チートな娘が生まれました。
第二部スタートです!
コウノトリスの卵を専門の業者さんから譲り受け、ティアと愛し合ってその卵に生命の源を与えてから間もなく孵化の時期となる十月十日。
私とティアは親の仕事として今日も二人で卵に抱き着いて温めている。
最初は鶏の卵程度の大きさだったものが毎日温めているうちにどんどん大きくなっていって今は身長157cmの私の半分くらいの大きさにまでなっている。
中の子はとても元気な子らしくたまに卵をゆらゆら揺らしてみたり、私達にここにいるよって存在を教えてくれるように殻を叩いたり、蹴ったりして振動をこちらに伝えて来る。
生まれてくる子はどんな子なんだろう。
ティアに似ていたら嬉しい。
心から愛する人の面影が子供にあれば嬉しいって思うのは当たり前のことだよね。
きっとティアもそう思ってるんだろうなぁ。
私と恋人繋ぎで手を繋ぎ合って卵を母親の慈愛に満ちた瞳で見つめているティアを見る。
「生まれて来る子がルナさんに似ていたら嬉しいです」
ほら。ねっ? やっぱり。
「私はティアに似てる方が嬉しいな。きっと可愛い子が生まれるよ」
「ルナさんに似たほうが可愛いですよ」
「ティアだよ」
「ルナさんです」
「・・・・・」
「・・・・・」
「「ぷっ」」
どちらも恋人バカで親バカ。
私達は肩と肩が触れ合う距離に寄り添って卵の中の子に語り掛ける。
生まれてくる子が女の子なのは分かってる。
女性同士愛し合った末の子であれば絶対に女の子。男性同士であれば男の子。
そういうものらしいから。
「お母さん達は貴女のことを待っていますよ。この世界はとても素敵な世界です。ですから安心して生まれて来てくださいね」
「生まれてきたら一緒に遊ぼう。沢山冒険しよう。待ってるよ――――ルティナ」
ルティナ。私達の子供の名前。私の名前とティアの名前を合わせて付けた名前。
卵に触れるとルティナは「待ってて」って言うように殻を強く蹴った。
◇
それから数週間。
いよいよ孵化の時。
卵が大きく振動して殻のあちこちにひび割れが起きる。
もうすぐこの卵からルティナが誕生する。
その様子を今か今かと固唾を飲んで見守る私達仲間全員。
「これあたしを最初に見たらあたしを親だって思ったりする?」
「ルティナは鳥の雛ではないのだぞ。そのようなことはない」
「でももしかしたら」
「子供が欲しいなら自分とステラで作ればいいだろう!!」
「ちょっ、何言って!!」
「すまない」
「プラムは薄々感づいていた」
「私も」
「私もそうかなって思っていました」
「「~~~!!」」
爆弾発言をしたステラとクレタのことは知ってたよ?
だって二人共喧嘩しつつもお互いのこと尊重してたし。
特にステラなんて分かりやすい。
憎まれ口叩きながらもクレタの言うこと聞いてるからね。
そりゃあそういうことなんだって分かるでしょ!!
「幸せになってね」
私の賛辞の言葉で顔をますます真っ赤にする二人に小さく笑って私は卵に視線を移す。
殻が大きくひび割れて、中から出て来るルティナの手。
もう少しもう少し。頑張れ! 頑張れ!
ここで手を貸したらいけない。
この辺りは卵から生まれて来る動物達と同じ。
胸の前で手を組んで祈るように様子を見守っているティア。
暫くすると殻の上半分がルティナの手で放り投げられる。
ついに私達の子供の顔が私達の前に露わになった。
黒の双眸と亜麻色の髪。正しく私達の遺伝子を受け継いでいることがはっきり分かる。
「あぁ...」
感極まって涙するティア。
私も同じで瞳が潤む。
仲間達も感動しているらしい。皆言葉がない。
「・・・・・」
ルティナは私達を見てにっこりと微笑んだ。
泣くのではなく微笑む子。そういう子もいるのかな?
