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ペナルティは突然に。

サービス回です?

このくらいならR15の範囲内ですよね? ちょっと不安。

 油断していた。

 抜けていた。

 町の外での薬草採集などその場からあまり動かないクエストの場合は自分の周りに魔力感知の魔法を巡らせておくのは至極当たり前のこと。

 私はそれを怠ってしまって、そのせいで醜態を晒す羽目になってしまった。


 どどどどどうしよううううっ....。

 私が夢中で薬草を毟っている間に気配を消して近づいてきた巨大スライム。

 スライムにそんな芸当が出来るなんて知らなかった。

 これまで散々同胞を倒されたから、その無念を少しでも晴らそうとか、そんな思いが巨大スライムに宿ったりでもした?

 私はまんまと飲み込まれて野外で裸にされてしまった。

 あ! 巨大スライムはその後倒したよ。

 倒そうって意識したわけではなく、恥ずかしさで無意識に手が出てた。

 渾身の右ストレート。巨大スライムは一瞬で絶命した。


 全身が火照ってる。

 湯上りみたいに肌がほんのり紅い。

 身体を両手で隠しながらその場に蹲りつつ考える。

 以前同じ目に遭ったティアを助けた時のことが蘇る。

 まさか自分も経験することになろうとは...。


「原人やるしかないか...」


 哀愁を漂わせながら歩いていくは森の中。

 程よい葉が茂っている木々を探して歩いて見つけたらその葉をいただく。

 身体に巻くと近くに仲間がいるのを魔力探知で発見した。


 うっわ。今の姿は見られたくない。


 こっちに来ないでって祈るのに願い虚しく彼女はどんどん近づいて来る。

 向こうも私の魔力感じてるもんね。仕方ないよね。


「・・・・・」

「・・・・・」


 遭遇。

 出会ったのは今の私と()()()()をしたステラだった。


 家に着くまでの間にどれだけ注目を集めたか...。

 着いてからも留守番してたティアとクレタに白い目で見られたし...。

 プラムに至っては「ルナ姉さん、ステラさん。プラムはそういうのは教育に良くないと思う」ってゴミを見るような目で私達を見てからそう言った。

 プラムは私とティアのことは「姉」認識だけど、ステラとクレタのことは何故か普通に「仲間」なのだ。

 んで、なりたくてなったわけじゃないやいっ。

 私は妹からの辛辣すぎる言葉に撃沈した。


 その後「ルナ姉さん、それでもプラムはルナ姉さんのこと見捨てたりしない。だから安心していい」ってフォローしてくれたけど。

 その言い方が。その優しさが追い打ちで逆に心を抉られました。


 着替えを終え、所変わってギルド。


「クエスト失敗ですね」


 ぐふっ。

 巨大スライムに襲われ、服もろとも薬草も溶かされてしまったからやり直しに行ってもいいかとジーネさんに聞きに来たら切って捨てられた。

 物凄く愉快そうな笑顔なのが悔しい。


「ルナさんとステラさんはこれで三度目の失敗ですね。ですからペナルティが発生します」


 えっ? 三回? リッチと今回の薬草採集は分かる。不本意だけど分かる。

 でも残りの一回って何? まったく身に覚えがないんだけど。


「あの、失礼ですけど二回ではないでしょうか?」

「リッチの件と今回の薬草採集の件。それからオークの件で三回ですね」

「オーク? でもあれは」


 そりゃあ王都に被害与えたよ?

 けどさ、一応オークから都市を救ったんだから失敗扱いって酷くない!!


「王都から苦情が多数寄せられてまして」


 あ、そうですか。

 それなら仕方ないですね。

 ごめんなさいごめんなさい。ほんとごめんなさい。

 私は心の中で泣いて現状を受け入れた。


「この場合次のいずれかを冒険者さんに選んでいただくことになってるんですが」

「次のいずれか?」

「はい。一日町のボランティア活動か一日町の地下牢行きですね」

「待って! それ選択権あるようで無くないですか?」

「そうでもないですよ。牢でゆっくり骨休めされてリフレッシュ出来たとおっしゃられる冒険者の方々も案外います」


 いや、無理でしょ。

 

「あたしはそうしようかな」

 

 ええええええええええええええっ!!!?


「ちょ、ステラ本気?」

「一日何もしなくていいってことでしょ? 三食出るって聞いたことあるし。のんびり出来そう」

「・・・・・」


 凄いなぁ。私には無理だ。

 前世の常識が邪魔してんのかな。

 はっきり言って私はボランティア活動一択だなぁ。


 思わぬ形で受けることになったペナルティ。

 私はボランティア。ステラは牢で骨休め。

 翌日早朝から開始となることをジーネさんから聞いて私達はその日は家に戻った。


 十二月二十四日。クリスマスイヴ。

 この世界にもクリスマスという概念はあるらしい。

 ううん、もしかしたらアリマ様が治める公爵領だけかも?

