有すべき情報を滞らせる。一緒であることで得られる体験から意図的に除外する。それによる弊害を相手になすりつけたり、発生してしまう失敗の責任を押し付ける。

 他の誰とも違うナミさんは、学園に入る前に通っていた学校でそういったいじめを受けてきたのでしょう。わたしに対して行われているのは、そんなグループからの仲間外れを経験してきたナミさんができる精一杯の嫌がらせなのです。


 それが有効なのは仲間が居ればこそ。悲しいことにナミさんは魔法学園でも浮いてしまっていて、友人といえるのは特別学級のわたし達とマツリさんだけです。

 そうなることは目に見えていたけれど、彼女一人がわたしを無視するやり方は、ただの意地っ張りとして他の人の目に映ってしまいます。


 どちらの味方が多いかを競い、親を嫌う考え方の是非を問おうという彼女の目論見は最初から破綻していました。

 共通の友人達にわたしとナミさんのどちらかを選択させるのは酷な話。さらに、皆はわたしが親嫌いである事も理解しています。そしてなによりも、先生からの指示を皆に伝える中継役がわたしなのです。


 溢れんばかりの愛情を込められてきた相手の尊厳を守りたいという気持ちもわかる。

 それは決して間違いではない。

 でも、それの是非を二人のどちらに味方するかで計るのだけは間違っています。


 連絡の伝達などで特別学級の中心にいるわたしを無視するなどとんでもない。男子三人はナミさんに対して恋愛感情は持っていないため、嫌われたくないのを理由に味方に付くことがない。マツリさんとは元々すれ違った際に挨拶する程度には薄い関係だ。


 結果として、わたしを無視していたのは、ナミさん一人。

 彼女はわたしを孤立させようとして、逆に孤立する形になってしまったのです。



 ナミさんも頭は悪くない。勝負の仕方を間違えているのにも気付いていました。


 それでも無視は続きます。親を貶す人間は許せない。親の誰もが子を可愛いと思っている。物言わぬ獣でも弱った子供を必死に守ろうとするのだから、見捨てるはずがない。親と子は感情を越えた愛の絆の糸で結ばれた一心同体なんだ。そんな自分の考えが間違っているはずがない。正しいのは自分であり、間違っているのは相手なのだ。今謝れば、それが間違いだと認めてしまうと考えてしまっているようです。

 良い環境に身を置いても人の性質はそう簡単には変わりません。彼女は自分の失敗を認められない。頭を下げればその頭を踏みにじられてしまう。だからこそ、気の置けない友人の前でも虚勢を張り続ける。そういった経験をしてきたから意地を張っているのです。


 双方譲れないのならば、すぐに何かしらの行動を起こしてもしょうがない。

 わたしは相手の主張を理解できるのに、向こうはわたしの意思を否定したい。距離を置きたいとお望みならば、相手の我慢が続く限りそれに従うまで。


 先生からは、どんなに無視されようと普段と変わらずに接するように言い含められました。

 それで反発してしまうのではもうどうしようもないけれど、彼女がこのまま心を閉ざして壁の中に閉じこもってしまうのだけは回避したい。前の学校で孤立したように、ここでもひとりぼっちになってしまってはいけないとお考えのようです。





 ナミさんによるアサヒ無視活動、三日目。

 膠着してしまった事態は大きく動き出します。



 いつものように図書室で本の返却を行って、次の本を探そうと本棚の間を歩いていたところ、体格の良い男子生徒六人に囲まれてしまいました。

 彼らの学年を示す学年章には二の文字が大きく描かれています。つまり二年生で同学年なんですが、このような人達は今まで見た事がありません。


 それもそのはずです。

 わたし達の学園は卒業試験が受けられる三年生への進級が難しいとされています。制度として留年はありますが、猶予は一度きり。能力不足の生徒を補助するにも限界がある。

 学力か、考え方か、それとも協調性か。何かが足りず、三年生になれなかったお兄さま方が、この六人なのです。



 彼らがわたしに求めたのは金銭の贈与。手持ちを一切合切明け渡せというものです。

 学園都市の監視には穴があります。先生の探査の魔法は常駐しているけれど、建物の中を巡るには目を切り替えなければいけません。彼らは在学中の二年の間にその隙を突く術を手に入れていました。


