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黄金のワイルドボア? 娘のチートで楽勝だったよ。

 黄金のワイルドボア。

 その魔物の捕獲をリリンの町の食堂アルバトロステイルの店長マルグレットさんに依頼されて現在山中。

 いるかいないか五分五分の確立。

 この依頼別に受ける必要なんてなかったのだけど、もし断った場合私の写真を販売させてもらう。

 なんて黒い笑みで言われたものだから実質私に断る権利なんてなかった。

 ただの写真ならまだいいよ。そうじゃなくてそういう写真だからね。

 私は以前クエスト失敗のペナルティでこのお店の給仕として働いたことがある。

 そのお店の制服・スカート丈は短い。

 ここまで言えば分かるよね? そういう写真で脅されたんだよ!!

 無事依頼達成した暁にはデータ消してもらえる契約になってるから頑張らないと。

 しかし撮影にデータ保存。この世界のカメラとか他の機器のすべて電化製品ならぬ魔力製品。

 その多くを作り出したのがアリマ様。あの人ほんとに何者なんだ。頭の中どうなってるのか見てみたい。


「ルナ殿、ルティナ殿、まだ休憩はしなくて大丈夫だろうか?」


 うん、今回の依頼。

 私だけでなんとかするつもりだったけど、クレタが手伝いに手を上げてくれた。

 ティアやステラも内心は一緒に来たかったらしいけど、彼女達は別件が合って条件が合わず断念。

 これで私もティアも家を留守にせざるを得なくなったことからこのままでは可愛い娘が家で一人ぼっちになってしまう。

 そんなこと出来ない――――。

 そこでルティナに私かティアかのどちらかに同行するならどっちがいい? って尋ねたところ私の側についてくることになった。

 ルティナも一応保護者同伴が条件で冒険者登録はしていても冒険らしい冒険はしたことがない。

 なのでそれをしてみたかったんだと思う。

 ティアの今回の用事は冒険ではなくステラと共に学園の雑用だしね。

 私達はいろんな意味で悪目立ちしているからリリンの町の人達にこうやって用事を頼まれることが割と多々あるのだ。

 慕われてるとも言える。


「ルティナは大丈夫?」


 私と手を繋いで一定の速度で歩くルティナに尋ねる。

 今日の彼女はサファリジャケットにハーフパンツ、サファリハット。背中にリュックを背負った探検家な格好。

 可愛い。可愛いよ。うちの娘が滅茶苦茶可愛い。


「大丈夫です。ルナお母様」

「そう。疲れたら言うようにね」

「はい!」


 ものすごく笑顔。楽しくて仕方ないという感じ。

 ああ、癒される。娘の笑顔だけでご飯三杯は食べれるね!!


「ルティナ殿は可愛いな」

「私とティアの子なんだから当然じゃん!」

「はい。お母様達の子供に生まれられて嬉しいです」


 うっわ、なんて破壊力抜群な殺し文句。

 私は堪らずルティナを抱き締めて頬ずりする。

 こんなに可愛いんだよ? 普通に考えて親の反応がこうなっちゃうのは当たり前でしょう!!

