そうだ! ギルドに行こう。
初期投稿(2018/12/01)から今まで(2018/12/20)ずっと魔石の説明が抜けていたので追加致しました。
基本スライムのような弱い魔物は倒すと魔石だけとなりますが、食用及び武器防具に転用可能な魔物は魔石と共に死体も残ります。尚、そのメカニズムは不明。神様がそう設定したから? ですかね(笑)
ということでよろしくお願いします。
説明が足りていなかったこと深くお詫び申し上げます..。
おはようございます。転生して二日目の朝です。
体験してみて分かったのですが、どうやらこの世界は地球と同じように太陽暦が採用されていて、時間も一日は二十四時間みたいです。分かりやすくて有難いです。
それでですね。今私はリリンという町の郊外。自分の家の二階プライベートルームにいます。
いきなり何言ってんだこいつ。って思いますよね。
先日草原で女性冒険者の方にここまで連れてきてもらったんですが、あの後「お金ないからどうしよう」って話していたら入院着のポケットから例の虹色に輝く鉱石がポロリと落ちてですね。
それをたまたま見た鉱石・宝石商の方が目の色を変えて私に詰め寄ってきて是非譲って欲しいと言われまして...。
あれはとっても珍しい鉱石なんだそうです。
それが一億ゴールドで売れちゃって一日でお金持ち。
そのお金で売り出されていたこの郊外の家を購入したってわけです。
ああ、家具は最初からありました。
不動産屋さんの話によると以前に住んでた方が置いて行ったらしいです。
おかげで助かりました。ベットでぐっすり眠れましたよ。
誰に語り掛けてるんだろう...。私。
◇
プライベートルームのソファ横。
壁に立てかけるように置かれている姿見鏡の前に立つ。
昨日と変わらずの美少女が映る。
ただ身に着けていた服は昨日までの野暮ったい入院着じゃなくてフリルのついた白のブラウスに黒のジャケット、膝上10cm程の黒いミニスカート、ショーツを見せるのは嫌だからスカートの下は紺のハーフパンツ、腰にはベヒモスの革で作られたらしい茶色のウェストポーチ、足は踝より少し上くらいの白いソックスを穿いている。髪も黒のリボンで結ばれてポニーテール。
お金があり余ったから昨日家を購入する前に購入してみた。
身体を捻ってなるべく全身を確認出来るように頑張ってみる。
「うん!」
二日前までの痩せ細って青白い顔をした私はもういない。
ここにいるのは前世日本十六歳の女性の平均的なスレンダーな身体つき。
日本人と西洋人の中間くらいの肌の色。血色の良い健康的な顔をした美少女。
うぅ。今更だけど自分で自分のことを美少女って言うの割と恥ずかしい。
"ぶんぶんぶん"恥ずかしさを忘れるために首を振る。
続いて頬を叩き、気合と共に私はドヤ顔。
そんな表情をする意味は特にないけど。
やっぱり恥ずかしくなって両手で顔を覆って小さく呻く。
朝から何やってんのかな。まだまだテンションがおかしいっぽい。
とりあえず姿見鏡から離れてソファに座り、落ち着いたら階下に降りて適当に朝食を食べる。
まだあまり食材を買ってないから本当に適当。
パンとミルクとリンゴだけ。
パンはフランスパンよりも更に硬く、味もあまりしなくて美味しくなかった。
これは...ダメ。自分で作ったほうがいいかも。
◇
朝食の後は町を散策。
あんまり大きな町じゃない。
イタリアのフェレンツェを小規模にした感じの街並み。
町の人達は清潔好きな人達が多いみたいであんまりゴミは落ちてない。
それに人口比率が殆ど女性。具体的に言うと98%くらいが女性。
屋台でベヒモスの串焼きを一本買ってそれを食べながら歩く。
牛の魔物だけあって味も牛でとっても美味しかった。
