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デートするよ。その1.

ルナとティアがイチャイチャ♡するだけのバカップルなお話。

お礼が遅くなってしまいましたが、ブックマーク100件越えありがとうございます。

本当に感謝しかありません。

 まだ微睡の残る朝。私はベットに半身を起こし、両手で瞼を擦ってから大きな欠伸をした。

 隣から「すうすう」と穏やかな寝息が聞こえる。

 微笑みつつ視線をそちらに移すと私の愛する妻は未だに夢の世界にいるらしい。

 

 口から少し涎が垂れている。寝ぐせで髪がところどころはねている。

 ルティナが生まれてからは彼女なりに身だしなみに気を使ってるのだけど、今でも時折こういう昔と変わらない様子を見せる時がある。今日はその日みたい。可愛い。ルティナの教育の為に出来るだけしっかりあろうとする妻・ティアもそれはそれで素敵だなって思うけど、過去を知っている私からすればやっぱりこっちのティアのほうが見てて落ち着くものがある。

 ティアを起こしてしまわないように充分に気を付けて右手を彼女の頭に軽く乗せて撫でる。

 幸せそうに顔を綻ばせるティアが可愛い。

 心にじんわり温かいものが広がっていく。

 好き。どうしようもないくらいに好き。好きで好きで仕方ない。

 恋の病は結婚して互いに互いの伴侶となった今もまだ私の心を蝕んでいる。

 ううん、恋人だった頃よりも増して好きの気持ちが日に日に大きく大きくなっていっている。

 困ったものだよ。こんなにも愛してやまない人が出来るなんて。

 幸せ過ぎる。幸せ過ぎて少し怖い。


「ティア」


 名前を呼ぶ。それだけで鼓動が"ドクン"と強く脈を打つ。

 熱に浮かれて、右手は彼女の頭に乗せたままに顔を近づけて、寝ているティアの頬にキスをする。

 続いて唇にもしようとしてふと我に返る私。


 朝から何やってるかなぁ。

 急に恥ずかしくなってきて伸びなんかして誤魔化す。

 誰も見てないんだけどね。ステラ辺りが見てたら生温かい目で見られるんだろうなぁって思って、その様子を想像して私は苦笑いする。

 最も最近のステラはクレタと良い感じにバカップルになってるから人の事は言えない筈なんだけど。

 バカップルと言えば私達の娘・ルティナと義理の妹のプラムもここのところなんか怪しい。

 お母さんの目は誤魔化せないよ。二人は家族以上、恋人未満って感じだよね。

 私とティアの愛の結晶なルティナ。何処の馬の骨とも知れない奴がもしルティナの相手だったりしたら邪魔しちゃったりしてるかもだけど、プラムならいいかなって思う。

 二人が付き合っていつかは私達から離れて行って...。

 うん、考えるのやめよう。とっっっっても寂しくなった。


 目まぐるしく変わる自分の感情に蓋をするべくベットから出ようとする。

 身体を回転。足を床につけて立ち上がろうとしたらバジャマの裾が引かれる感覚。

 

「ティア?」


 見るとなんだかちょっと不機嫌。

 私何かした? 何もしてないよ?

 まぁなんだかよく分からないけどまず挨拶だよね。

 朝の挨拶は特に大事!


「おはよう、ティア」

「......おはようございます。ルナさん」


 ティアは言った後で頬を膨らませる。

 その様子が可愛くて可愛くて、"つん"って指で頬を突いたら空気が抜ける音がして私は堪らず笑い転げてしまう。


「あはははははははははははっ、可愛い。ぷすぅって。ははははははははは」

「もう、ルナさん」


 ティアの顔がますます不機嫌になっていく。

 これ以上怒らせるとまずい。

 無理矢理笑いを押し込めて私はティアを抱き寄せる。

 素直に私の胸の中に収まってくれるティア。

 それで大人しくなったティアにこれなら大丈夫かなって思って起きて早々に機嫌が悪かった理由を尋ねてみる。


「で、どうしてティアは機嫌が悪かったの?」

「ルナさん、分からないんですか?」


 ティアが私を半眼で睨む。

 考えてみるけど分からない。

 数日の私の行動を追憶してみてもティアを怒らせるようなことをした記憶はない。


「ごめん、分からない」


 なんか申し訳なくて謝る。

 ティアが私の首に両手を回し、唇を近づけて私の唇と重ねる。


「さっきルナさんは頬にしかキスしてくださいませんでした」


 あの時起きてたの? それよりそれが理由?