 私に頬ずりされる間、ルティナは「くすぐったいです。ルナお母様」って笑んでいた。

 どこまで可愛いんだ! 娘。


「ルナ殿もティア殿もすっかり親バカだな」


 そうだよ。親バカだよ。

 娘の為ならなんでも出来る! って真剣に思うくらいに親バカだよ。

 ここで例えばステラなら私達を半眼で見ていたりするのだろうけど、クレタはそんなことなく微笑ましいものを見る目で見てくれている。

 大人だなぁ。クレタ。私達の行動に文句ひとつ言わないし、ルティナの歩みに合わせて歩いてくれてるし、道に危険がないか確認する為に私達の少し前を歩いてくれてる。

 それに今は立ち止まってこちらを見つめながらも周囲の警戒は怠ってない。

 いざとなったら自分が真っ先に動いて私達を守れるようにしてくれてる。

 さり気ない彼女の気遣い。これはステラが惚れるのも分かるよ。


「ごめんね。クレタ。ついつい娘が可愛くて」

「気にしなくていい。自分もルティナ殿の可愛さは分かるからな」

「ありがとう。じゃあ行こうか。ルティナも行けるよね?」

「はい。ルナお母様」

「うん」

「では少しずつ進もう。何度も言うがくれぐれも疲れたら言ってくれ」

「分かった。ありがとう」

「これが騎士の務めだからな」

「クレタさんは立派です」

「そうか? ありがとう、ルティナ殿」


 私達は更に深く山の中に分け入った。

 さすがに道が険しくなってきたので私はルティナをおんぶして獣道よろしく荒れた道を進んでいく。


「ルナお母様、ごめんなさい」

「謝らなくていいの。子供を守るのは親の責任なんだから」

「ルナお母様...。大好きです」

「っ。ルティナ。ありがとう」


 はい。大好きいただきましたーーー!!

 元気百倍。何処かのパンなキャラクターの台詞が口から出そう。言わないけど。

 

「ルナお母様待って」

「んっ?」


 気を抜けばニヤけてしまいそうになる頬の筋肉を無理矢理そうはならないように緊張させて歩いていた私にルティナがいつもより若干神妙な声色で制止を掛ける。


「どうしたの?」

「お母様、この先に複数の魔物の気配がします」


 そう言って真っ直ぐ()()()()を見つめるルティナ。

 私には()()何も感じない。

 これでも魔力探知を最大にまで広げているのにも係わらず。

 これってつまりルティナの探知は私のそれを凌駕しているってこと?

 末恐ろしい。

 娘がチート能力者すぎる件。

 クレタもかなり驚いている。

 私達は顔を見合わせて走り始めた。


 数十メートル程走ってやっと私の魔力探知にも反応がかかる。

 確かにいる。どんな魔物かは分からないけれど何かがいる。


「黄金のワイルドボア...。だったらいいなぁ」

「そうだったら手筈通りということでいいだろうか?」

「うん。今回の依頼は捕獲だから慎重にお願いね」

「ルナお母様、私がやります」

「ルティナが? 出来るの?」

「出来ます」


 自信たっぷりな返事。

 確かに彼女ならやれそうな気が私もする。

 

「分かった。時間は稼ぐから隙が出来たらお願いね」

「はい!」


 せっかく見つけた魔物が逃げてしまわないように出来るだけ早く。

 それでいて背中のルティナの身の安全に気を付けながら私達は獣道を駆ける。

 この間もクレタが草を薙いでくれたり、障害物をどかしてくれたりしているから有難い。

 走りやすい。そのおかげで私達は僅かな時間でその群れが確認出来る位置まで辿り着く。


「いた! 黄金のワイルドボア」


 他のワイルドボアより一回り大きい体躯。

 身体を覆う毛皮が金色に輝くイノシシの魔物。それが三匹。

 その周りに複数のノーマルワイルドボア。


「一度に三匹も見つかるとは。珍しいな」

「これも娘のおかげだったりして」

「...あり得るかもな」

「冗談のつもりだったんだけど」

「ルティナ殿はそういう力があるような気がしてな」

「実は私もそんな気がしてる」


 クレタと二人でルティナを見る。

 ルティナはよく分からないという顔をしていた。


 結界を張ってワイルドボアが逃げられないようにしてそれから私とクレタは彼らの前に躍り出る。

 彼らは私達の姿を見止めるとノーマルワイルドボアが黄金のワイルドボアを守るようにして私達の前に立ち塞がった。

 鼻息が荒い。地面を強く蹴って威嚇しているのもいる。

 それでも私達が引こうとはしないのを見ると彼らは一斉に飛び掛かってきた。

 ううん、一斉にって言うのは御幣があるかな。

 第一陣、第二陣、第三陣、それから黄金のワイルドボアって感じで陣形が敷かれてて今飛び掛かってきたのはこのうちの第一陣。

 クレタはそれを真正面から受け止めた。

 余裕綽々な顔。ドワーフって力持ち。

 私は力に自信がないので突撃を避けて躱すだけに留める。

 第二陣が来る。それもまた避ける。

 第三陣は来ない。用心深い。統率がしっかり取れている。


 クレタは自分に向かってきたワイルドボアは剣で仕留めているけど魔法型の私は魔法を構築する時間も与えられず躱すことに手一杯。

 ()()()()()()()