 灯台下暗しというやつです。

 防犯の為の監視の穴、学園都市で一番安全とされる場所の警備は緩いと気がついた。監視の目は、この学園の校舎には行き届いていないと見抜きました。

 悪いことをするならこの校舎が最適と判断したけれど、相手が居ないと話になりません。他の学年や学級との接触の無い校舎において、先生達の許可を得ずして出会う機会のある場所を選択する必要がありました。

 人目が少なくて、大騒ぎができぬ場所として、この図書室を犯行現場として選んだのです。



 真面目な生徒ほど罠にかかりやすい。

 図書室は他の利用者の邪魔にならぬよう静かにするのが原則です。規則を守ろうと考えたなら、本棚を利用して挟み撃ちにされカツアゲされるという緊急事態でも律儀にそれを守ろうとしてしまう。


「おい、聞いてるか優等生。耳あるんだろ?」


 彼らの発言に耳を貸す必要はないと思って黙っていたら、正面左に居た逆毛の赤髪を持つ男子生徒がわたしの髪に指を突っ込んで、中に埋もれていた耳を引っ張りました。

 わたしが見ず知らずの相手が頭髪に触れる行為を嫌うタイプでなくて良かった。もし払いのけていたら、そのまま手首を掴まれひねり上げられてしまうところでした。持ち上がらない左腕にそれをやられたのではたまったもんじゃない。



 さて、困りました。

 貧乏な先輩に施しを与えるのは構いませんが、今現在、手持ちがありません。財布は私の部屋にあり、通帳は先生の家にある。先生の仕事部屋の机の引き出しの二段目に、先生の通帳と一緒に入っている。

 とりあえず、ポケットの中を探します。何か入っていると服が重く感じるので普段から色々持ち歩く癖が無い。辛うじて手に当たったのは、木の葉型のヘアピンがひとつ。

 大事なものではあるけれど、先生の手作りアクセサリーに商品的な価値はありません。ですが、わたしの右ポケットの中に何かが隠れていると判断したのでしょう。目ざとい後ろの三人のうちの一人にポケットをまさぐられ、ヘアピンを引っ張り出されてしまいました。


「なんだそりゃ、防犯ブザーか?」

「いや、ただの飾りだ。こんなゴミ持ち歩くなんてしょうがないガキだなあ。」


 返して欲しいと口にする前に、わたしから取り上げたヘアピンは、彼らの後方に投げ捨てられてしまいました。


 ちょっと待て。いや、ちょっとなんて程度じゃない。待て。

 いま、この男は何をしてくれた。今捨てられたアレは何だ。

 先生の手作りであり、カエデさんの形見であり、わたしにとってはとても大事な物だ。何故今日に限って持ってきてしまったのか。カツアゲに遭遇すると予報が出ていれば持って来たりなどしなかった。箱に入れて、いつも通り無くさぬように管理しているべきものだった。


 落ちた音はしない。あれは木造の床に落ちて音がするような材質ではない。魔法で手繰り寄せようにも、どこに落ちたのかが分からないから回収ができない。

 なくしものを探すには探査の魔法。だけど、別の作業、今の場合はわたしをを取り囲む六人への対応をしながら魔法に集中するなんて器用な真似はできません。

 ヘアピンを回収する為にはまず、一度に全員を無力化しなくてはならない。

 いまこの場で行われているのは校則を越えた犯罪行為。恐喝だ。わたしの反撃は正当防衛になるだろうか。わたしの魔法を見せれば相手は恐れ慄くだろうけど、相手の証言から過剰防衛とお叱りを受けそうな気がしてなりません。