 可愛い。起きてからまだ数分なのに可愛いって何度思ったっけ?

 ああ、可愛いよ。私の妻が最高に可愛い。


「~~~」

「ルナさん?」

「ごめん。ティアが可愛くて可愛くて。大好きだよ」

「はい、私も大好きですよ」


 うわっ。そんな頬染めて言うんだ。

 何処まで私を魅了して悶えさせるかな、この子は。

 私は我慢出来ず、ティアをそっとベットに横たえさせる。

 見つめ合って愛を囁き合って、何度も何度もキスをする。


「ねぇ、ティア」

「はい」

「デートしようか? 二人きりで何処か行きたい」

「ルナさん、はい!」


 そうと決まれば善は急げ。

 私達は身体を起こして身支度を始める。

 いつもの服に着替えようとしてやめる。

 せっかくのデートなんだからもう少しお洒落な服を...。

 ティアを見る。彼女はすでに法衣の下に着るカボチャパンツを穿いて上着も身に着けようとしている。

 ティアも神官の成りで行くつもりだったかぁ。

 お互い正装が決まってるもんね。

 習慣って怖いよね。

 何も思わずそれにしようとするよね。

 ティアにも可愛い恰好をして欲しいから途中で止める。

 ここは服飾の町・リリン。

 それだけあって余所よりも可愛い服が溢れてる。

 私達だって女性だ。正装は決まってても可愛い服を見かけたら買ったりしてる。買うだけで全然着ていないのだけど。だから今日はそのどれかの服を着て。


「デートだからいつものじゃなくて可愛い服着ない?」

「そうですね。分かりました」

「うん、それともう一つ提案なんだけど」

「はい」

「ティアがどんな服選ぶのか楽しみにしたいから別の部屋で着替えようか。それと私が先に家を出るからティアは後で待ち合わせ場所に来て?」

「服のことは分かりましたけど、どうして別に出るんですか?」

「デートの楽しみ方の一つだからだよ!」


 一緒に出るのもいいけど、待ってる私のところにティアが駆けて来るっていうシチュエーションもいいと思うんだぁ。楽しみたい。やりたい。だから私はティアを押し切る。


「待ち合わせはゴーレム馬車ステーションのホーンウルフの像の前でどう?」

「ナナ公前ですね。分かりました」

「あれナナ公っていうの?」

「はい、魔物でありながら人に懐いて一人と一匹はいつも一緒。朝はリリンの町からラナンの町に仕事の為に出掛けて行くご主人様をいつも送って、夕方は帰って来るご主人様を迎えに行っていたそうです」


 何処かで聞いたことがあるような。

 それって最終的に悲しい物語になるあれだよね?


「そっか。ある日突然出先でご主人様が倒れてしまって、もう二度と帰ってこないのにナナ公はずっと迎えに行ってたんだね」


 先に粗筋を言うとティアが「えっ」と声を上げる。

 ん? 何か間違ってた? あれってそういう話だったよね?


「ご主人様倒れたりしませんよ? 逆にナナ公が倒れちゃってご主人様が懸命に最後まで面倒見ましたっていうお話ですよ」

 

 ただの愛犬家の話だったーーーーー!?

 でもおかしくない? それでなんでナナ公が銅像になるの? 普通はご主人様のほうじゃない? ご主人様の像あそこにないけど。


「それでどうしてナナ公が銅像になるの? ご主人様の立場は?」

「ナナ公は魔物で、なのに人に懐くのが珍しかったからじゃないでしょうか」

「そっか。そっか....」


 浮かばれないな。ご主人様。私がここで手を合わせておくよ。お悔やみ申し上げます。

 私は心の中で手を合わせ、服を持って部屋を出ていく。

 

「後でね」

「はい」


 ティアとのデート楽しみだ!!

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