 私達の役目は彼らの注意を引くことだけなんだから。

 

「サンダーレイン」


 出力を絞った雷の矢。

 それが私達の遠く背後にある茂みの中から放たれ、的確にすべてのワイルドボア達に突き刺さった。

 身体が痺れてこれで暫くの間彼らは動けなくなる。

 今の間に茂みからそれをやってくれたルティナを手招きしてそのリュックから麻縄を取り出し、目を白くして失神しているワイルドボア達の四肢をきつく縛り上げる。

 これで後はアルバトロステイルまで運べば依頼完了。

 問題はこれをどうやって運ぶかだけど。


「...しまった。そこを考えるの忘れてた」


 私が自分のアホさに蹲って呻くとルティナが頭を撫でてくれた。

 ありがとうありがとう。お母さん、アホでごめんね。慰めてくれてありがとう。私の娘。


「問題ない」


 クレタの言葉と同時に私達を覆う影。

 急に天気が悪く?

 見上げるとその影の正体は真の姿になったプラムだった。


「プラム」

「プラムさんだー!」

「こういうこともあろうかと思ってな。呼んで置いて良かったようだな」

「プラムは時間バッチリに来た。褒めることを要求する」

「ああ、さすがだな。プラム」

「えっへん」


 クレタ。貴女偉いよ。私とは大違いだよ!!

 プラムもありがとう。

 そのプラムが地上に降りて来る。

 背中にワイルドボア達と私達を乗せて。

 プラムは再び天空に舞い上がった。


 依頼完了後。

 私達の食卓に並ぶ黄金のワイルドボアのステーキ。

 三匹全部もらうのは忍びないからと一匹をマルグレットさんが分けてくれたのだ。


「今日はお疲れさまでした。ルナさん、ルティナちゃん。クレタさんもありがとうございました」

「ティアもお疲れ様。それとステラも」

「本当に疲れたわ。人使い荒過ぎよ。あの教師」

「力仕事は大変でしたね」

「まったくだわ。あたし達女子だってーの」

「リリンの町は全員女性ですよ?」

「比喩だって。比喩」

「あ、すいません」

「別にいいけど。で、クレタ達はどうだったの?」

「自分達はルティナ殿のおかげで楽だったな」

「へぇ、そうなんだ」

「プラムさんも手伝ってくれました」

「プラムは当然のことをしただけ」

「そうですか。ありがとうございます、プラムちゃん」

「満更でもない」


 皆それぞれ会話が弾む。

 これはこれで楽しいけど、これではいつまでも。


「さ、話は後にしてまず食べない? 温かいうちのほうが美味しいよ」


「そうですね」

「そうだな」

「そうね」

「プラムも同意する」

「はい!」


 全員でそれぞれ食前の挨拶。

 そして私達はご馳走をパーティさながら楽しく騒ぎながらいただく。

 黄金のワイルドボアは美味しかった。今までの人生で食べて来てたどの豚肉よりも最高に美味しかった。



 途中ステラがお酒を持ち出して来て飲んで悪酔いしたり、クレタも釣られてそうなったり、ジュースと間違えてお酒を飲んだティアが私に色香で迫ってきたり、それらを娘達の教育に悪いと判断した私がルティナとプラムを両手に一人ずつ抱えてダメな大人達から避難させたりという出来事もあったけど、それはまた別の話。

ルティナ誕生秘話。

↓愛し合うルナとティア。その様子を見てみませんか?

https://novel18.syosetu.com/n2502fe/1/

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