 何処に行ってもクリスマス一色。

 リリンの町も例外ではなく町行く人々は何処か浮足立ち、今日という日を目一杯楽しもうとしている。

 普段より人が多い。中でもカップルがあちこちで見られる。

 女性同士で手を繋ぎ合ったり、腕を組んだりして歩く姿。

 私はその様子を横目で見て小さく吐息を漏らす。

 脳裏にティアの顔が浮かんだ。


 食堂アルバトロステイル。

 ここが今回私がボランティアでお世話になる食堂。

 ボランティアの内容は毎回変わるようでその時その時人手が足りなくて困っているところにペナルティを受けた冒険者がギルドから派遣されるようになっているらしい。

 要ボランティアを受ける側からの事前申請。

 

 現在時刻は朝の七時。

 なのに食堂からはすでに美味しそうな料理のいい匂いが外まで漏れ出してきている。

 

「おはようございます」


 挨拶をして中へ。

 出迎えてくれたのは店長のマルグレットさん。

 私もこの食堂割と頻繁に利用している。

 ホーンラビットの煮込みシチューが堪らなく絶品なのだ。

 長時間煮込まれた肉はトロトロ。噛まなくても舌の上で蕩けて無くなる。

 ガルーダの卵オムライスデミグラスソース掛けも美味しい。

 家庭では真似出来ない。

 

 味は文句なしなんだよねぇ。味は。問題なのはちょっと変なお店だってこと。

 値段も庶民に優しいお手頃価格。問題なのはちょっと変なお店だってこと。

 大事なことだから二回言ったよ! ここテストに出るかもだからね。


「よく来てくれたね。待ってたよ」

「はい、どうも。今日はお世話になります」

「美少女が来てくれて嬉しいよ。早速着替えて来てくれるかい?」

「はい」


 これが嫌なのだ。

 このお店の給仕服はちょっと普通じゃない。

 肩出しタイプでスカートが膝上20cmに迫ろうかというミニ。

 女性好きの女性が多く集まるお店がこの食堂アルバトロステイル。


 更衣室で先輩給仕さん達と一緒に頬を紅らめつつ着替えて店内へ。

 マルグレットさんが私を品定めする。


「うんうん。いい」


「可愛いよね」

「うん、可愛い」

「あの子誰?」

「ほら、時々お客さんで来てくれる」

「黒炎の魔導士」


 先輩達、辞めて!! 黒歴史をほじくり返さないで。

 

「スカートの下ハーフパンツ穿いてたりしないよね?」

「はい。大丈夫です」

「捲ってみていい?」

「はい。......へぅ!!?」

「あははっ。冗談冗談」


 目が本気だって語ってるんですけど!

 先輩達数人こっちに近づいて来てるんですけど!

 嘘...だよね? 待って待って待ってーーーーー。


「ふゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」


........

.......


「今日一日よろしくね」

「........よろしくお願いします」


 働く前から気力ごっそり持っていかれた。

 私もステラと一緒に牢でごろごろ選んでおけば良かった。

 

 何はともあれ朝八時開店。

 普段は十時からだけど今日は特別。

 開店と同時に大勢の客が雪崩れ込んできた。


 死ぬ程忙しい。

 次から次に注文が入る。

 あっちに行ったりこっちに行ったり、私達給仕は目まぐるしく店内を奔走する。

 

「今見えそうだった」

「惜しかったねーー」


 そんなお客さん達の声は恥ずかしいけどそれどころじゃない。

 

「ホーンラビットの煮込みシチュー追加でお願いします。大至急」

「三番テーブルさん、お水がまだ出ていません」

「十二番テーブルさん、クラーケンリングとワインです」

「七番テーブルさん、料理あがったよ。持ってって」

「はい」


 朝からずっとひっきりなし。

 お客さんがはまるで途切れずに次から次にやってくる。

 中には私達の格好を楽しみに来ている人もいるようだけど、お触りなど絶対してこないのが助かる。

 自然なのがいいらしい。だからお触りなんて邪道以外の何物でもないんだとか。

 そういう楽しみ方もあるんだね。奥が深い。


「ルナちゃん」

「はい」

「ルナちゃんの家族も来てるみたいだよ」

「えっ」


 先輩に言われて軽く店内を見回す。

 奥の方に見つけるティア達の姿。


 ティアの視線がこちらに釘付けになっている。

 瞳がやや潤んでいるように見える。


「行ってきたら? 私丁度注文取りに行こうと思ってたからルナちゃんと代わるよ」

「ありがとうございます」


 お盆と注文票を持ってティア達のところへ。

 

「ルナさん、そのままお持ち帰りしたいです」ってティアかららしからぬことを言われた。


 大繁盛。

 夕方近くになってやっと朝食兼昼食の賄をいただいて後はずっと働きっぱなし。

 二十時を過ぎてこの日の食材が空になり、それでやっと私達の仕事は終わった。


「ルナちゃん、今日はありがとう。助かったよ」

「いえ、お役に立てたなら良かったです」


「このまま働いてくれたらいいのに」

「お客さんにも大人気だった」

「白だったって騒いでた人もいたよね」


「ねぇ、ルナちゃん。このまま残らない?」

「謹んで辞退します」


 解散。

 疲れた。精神的にも身体的にもくたくた。

 もうお風呂に入って安らかに眠ってしまいたい。


 今日はまだそんなわけには行かないけど。


 ふらふらしながら思い足を引きずって家に辿り着くとつやつやした顔のステラが私を出迎えてくれた。

 くそーーー。やっぱり私もそっちにしておけば良かったよ!!

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