第3話 怪しい誘い
「あの事件以降、彼の容態はどうですか?」
高層ビルの一室で男はワインを嗜みながら一人の女に優しく、しかしどこか高圧的な態度で尋ねる。
「・・・健康状態には特に問題無いそうです」
それに対し、女は少し間を空けて答える。
「そうですか。それは良かったです」
「ただ、、一つ気になることが、、」
女が少し躊躇いながら話す。
「何か問題でも?」
男は動じない。
「彼が則者になった可能性が、、、、」
「なんだとっっっ!!!」
女のその言葉を放った瞬間、男は激昂し、手に持っていたグラスを手で握りつぶした。しかしすぐにいつもの冷静さを取り戻す。その様子を見た女の顔には恐怖の二文字が表れている。
「新たな則者が現れたという神の声は私も聞きましたが、まさか彼だったとは、、。それは確定していることですか?」
男は再び問う。
「いえ、、まだ分かりません。しかし娘の情報によると文縄が彼に面会したそうです」
「そうですか。ではどちらにせよ彼は法則の世界に足を踏み入れてしまったということですね」
「はい」
「・・・変な力を得なければいいですが、、、、」
そう独り言を言い、彼は不敵な笑みを浮かべながら外の景色を眺め、再びワインを飲み始めた。
*
「昭吾っ!退院おめでとう!」
「ありがとう瑠南」
昨日の事件で俺は激しい頭痛と倦怠感に襲われたのだが、病院で数時間安静にしていると、思いのほかあっさりと直ってしまった。医者によれば原因は過度なストレスとのこと。普通の生活が送れるまでに回復したため、事故の翌日には退院となった。それで病室を出た瞬間、こうして可愛い幼馴染の祝福を受けたというわけだ。
「ほんと無事でよかったー。あのまま死んじゃうかと思ったんだよ?」
「俺もそう思ったよ。まあでも、瑠南に何もなくて良かった」
「へへっ。昭吾のおかげだよ!ありがとね!」
瑠南の笑顔に俺の心臓が騒ぎ始める。また体調壊しちゃうぜ。
瑠南と談笑しながら病院から出ると、そこにはまたあの男がいた。何故か今日は白衣を着ている。
「昭吾くん、退院おめでとう」
「・・・どうも」
「また来たのかこいつって顔してるね。昨日いったでしょ?明日も来るって」
「本当に来るとは思はなかったので、、」
「ねえ昭吾。この人誰?」
「犯罪者」
「え!そうなの、、?」
「ひどい言われようだね。あ、ちなみに違うからね。僕は健全な大学教授だよ」
「・・・それで今日は何の用でしょう」
僕は文縄さんを少しからかって本題に入る。
「君に合わせたい人がいてね。出てきていいよ」
文縄さんがそう言うと、そばに止めてあった車から一人の銀髪の女の子が降りてりてくる。
・・・あの子って俺が助けた、、、
「紹介します。月遥さんです。君たちの高校に今年から転入してきた子だよ」
「あの、、初めまして。先日は助けて頂いてありがとうございました」
そう言ってその月さんとやらは深々と頭を下げる。
「ああ、、ご無事で良かったです」
俺もなんとなくお辞儀をする。文縄さんが横でニコニコしているのが少しムカつく。
「えーっと、、、僕に感謝を言わせるためにわざわざ彼女を連れてきたんですか?」
「それもあるけど、本来の目的は別にある。法則についてもっと勉強してもらおうと思ったんだ。なんてったって、月さんも則者だからね」
「えっ」
俺は思わず困惑してしまった。そうか、、この人も被害者か、、、
「・・・何か勘違いしているみたいだけど、取り敢えず車に乗ってくれるかい?君たちに合わせたい人がいるんだ」
怪しすぎる。でも色々と謎を解きたい気持ちもあるし、文縄さんは信頼できる人かもっておれの直感が言ってる。多分。
「分かりました」
「話が早くて助かるよ」
「あのっ、、私もついて行っていいですか?」
唐突に瑠南が尋ねる。いや、危ないかもしれないから瑠南にはあんまり来てほしくないんだけど、、まあ大丈夫か。
「駄目、、と言いたいところだけど、特別にいいよ」
何故文縄さんが瑠南の同行を躊躇ったのかは分からないが、取り敢えず俺は、幼馴染美少女、銀髪美少女と共に、謎の容疑者白衣男に従うことにした。
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