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仲間皆で行く温泉旅行。

「ひなびた温泉の家族宿泊券ですか」

「はい!」


 それは停学中の間の出来事。

 町に買い物出掛けてそれを終え、戻ってきた娘がティアに開口一番そう言った。

 詳しく聞いてみると商店街でお菓子を買ったら福引券を一枚もらい、その店の店員さんに促されるがまま福引のガラガラを回してみたらそれが当たったらしい。

 ちなみにこれは二位の品で一位の品は地下牢で一週間囚人体験だったとか。

 いやいやいや、おかしいよね!! なんでそれが一位なの!!

 以前クエスト失敗のペナルティで地下牢送りっていうのがあった時も思ったけど、この町はちょっとおかしい。

 肯定行に捉えると犯罪率が恐ろしく低いからかなぁ。

 滅多に仕事が無くて看守さん達も暇なのかもしれない。

 だからそういう体験やら見学やらで囚人ならぬお客さん達も呼んで...。


 くっ。そう考えると涙ぐましくて可哀想な気もして来る。

 同情はする。けど体験には行きたくない。したくない。


「六名様ご招待って書いてあります」


 冒険者パーティの最大人数だね。丁度いい。


「じゃあ皆で行ってみようか」

「はい」

「うん!」


 私の鶴の一声。温泉旅行が決まった。


 アリマ公爵領の辺境・ローズ村。

 その名の通り薔薇の産地で村のあちこちに薔薇特有の香りが漂っている。

 温泉にも薔薇の花。徹底してるなぁって軽く笑いながら湯かけして温泉に足を浸ける。

 天然岩の露天風呂。標高が少し高いところにあってそこから雄大な自然を楽しむことが出来る。

 

「はぁ...」


 ゆったりくつろぎの湯。至福の刻。

 日本人....。じゃなかった。この世界の名前はフォーレストだからフォーレスト人?

 それともアリマ公爵が属している国のトゥラソス人?

 あれ? 私って何者なんだ? 突然この世界に湧いた感じの人間だからなぁ。謎。まぁいいかぁ。

 兎に角温泉の気持ちよさが分かる生命体に生まれて良かったぁ。


 じわじわじわじわ温泉の湯が身体に浸透していく。

 ここの湯は美肌効果があるらしい。

 そういう温泉って湯に僅かトロミがあるのはなんでなんだろうね?

 葛粉をお湯で溶かしたみたいな。

 うん、変なこと考えるのは辞めよう。


 私が肩まで湯に浸かっている間仲間達も様々な形で温泉を楽しんでいる。

 ティアは娘ルティナと一緒にのんびり湯浴み。

 ステラとクレタは相変わらず口喧嘩をしながら湯浴み。

 二人寄り添っているし、顔を赤らめてお互いにお互いの身体をちらちら気にして見ているもんだから傍にいるこっちが無性に恥ずかしくなってくる。

 貴女達さっさと恋人になってしまえ!! このリア充が。...それは私もだけど。

 

 そんな中プラムがこちらに来る。

 ――――妙に温泉内が騒々しくなっていた。


「ルナ姉さん」

「プラム、いい湯だね。どうしたの?」

「緊急事態が発生した」

「ん~?」


 その時温泉に野太い声が轟いた。


「ガハハハハッ。我らが名はイエロードラゴン。これは絶景かな絶景かな」


 露天風呂上空に数十匹のドラゴン。

 なんて、なんて大胆な覗きだ。

 女の敵。許せない!!!


"ざばっ"私は立ち上がってイエロードラゴンに両手を翳し、魔法を発動させようとして。


「ルナ姉さん、プラムは忠告する。イエロードラゴンが嬉しそうにルナ姉さんの裸を見ている」

「へっ...。わっ!!」


 プラムの忠告で咄嗟に腕で胸を隠して湯の中に戻った。

 くそっ。恥ずかしい。


「ぐふふふっ」


 あーーー、ムカつく。あのドラゴンムカつく!! 刈りたい。

 イエロードラゴンは仲間を呼んで更に数が増えた。


「おーー、これはこれは」

「いいですねぇっ」


 イエロードラゴンそんな奴らばっかりか!!!

 というか、この世界の黄色い身体を持つ魔族って変態であることが決まってるの?

 イエローリザードマンもそうだったよね。


「ルナ姉さん」

「~~~」

「ルナ姉さん」

「...っ。何? プラム」

「あいつらはプラムが倒す。その代わり後で膝枕を要求する!」

「いいよ。幾らでもしてあげる」

「では、行く」


 プラムが湯から上空へ大きく跳躍する。

 紅の光が彼女を包み、現れる彼女の真の姿。

 イエロードラゴンのような蜥蜴に似た姿ではなく、大型犬のような身体にふさふさした紅の毛。

 頭や尻尾は炎のように揺らめいていて、背中にはフェニックスを思わせる翼。


「綺麗」


 思わずそう呟いてしまったのは果たして私だったのか、それとも仲間の誰かだったのか。

 プラムは翼をはためかせてイエロードラゴン達に急接近していく。

 それをさせまいと力を溜める動作を見せるイエロードラゴン達。


 ――――ブレスだ


 なんとなく直感で分かる。

 

「プラム!!」

「何の問題もない」


 プラムは四方八方から一斉に放たれたブレスを右手一本で強引にねじ伏せた。


「つっよ...」


 あの子本気になるとあんなに強かったんだ。

 プラムの人智。龍智かな? を超えた強さに驚愕するイエロードラゴン達。

 次はプラムが彼らに力を見せつける番。


「炎、来い。フレア」


 ブレスに炎系の大魔法の一つを纏わせて放たれたその力。

 それによりイエロードラゴンの半数が消し炭になった。


「な、何故だ! 我らはただ覗きに来ただけ。なのになぜここまでされないとならないのだ!!」


 いや、それがダメでしょ。本当にクズだな。イエロードラゴン。

 プラムも呆れて...?


「プラムは問う。こういうことは今回が初めてか?」

「いや、こういう大胆なのは初めてだが今までもこそこそとは見させてもらっていた」

「死刑」


 うん、当然だね。

 イエロードラゴンの応えを聞いてぶちキレたプラムはそれはもうイエロードラゴンがほんの少し気の毒に思えてしまうくらいに彼らに対して暴虐の限りを尽くした。


「プラムはやりすぎたかもしれない」


 私の膝の上。すっかり元の調子に戻ったプラムが気落ちしたようにそう呟く。


「仕方ないよ」

 

 頭を撫でやると少しは元気が戻ってきた様子。

 あれは仕方ない。イエロードラゴンの数に村全体が騒然とした感じになってたしね。

 多分村の人達は村を滅ぼしに来たんだろうとか考えてたんだろうけど実体はただの覗き。

 これは黙っておこう。そのほうが何かとこちらに都合がいいような気もするし。


「ルナ姉さん」

「んっ?」

「もっと撫でてくれることを要求する」

「ふふっ。はいはい」


 私はすぐさまプラムの願いを成就させてあげる。

 そうしていると嫉妬したらしいルティナが背後から抱き着いてきたのでプラムを満足させた後、ルティナも膝枕してあげた。

 


 ああ、ティアも?

 はいはい、後でねっ。お姫様。

ルティナ誕生秘話。

↓愛し合うルナとティア。その様子を見てみませんか?

https://novel18.syosetu.com/n2502fe/1/

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