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天使の戦い

 -王令195年-


 エルはコソコソと移動していく。相手に気付かれないよう慎重に慎重に行かねばならない。




 なぜエルは天啓を授かったのにも関わらずコソコソと森の中を動いているのかとというと、王都から『堕落した天使の後始末』を頼まれたからだ。




 幼い頃より授かったその実力は恐れられているがそれと同時に頼りにもされている。それ故に『堕落した天使の後始末』などという大掛かりなものを任せられたのである。




 依頼の詳細としては「討ち洩らした堕天使が西南の森に逃げ込んだので捜し出して討ってくれ」というものだった。「全く王は何をやっているんだか......」と一人ため息を吐く。




 というのもつい最近、国を挙げての『脅威掃討』が行われたのだ。脅威掃討とは人間族にとって都合の悪い存在を抹消しようじゃないか!という人間族の「我が偉い。他の者は我以下だ。」という他を見下しまくった利己主義極まりないものである。




 エルはこの脅威掃討に嫌悪感を抱いている。同じ人間族であるということを恥じるくらいに。


 こういった奴は少なからずいるのだが、そういう奴等には結束するものもいれば、ひっそりと身を潜め細々と暮らしている。エルは後者の内の一人だ。




 過去にそういった奴等が結束し、王城へ攻め込んだ事例がある。しかし結果は見事惨敗。これにより王都の利己主義者達は更に調子付くこととなった。




 さて、そうこうしている内に堕天使が休んでいると思われる木の付近までやってきた。




「ここか......王に従うのも癪だが仕方ない」




 視認は出来ないが『魔力察知』が反応しているので間違いない。エルが『魔視』を発動しようと再び魔力を練りあげたとき、背後からいきなり声を掛けられた。




「やあ。そんなに敵意剥き出しでどうしたんだい?それじゃあ気配察知を使わなくとも森に入った時点ですぐに判っちゃうよ」




 エルは振り向き様に抜刀し斬撃を放つ......がしかしその斬撃は空を斬る。つまり誰もいなかったのだ。




 直ぐ様感知魔法をフル稼働し敵の居場所を掴もうとするも感知に引っ掛からない。相手は『隠密』系のものを習得しているかなりの強者だと判断する。




 静寂が訪れる。




 .........




 .........




 .........




「やあ。どうして隠れた?」




 最初に静寂を破ったのはエルだった。




「そりゃあ君は僕を殺すつもりだろうからね」




 またも声が聞こえる。が、しかし、今度は全方位から聞こえてきた。


 先程声を掛けたとき即座に振り向き、攻撃されたことへの対策だ。「なかなか機転の効くやつだな」とエルは感心する。




「なあに殺しゃしないさ。ちとおねんねしてもらうだけだ」


「ちょっと?ならいいかもな。ただし、お前も一緒にな」




 軽口を叩きあったところで火蓋を切ったのは全方位から聞こえる声の主だ。即座に全方位から頭に光輪だったものを乗せたエルと同い年くらいの青年が現れた。堕天使の情報と一致する。




 エルはどこかに一体、堕天使がひそんでおり、声は魔法で反響させているものだと思っていた。そのため少し反応が遅れ、腕にかすり傷が出来た。戦場での油断は命獲りと改めて確認させられた。エル、八人の堕天使はお互い距離を置く。




「おいおい、相手の戦略を読めたからって油断してたのか?ハッ!俺も随分舐められたもんだ」


「おめーのその考えも油断じゃねえのか?」


「フンッ!言っておけ!」




 目の前に容姿の同じ奴が八人もいるのは変な感覚だが全員が同等の、しかもある程度力を持っているというのは由々しき事態だ。このままでは数の暴力により殺されてしまう。




 そこでエルは『縛牢ばくろう』で全員を個々に分断する。ついでに『強奪』を使い力を奪う。




「獄中でおねんねしときな」


「クッ......」




 ちなみにこの『強奪』は体力を奪うだけでなく、武力や知識までをも奪う優れものだ。代わりに五人分までという条件付きだ。




 ......しかし天啓を授かったものが盗賊のような手法を使うのはどうかと思うがエルはそんなこと気にしないらしい。




『強奪』により五人分のパワーを一時的に手にしたエルは一人ずつ相手していく。




「よう。数で押し切ろうというお前の油断......気を付けた方がいいんじゃねえか?」


「ハッハッハッ!そりゃ忠告どうも。でもそんな余裕君にあるのかな?」




 意味ありげなその言葉にエルは後ろを振り返る。




 するとそこには『狂化』で『縛牢』を内側から強引に破ろうとする堕天使の内の二人がいた───

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