ある程度観光を堪能したところで道行く町民・いかにも主婦って感じのおばさんに声を掛ける。
「あの、すみません。この町に職業安定所みたいなところってありますか?」
お金はまだ三千万ゴールドくらい余ってる。
働いたりしなくても暫くは遊んで暮らせる。
でも私はそんなつもりない。
寝たきりじゃなくていい健康な身体。
世界を見て歩きたいし、前世で望んでも出来なかったこと沢山やりたい。
「職業安定所? そんな名前のところは知らないけどギルドならあるよ」
「そこでいいです。ありがとうございます」
お礼を言って立ち去ろうとするとおばさんに呼び止められた。
「貴女見かけない顔だけどこの町は初めて?」
「はい。昨日そこの郊外に引っ越してきました」
「ああ、あの家に。それじゃあギルドの位置も分からないだろ。案内してあげるよ」
「いいんですか?」
「なぁに、暇してたからね。たまには若い子と歩くのも健康にいいだろ」
「ありがとうございます」
昨日に続いて親切な人と遭遇。
この世界ってこういう人が多いのかな。
私は親切なおばさんにギルドまで案内してもらった。
◇
「ここがギルドだよ」
ふんふん。着いたギルドは本やゲームでよく見る感じの建物だった。
その中では酒場・食堂と兼業しているとこも多いみたいだけど、どうやらここもそうみたい。
おばさんと別れて中に入ると、筋肉隆々の男の人達が沢山いて、その中の一人が「よう嬢ちゃん、ここは嬢ちゃんみたいな子供が来るようなところじゃないぜ!!」っていうイベントが発生。
.....することはなく。
筋肉隆々どころか中にいたのは華奢な女性冒険者達。
私に気付くと「わぁ、可愛い」とか「ねぇ、パーティ組まない?」とか言ってきて私は揉みくちゃにされた。
…
「死ぬかと思った...」
おっぱいといい匂いの暴力。初めての経験。
なんとかそこから抜け出した私は嘆息してギルドの受付カウンターらしきところへ向かう。
栗色の瞳と髪。黒縁の分厚い眼鏡をかけた受付嬢がいた。
「こんにちは」
「あ、こんにちは。今日はどうされましたか?」
「私、昨日この町に引っ越してきて。それでこの町の紹介をお願いしたいです。それからギルド登録も合わせてお願いしたいんですけど」
「分かりました。では最初に町の概要から話しますね」
「お願いします」
リリンの町は公爵領の一角ということだった。
その公爵様はこの町から離れた場所に住んでいて領民にとても慕われているのだとか。
そんな公爵様だからこの町も平和。大きなトラブルもないという。
特産は衣料品。腕利きの職人が多く、遠方からわざわざこの町に買いに来る人もいるらしい。
「へぇ」
「それとですね」
この町の大きな特徴としてもう一つ。
この町は全てが女性によって運営されている。
女性による女性のための町。
その為この町に住めるのは女性だけ。
男性は観光客としてしか来れないらしい。
しかもそれにもいろいろ規約があってそれらを全部クリアした者しか町の中には入れない。
それだと今の世代で町が潰れてしまうのでは? と聞いてみるとその問題もすでに解決済みとの答えが返ってきた。
コウノトリスっていう人懐こい鳥型の魔物がいて、その魔物が生む卵は基本的に無精卵なのだけど、愛し合う二人の体液をその卵に掛けると有精卵となって温めていると十月十日後に子供が生まれるんだという。
女性同士、男性同士。もっと言えば人間でも魔物でも他種族でも卵から子供。
私の目の前の受付嬢さんも卵から生まれたのだとやや照れながら教えてくれた。
凄い世界。卵から人間。
受付嬢さん、見ている限りだと普通に人間。つまり遺伝上も何も問題ないよう。
もしこれが地球にあれば世界はもっと優しさで満ちてたんじゃないかな。
マイノリティとか苦しむ人いなかったと思う。
異世界。凄い!!
