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カバンの謎と雪山

今回は説明&移動回となります。

 女神様との一件があった次の日、俺は雪山へ向かう準備をしていた。


「あ~……眠い」


 昨日はあれから一睡も出来なかったからな……今日は早めに寝るとしよう。


 後片付けをしている時に、思いついた事があったので試してみる事にした。

 今しがた食べ終えた朝食の食器を、洗わずにカバンへ仕舞う。

 その食器を思い浮かべながらもう一度取り出してみた。


「おお!綺麗になってる!」


 食器は新品同様にピカピカになっていた。

 これからは洗い物をする必要も無さそうだ。


「でもこれ同じ物かわからないよなぁ……」


 これだけでは仕舞った食器が綺麗になったのか、同じ種類の別の食器を取り出したのかがわからない。

 確かめようにもキャンプ道具には決して壊れない性質がある為、目印などを付ける事も出来ない。


「まぁ、取り出し放題で容量も無限なんだからどっちでもいいか」


 埒が明かないので俺は深く考えない事にした。


 それ以外にも、道具を取り出す過程でいくつか実験をしてみて分かった事がある。


 まず、当たり前の話だがキャンプ道具と関係のない物は取り出すことが出来なかった。

 試しにスマホや携帯型ゲームを思い浮かべてみたが駄目だった。

 スマホなんかはキャンプでも必需品だと思ったが、キャンプ道具という括りでは無かったらしい。

 しかし、目覚まし時計やマウンテンバイクといった物は取り出すことが出来た。

 細かい括りは不明だが、なんとなく理解は出来る気がする。


 次にキャンプ道具の種類についてだが、これは興味深いものだった。


 例えばランタンを思い浮かべて取り出した時、出てきたのは俺が以前から欲しかった憧れのランタンだった。

 次に、俺が知る中で最も値段の高いランタンを想像するとちゃんとそれが取り出せた。

 ならばと、実在するかもわからない超巨大なランタンを想像したが、なにも取り出す事は出来なかったのだ。


 最後に、見た事も聞いた事も無いが、こんな形ならありそうだなと想像してみると、その形のランタンをしっかりと取り出すことが出来たのだ。


 つまり、曖昧な想像だと一番欲しかった物になり、具体的な想像をしていけば見た事の無い物でも存在する物であれば取り出せるという事だ。


 他にも色々と調べられそうではあるが、現状これぐらい知っておけば困る事は無いだろう。


 食器以外の物もそのまま仕舞えば次に出す時には、綺麗に畳まれて新品の様になるとわかったので、片付けは10分ちょっとで終わった。


「こりゃ楽だな~、今までのキャンプはなんだったんだって感じだ」


 設営の面倒くささは、これから始まる期待感で楽しくもあるのだが、片付けはただただ面倒くさい。

 だから、この機能は素直にありがたいと思った。


「それじゃ、出発するか」




 途中一回昼休憩を挟み、夕方前には目的の場所まで到着した。

 疲れない体というのは便利だが、疲労が無いというのもなんだか少し気持ち悪く感じてしまう。


「動いても血が巡らないから寒いな……」


 周りを見渡せば一面雪景色だ。

 今は晴天だが、夜や吹雪の時になったらどれだけ寒いか想像も出来ない。


 春の陽気に合わせた服装をしていたので、当たり前だが寒かった。

 バックパックからダウンジャケットを取り出し着用する。


「あったか~。こんな暖かくて軽いダウン着たの初めてだな」


 このダウンも恐らく買えば何十万円もするのだろう。その性能は流石の一言に尽きる。


「よし、眠くなる前に設営やっちゃうか」


 バックパックを下ろし、テントを取り出す。

 今回想像したのは前回までのテントとは違うものだ。早速張っていく。

 初めての物で途中苦労したが、なんとか無事張り終えた。


「おお~!雰囲気あるな~!いいねいいね!」


 今回のテントは円錐に近い形をした物だ。

 これを選んだ理由は天井にある。

 天井のとんがっている部分に空いている穴、ここに煙突を作れるのだ。

 つまり、テントの中でストーブが使えるという事だ、こんなのワクワクするに決まってる。

 以前テレビで見て憧れてたんだ、雪山に来たのもこれが使いたかったからと言っても過言じゃない。


 早速、薪ストーブを取り出し設置する。


 うん、いいね。一気に雰囲気が出た。

 すぐにでも煙が出るところを見たい気持ちを抑えて、残りの設営を終わらせていく。


「よし、完成!さ、薪ストーブ薪ストーブ!」


 火を入れたら外で待機。

 しばらくすると煙突からモクモクと煙が出てきた。


「これは……!()()()……!」


 これを女神様にも見せてあげたいな。


 ……。


 駄目だ、昨日から女神様が頭から離れない。


「はぁ、早いけどもう寝るか……」


 こうして雪山生活が始まったのだった。

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