ようこそこの素敵な世界へ。ルティナ。
◇
刻は飛んで十年後。
ルティナはまるで手が掛からない赤ちゃんだった。
夜泣きも無し。いやいや期も特に無し。
お風呂大好き。赤ちゃんって入浴させる時に暴れたりする子もいるって聞いたことあるけどルティナに関しては全然そんなこと無し。大人しくされるがまま。気持ちよさそうに瞳を蕩けさせてお湯の温もりを楽しんでいた。
夜はぐっすり寝て朝に起きて私達と遊んで昼寝する。
あまりにも出来すぎた子すぎて私とティアは逆に不安になる時があった。
「赤ちゃんはもう少し我が儘だと思っていたのですけど」
「普通はそうだと思う。ルティナが特別なんじゃないかな」
「もっと甘えて欲しいです。すぐにこの子が遠くに行ってしまいそうで、たまに怖いんです」
「...私もだよ。でも多分大丈夫だよ」
「どうしてですか?」
「だってこの子寝ながらしっかりティアの指掴んでるし。甘えんぼだよ、この子」
「くすっ。そうですね」
そんな、親を寂しさで心配させる赤ちゃんだったルティナも今ではもう十歳。
「ルナお母様、ティアお母様ーーーーー!!」
黒の双眸を輝かせ、亜麻色のショートボブを揺らしながら私達のところに駆けて来る。
「ルティナお疲れ様」
「お疲れ様です。ルティナちゃん」
ルティナは。というより私達は今年からアリマ様が運営されている学園に通い始めた。
初等部と高等部。学園生活と冒険者家業の両立。
大変だけど毎日が充実してて楽しい。
幸せで満ち足りている。
現在昼休憩。
初等部と高等部の校舎は離れていて普段は様子を見守ることも出来ないけど、休憩時間は別で初等部・中等部・高等部を繋ぐ憩いの広場と呼ばれる場所で会うことが出来る。
簡単に言うと右手に初等部、左手に中等部、上手に高等部があってその三つの学部を繋ぐ道の先・中心部にあるのがこの広場。下手に行くと通学路でやがてリリンの町に入っていくとこになる。
学園は当初ラナンの町だけだったけど、ここ数年でリリンの町とホレイリーの町にも新たに建設されたのだ。
「ルナお母様」
「ん、どうしたの?」
「ティアお母様」
「はい、どうしましたか。ルティナちゃん」
「エクスプロージョンを使えるようになりました」
....................。
「「えっ!!」」
「見ていてくださいね」
「黒の炎、すべてを焼き尽くす闇の業火。私の前に現れその力を示して。私の名はルティナ、すべての魔法を使役する存在。地を抉き、空を切り裂き、燃え盛りなさい」
「エクスプロージョン」
ルティナの放った魔法が学園の校長像を直撃。
木っ端微塵に吹き飛んで駒かな破片がここ学園の広場に散らかる。
それを茫然と見る私とティア、それからたまたま通りかかった校長。
ルティナは得意気な顔をして「どうですか!」なんて鼻息を荒くしている。
...なんで校長の像狙ったの? これって弁償になるのかな。
それよりその歳で大魔法を扱えるとか天才か! さすが私の血を引く娘。
「あ! 光魔法も覚えました。慈悲深き創造神様、どうかそのお力を私にお貸しください。ホーリープロージョン」
先程の黒炎の魔力塊ではなく光の魔力塊がすでに砕けた後の校長の像の台座を粉微塵にする。
ビックバンってこんな感じだったんだろなぁ。
っていうかルティナはこの学園の校長に何か怨みでもあるの?
何かされた? だとしたら私も親として黙ってないよ!!
「どうですか? お母様達」
「大魔法はまだ私も扱えません。娘に先を越されてしまいました...」
「ねぇ、ティア。敢えて聞くけど現実逃避してるんだよね?」
「この像は弁償になるのでしょうか。いいえ、その前に私達は停学処分になるのでしょうか」
「ルティナ」
「はい!」
「大魔法...。ううん、魔法を公共の場で使うの禁止にします」
「ごめんなさい...」
「分かったのならいいよ」
やってしまったことは仕方ない。
ルティナの頭を優しく撫でる。
目を細めて幸せそうにするルティナが可愛い。
「あ、あの」
「ん? 何ティア」
「私も...その...」
「可愛い。おいで」
「はい!!」
私は二人を抱き締めて、柔らかい頬に交互にキスをした。
私の恋人と娘が滅茶苦茶可愛い――――。
「わ、わたしの....わたしの像が.....」
粉微塵になった像。風に吹かれてその粉も飛んで行く。
それを蹲って絶望、この世の終わりのような顔をして見送るふくよかなおばさん。
誰だっけ? あの人。何処かで見たことあるような...!?
「貴女達」
三人仲良く二週間停学処分を申し渡されました。
ルティナ誕生秘話。
↓愛し合うルナとティア。その様子を見てみませんか?
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