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女神様と麦わら帽子【前】

「女神様ー?おはようございまーす」


 午前9時。雪山へと出発する予定だったのだが、昨日の夜に女神様と約束していた事を思い出した為、急遽連絡する事にした。


「遅いのじゃー!!遅すぎてこちらから出向いてやるところじゃったわ!どうせ忘れておったんじゃろ!」


 ギクッ……バレてるよ。


「すみません!決して忘れてたわけではないですからね!!」


 とりあえず誤魔化してみる。


「ふん!どうだかの。我を差し置いて猫たちに餌付けしておる様だしのぅ」


 あれも見てたのか……女神様って暇なのかな。


「いやいや、あれは仕方なかったんですよ。それよりも今から来られますか?」


「もちろんじゃ!待っておれ!」


 ふぅ、なんとか許してもらえそうだ。

 俺がホッと溜め息をついていると、テントの中から女神様が現れた。


「ちょ、早!っていうかどっから出てきてるんですか!」


「相変わらず細かい事を気にするやつじゃの~。それで、これからどうするんじゃ?」


 そっちはなんにも考えてなさそうですね、とは口が裂けても言えない。


「はい、まだ昼ご飯には早いですから釣りでもして遊ぼうかと。それでいいですかね?」


「釣りと言えばあの魚を取る遊びじゃな!やってみたいと思っておったのじゃ!」


 本当によく見てるなこの人は……

 なんにせよ、今日は接待だ。このスキルを与えて正解だったと思ってもらわなきゃいけないからな。


「それは丁度良かったです!それじゃ早速行きますか。昼に食べたい物はありますか?」


「美味ければ何でもよいぞ、ただ自分が取った魚は食べてみたいのぅ」


 ふむ、魚料理か。

 出来れば手間もかけたくないなぁ……


「わかりました、それじゃあ釣った魚も合わせて海鮮バーベキューにしましょうか」


「よくわからんが美味そうな名前じゃな!それと今すぐ食べる物も欲しいぞ!」


 今すぐと来たか……なんか出来合いの物で良い物……う~ん。

 とりあえずこれで反応を見るとするか。

 俺はバックパックからシュークリームを取り出して手渡した。


「いただきますなのじゃ!ムシャムシャ……んん~~~~~~!!?」


 女神様の目がカッと見開いた。

 口に合わなかったのかな……。


「んんんまい!!甘くてとろけるぞ!!」


 子供の様な満面の笑みでこちらを見てくる。

 ほっぺにクリームついてますよ、女神様。


「ハハ……お口に合って何よりです。さ、着きましたよ」


「おお!ここじゃここじゃ、早速やるとするかの!」


 俺は釣竿を二本取り出し、一本を女神様へ渡した。

 実際にやって見せ、やり方を覚えてもらう。


「わかったのじゃ、だが餌はおぬしがつけてくれんかの……?」


 うるうると上目遣いでこちらを見つめてくる女神様。

 思わずドキっとしてしまったのが悔しいので、からかって誤魔化す事にした。


「え!?女神様怖いんですか!?」


 そう聞きながらこっそり餌を眼前に持っていく。


「そんな訳ないじゃろ!我を誰だと思っ…ヒィ!!!?」


 百点のリアクションをしてくれる女神様。

 くそっ可愛いじゃないか。


「やっぱり怖いんですね」


「もう!黙るのじゃー!!」



 くだらないやり取りもそこそこに釣りを開始する。


 大きな岩に腰かけてじっと待つ俺に対して、女神様は右へ左へ動きながらキャッキャとはしゃいでいる。

 女神様の来ている薄手の白い衣はワンピースの様であり、川辺ではしゃぐ姿はさながら夏休みの少女の様だ。

 俺はおもむろにバックパックへ手を伸ばす。頼む、出てこい。

 願いが聞き届けられたのか、俺の手には大きな麦わら帽子が握られていた。

 イメージぴったり、しっかり花の飾り付きだ。


「女神様!今日は日差しが強いですから、良ければこれを使ってください!」


 今日一番の、ハキハキとした声が出た。


「おお、気が利くのう!だが我は日差しなどではどうもならんぞ。それに日差しも強くないぞ?」


「なに言ってるんですか!!いいから被ってください!!どうなっても知りませんよ!!」


 なにがどうなるのかこちらが聞きたいくらいだが、男の執念とは恐ろしいものだ。

 言ってる事は支離滅裂なのに、不思議と言葉が説得力を帯び始める。

 女神様は頭にハテナを浮かべながらも、帽子を手に取り被ったのだった。


 俺はその姿をまじまじと見つめ、小さくガッツポーズした。


 それから、途中で休憩を挟みながらもしばらく釣りを堪能した。

 釣果はまずまずで、女神様も二匹釣りあげる事が出来て嬉しそうだった。

 もちろん魚から針を外したのは俺だ。


「いやー面白かったの!我があの巨大魚を釣り上げた瞬間をしっかりと見ておったか??」


「もちろん見てましたよ。釣り上げた瞬間に魚にビビって大騒ぎするんだから」


「ぐ、ぐぬぬ……」


「それにどこが巨大魚ですか。20センチがいいとこでしょ」


「ぐぬ……ま、まぁ良いわ。それよりもお腹が空いてきたぞ!昼ごはんにしたいのじゃ」


 駄目だ、敬意を払わなければいけないとわかってるのに、からかうのが止められない。

 一旦落ち着こう……ふぅ。


「そうですね、丁度昼ですし、そろそろベースに戻りますか」


 ベースに戻るまでの道中も女神様は釣りのハイライトを一人で延々と喋っている。

 派手なジェスチャーのおまけ付きだ。


 ベースへと戻ってきた俺は早速準備に取りかかる事にした。

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