「という感じですけど他に質問ありますか?」
「いえ、ありがとうございます」
「はい。では続いてギルド登録に移りますね」
受付嬢さんが羊皮紙らしき茶色い紙と羽ペンを差し出してくる。
名前や住所の記入。それが終わると続いて差し出される水晶球。
「これは?」
「これに手を翳してもらうとステータスが分かるんです。合図をしたら右手をこれに乗せてもらえますか」
へぇ、面白い。こういうの現世でもなかったよね。
「はい。ではお願いします」
「はい」
言われて水晶球に手を翳す。
見ていると中心部から黒いモヤみたいなものが発生して、それがやがて文字や数字を形作っていく。
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名前:ルナ・アマオカ
種族:人間
職業:アークウィザード
レベル:10
体力:60
物理攻撃力:80
魔法攻撃力:200
物理防御力:20
魔法防御力:100
魔力:1000
素早さ:40
知力:120(MAX)
幸運:80(MAX)
バッシブスキル:女神ディアーナの祝福と加護、不老不死
スキル:全属性魔法レベル100(MAX)、打撃系武器操作レベル16
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「・・・・・」
「・・・・・」
「レベル10でアークウィザード...。魔法使い職の最上級職じゃないですか...。それに魔力1000、全属性魔法レベル100って...。壊れましたかね。この水晶球」
受付嬢さんが驚愕を通り越してまるで病床時の私を見ているみたいに真っ青な顔になった。
「あの、ちょっと試してみていいですか? 故障してるとなると大問題ですし」
「あ、はい」
受付嬢さんがカウンターから出て来て水晶球を持ってよろよろと他の冒険者のところへ行く。
水晶球に手を翳してもらい、測定した結果、水晶球は正常であることが判明した。
「ちょっと! どうなってるんですか!! 貴女一体何者なんですか!?」
何者って言われても...。
神様に特典をもらってこの世界に来た、ただのしがない転生者です。
なんて正直に言ったら余計に大騒ぎになるよね。
私は困ったときの秘儀・愛想笑いでその場を誤魔化した。
◇
「はぁ...。ギルドの受付嬢やって十年くらいになりますけど、こんなこと初めてです」
受付嬢さんの嘆息が聴こえる。
「すっげー。なぁ、パーティに入ってくれよ」
「そんな筋肉さんのところじゃなく是非うちのパーティに」
「お姉さまって呼ばせてください」
「可愛いだけじゃなく実力も凄いんだね」
おっぱい地獄再び。
揉みくちゃにされて呼吸困難に喘ぐ私。
「息が。また死ぬのは嫌ーーーーーーー!!!」
咄嗟に屈みこんでおっぱい回避。
女性冒険者達の足の間を上手く掻い潜って脱出に成功する。
「はぁ...。あの時の光景が見えた...」
「大丈夫ですか?」
「ええ、まぁ...。あ! そうだ」
おっぱいに潰されそうになったおかげで思い出した。
ベヒモスのポーチから以前巨大スライム及び普通のスライムを倒した際に手に入れた石を取り出す。
「これってなんですか?」
「それは魔物の核ですね。スライムのような弱い魔物は倒したらこの姿に変わります。食用及び武器防具に転用できる魔物は魔石の他に死体も残りますが、何故そうなるのかは詳しいことは判明していません。今回ルナさんが持ち込まれたこの魔石はギルドでゴールドと引き換えることも可能ですがどうしますか?」
「じゃあお願いします」
「はい。少々お待ちくださいね」
受付嬢さんはさっきの水晶球を取り出す。
その水晶球を私が渡した魔物の核に近づけると先程見たのと同じように中心部から黒いモヤ。
文字が形作られる。
<<可>>
「はい。確かにルナさんが倒されたものですね」
「不正防止も出来るんですね。ちなみに不正だった場合はどうなるんですか?」
「水晶球に<<否>>の文字が浮かびます。その際は場合によっては冒険者資格はく奪などの罰則が適用される場合もありますね。ルナさんはそのような方ではないと思いますが、念の為気を付けてくださいね?」
「はい」
受付嬢さんが微笑んでカウンターの奥へ姿を消す。
私が倒したスライムは巨大スライムが一匹、普通のスライムが百一匹。
全部で二万二千二百ゴールドの収益になった。
「ではこれからよろしくお願いします。えっと...」
「まだ名乗っていませんでしたね。ジーネと言います。よろしくお願いします、ルナさん」
私はジーネさんに会釈をしてカウンターから離れ、女性冒険者達の勧誘を苦笑いしつつ断り、ギルドを後にして家路に着いた。
その途中パンの材料や肉や野菜などの食材を買い込んで帰宅。
自分で作ったパンはふわふわでやっぱり美味しかった。