 瞬時に魔法を放つ手段として短縮と圧縮の魔法があるけれど、準備をしないと使えない。なによりも、今、杖を持っていない。


 大切な物を取り上げられ、捨てられてしまった衝撃はわたしの判断を大きく鈍らせることに成功した。

 そんな事で夜明けの魔女が無力化してしまうのは情けないとしか言いようがない。でもしょうがないじゃないですか。わたしはまだ十にも満たない子供なんですから。


「金持ってるんだろ。いいから出せよ。」


 再度の要求が聞こえたことで、停滞していたわたしの思考が再び動き出します。

 ここで優先すべきはわたし自身。魔法を使うのに躊躇っていたのは自分が叱られるのを恐れていたからだ。お叱りを受けることよりも、カエデさんの形見を失う方が嫌だ。ならば、まず先にやるべきことは決まっている。

 この本棚の本たちと、この蔵書を管理する図書委員の皆様と、様々な手を尽くして本を集めてくれた先人達には悪いけれど、六人を無力化する為の犠牲になって貰おう。棚から本を引き落とし、全員を押し潰すんだ。驚いて立ち竦んだり、逃げだされても構わない。わたしが習っている短縮と圧縮を披露する為に、準備のための隙を作る。その後は成り行き任せ。どうにでもなれ、だ。


「あんたたち、女の子一人相手になにやってんのよ!」


 やることを決め、顔を上げたのと、その声が響き渡ったのは同時でした。

 窓のある方向から、まさに咆哮のような女の子の大声が発せられたのです。





 年上の男性六人という多勢に無勢な状況下で、勇敢にも声を上げた人物と目が合います。

 声の主は、ナミさんでした。


 囲まれカツアゲされていたのがわたしだと気付いて戸惑ったけど、すぐに気を持ち直し、わたしの正面真ん中に居た男子生徒に指を突きつけます。


「なにやってんのよ!」


 彼女から同じ質問が投げかけられるのは二回目です。決してCM開けの場面リピートではありません。おそらくは、わたしを見たショックで言いたかったことを忘れてしまったのでしょう。


「俺ら、ちょっとお金に困っててさ。貸してくれないかなって頼んでたトコよ。」

「だったら担任の先生に頼めばいいじゃない!」


 売り言葉に買い言葉。ああ言えばこう言う。

 まるで暖簾に腕を押すかのような言葉の応酬が始まりました。

 意味の通った言い争いに見えるけど、よく聞いてみるとそれぞれの主張はずっとすれ違っています。相手との意思疎通ができないと判断させて追い払う作戦のようにも思えますし、何も考えず勢いのまま言葉を連ねているようにも感じられます。


 騒ぐなと叱りに来た司書のお姉さんは、わたしとナミさんの襟元の黄色いリボンを見るなり回れ右。関われば身の安全が保障されないと感じたのか、自らの保身を優先すべく、無視を決め込んでしまいました。今この場を収められる権力を持った大人は一人もいなくなってしまいました。




 一方的に意見をぶん投げ合う会話のドッジボール。内容での勝負ではなく、ただの我慢比べ。

 言い争いは、いつまでも平行線。

 助けに入ってくれたのは嬉しいのだけど、ナミさんは解決のための展望をなにひとつ持ち合わせていませんでした。行き当たりばったりの直進娘は喧嘩中でも健在です。


 でも、時間稼ぎにはなりました。

 司書のお姉さんが何もできずとも、今の騒ぎは学園のセキュリティに引っかかる。通報を受けて警備隊が駆けつけるのは時間の問題です。

 それに加え、六人の注意を引きつけてくれたおかげで、わたしが策を考えるだけの余裕もできました。


 彼らをこの図書室に縛り付けて、カツアゲの現行犯として警備隊に引き渡すという方針は変えません。

 だが、口論だけではそう長くは続かない。男子生徒の咳払いが増えていて、喉が限界を迎えようとしています。埒が明かないと判断し、諦めてくれればいいのですが、暴力で従わせようと実力行使に出る危険性も孕んでいる。

