愛知、パチンコ店名の公表作戦
星野久人はパチンコ店を読み上げ始めた。
「MIKADO、ニューサンプラザ、オオギヤ・・・」
星野久人、彼は愛知県をAI地県すると宣言し、
202X年当選した愛知県知事だった。
彼の目には迷いがなく、声にも何の淀みもなかった。
「MK、サンパレス、A-FLAG、コンコルド・・・」
パチンコ店の公表は続く。
もう30店を超えていた。
愛知県は名古屋を中心にパチンコ店が多く、
車文化の三河では駐車場が広い郊外店が栄えている。
「大丸、マルハン、オータ・・・」
星野がパチンコ店名を読み上げ始めて20分を超えた。
店名も500店を超えていた。
会見にのぞんだ記者たちはうんざりした表情を浮かべた。
それでも星野は続けた。
パチンコ店に感謝をこめて。
「今、読み上げたパチンコ店は県のHPに掲載してました。
詳しくはご閲覧願います。
なお、新型コロナウイルス収束後、
これらのお店には感謝を込めて、県よりポスターを贈ります。
ご協力ありがとうございました」
そう、彼が公表したのは自粛に協力してもらったパチンコ店だった。
他の都道府県では自粛に応じないパチンコ店を公表したが、
彼は逆に自粛した店名を公表したのだった。
しかし、だらだらとした会見は記者には不評だった。
この発表の効果に疑問だ、と。
その年の夏、新型コロナウイルスを収束した。
自粛した店は繁盛したが、
自粛しなかった店には客がまばらだった。
まるで区別しているように。
そう星野知事は区別するため協力してもらった店にポスターを配ったのだった。
『自粛のご協力を感謝します』と言う文字の横で、
星野が頭を下げていた。
客はこのパスターが貼ってある店を選んでいた。
これが星野の戦略だった。
しかし、裏の戦略も。
実は次の選挙を狙って。
星野は自粛に協力してもらったパチン店を訪れた。
星野はポスターを見つめる。
そして、呟いた。
「次はAIでウイルスを封じ込める」
その数年後、再度のウイルス感染をAIで封じ込めたのだった。