 この場に留めつつも、本棚から本を落として生き埋めにしなくていい策を講じる必要がありました。


「『ジョルジュと豆の木』です。先生がわたしの借りた本に封筒を隠してました。」


 先生所有の本と、わたしの借りた本が偶然にも同じ一冊だった。偶然にもヘソクリを挟んでおいた本をわたしが取り違え、図書室に返却してしまった。先生に頼まれて、今日はその本を探しに来ているのだという作り話を皆に聞かせます。

 口止め料として半分貰う約束を取り付けている。それなりの金額のはずだと告げると、男子生徒達の目の色が変わりました。


「それを先に言えよな!」


 当然ですが、そんなタイトルの本は存在しません。先生のヘソクリもありません。

 とても真面目な先生が横領を行っているなどありえない。それに、持ち出してしまったのはわたしです。後ろめたい物を取り返すのに、分け前など言ってる場合ではないでしょう。

 こんな話を信じてしまう純粋さに驚くとともに、簡単に騙されてくれたことに感謝します。




 これ以上の手出しは余計ですので、後の事は権限を持った人達にお任せします。

 ナミさんとともに、存在しない本を騒がしく探し始めた不良たちを一緒に見送りました。


 そわそわと気まずそうにしているナミさんは、何か言いたいことがある様子。

 三日前に喧嘩して、それからずっと無視を決め込んでいたんだ。色々思うところがあるし、わたしたちの議論にも仕切り直しが必要でしょう。喧嘩中なのに、ナミさんが助けてくれたのはちょっと意外だけど、嬉しかった。


 もちろんそれは後回し。今は、再び絡まれる前にこの場を去らなければならない。

 言葉を交わすのは後でもいい。時間はたっぷりある。

 木の葉のヘアピンが手元に無いのはカエデさんには申し訳ないし、今すぐに魔法で探し出したいけれど、逃げるのが最優先だ。


「アサヒさん、ごめんなさい。」


 引っ張るわたしに抵抗しながら、ナミさんは弱々しく謝罪の言葉を吐き出しました。

 自分の考え方を否定されると自分自身を否定されたかのように感じるのもわかります。わたしも言葉が足らなかった。関係の悪化など望んでいないから、後でゆっくり話し合おう。


 いや、ちょっと待て。うん、そうだ、立ち止まれわたし。今のナミさんの謝罪は何だ。

 今すぐにこの場を離れないといけないのは彼女も承知の上。ここで三日間の意地の張り合いを謝罪する必要はないはずだ。

 わたしに対してのごめんなさい。謝られる理由は議論以外には考えられない。決してヘアピンを探す余裕がないことに対してではない。投げ捨てられてしまったことをナミさんは知らないはずなんだ。



 いったい何に対しての謝罪なのかを確かめるべく振り返ったわたしの目に入ったのは、壊れたヘアピンでした。


「さっき、そこで踏んじゃって、それで、アサヒさんが絡まれてるのを見て……」


 懸念が一つ、消し飛びました。

 どこに行ったのか皆目見当もつかなかったわたしの大切な物がそこにある。壊れても、見つかったのならば僥倖だ。

 踏んだ? 壊した? そんなのどうだっていい。手作りだから壊れやすいと先生は言った。怖がらずに正直に話して先生に直してもらおう。それでいい。見つけてくれて、わたしに渡してくれたのだから、それで十分だ。

 もしかしたら、友人との仲直りのため、話しかける切っ掛けとしてカエデさんがひと肌脱いでくれたのかもしれません。



 元気よく本を探す不良たちのせいで室内にホコリが舞っているんでしょうか。

 今から逃げなければならないのに、突然あふれ出した涙で前が見えません。


 それに、拾ってくれたことに感謝しなくてはならないのに、なぜ、言葉が出ないんでしょう。


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