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告白? しました。

 急速に意識が遠のいて私は床に倒れた。


 目が覚めると床の上ではなくベットの上だった。

 未だ微睡の中にあるような意識の中で手掛かりを求めて視線を彷徨わせる。

 

「・・・・・」


 と私が眠っているベットに腕を枕にして突っ伏して眠っているティアの姿。

 その様子とこの状況から推理して恐らく彼女が私を助けてくれて看病してくれていたのだろう。

 起き上がる気力はまだない。

 なので転がったままティアの頬に手を伸ばす。


 すべすべしてる。程よくぷにっとしてて柔らかい。

 心地良くて人差し指で暫く遊ぶ。

 ぷにぷにつついていると不愉快そうに眉を寄せつつティアが目覚める。


「んっ...?」

「おはよう、ティア」

「おはようございます。........ルナさん!? 起きたんですね。良かったです」


"ほっ"としたのかな。胸に手を当てて息を小さく吐き出すティア。

 そこまで心配させる程私の具合は良くなかった?

 事情を知っているであろうティアに聞いてみる。


「私、どれくらい寝てた?」

「三日丸々です。もう目覚めないんじゃないかって本当に心配したんですよ」

「三日!???」


 嘘。そんなに!??

 びっくりした。まさかそこまで自分が昏倒してたなんて思いもしなかった。


「お医者様は風邪と疲労が重なって身体が限界を迎えたんだろうっておっしゃってました。だから今は休ませておくのが一番だって。もう、そんなになるまでどうして言ってくださらなかったんですか! 本当に本当に心配だったんですよ。無理しないでください...」


 疲労。そっか。全然平気だって思ってたけど、むしろ毎日楽しんでたけど、異世界に来た疲れが溜まってたのかもなぁ。やってしまった。逆の立場だったら私も絶対心配で心配で仕方なかっただろう。

 

「ごめんなさい」


 心から謝罪する。

 一緒に手を彷徨わせるとティアがしっかり握ってくれる。

 瞳が潤んでいる。どれだけ心配させていたのかが分かる。

 

「ごめんなさい、ティア...」

「はい」


 それっきり二人共無言になって訪れる静寂。

 だけど居心地の悪さは感じない。

 二人きりのこの空間が心地良くて若干くすぐったい。


「あれ、そう言えば」

「?」

「ステラとクレタは?」


 この部屋には私とティアしかいない。

 他の二人は自分の部屋かな。

 まぁこの宿に入る際に一人一部屋ずつ借りたから多分そう。

 

「ステラさんとクレタさんはラナンの町に行かれました」

「えっ、なんで? リッチは?」

「そのリッチが私達に追い詰められたことでラナンの町に移動したみたいで。なのでお二人はあちらに行くとおっしゃいまして先日向かわれました」

「そうなんだ」


 これも私のせいだよなぁ。

 リッチを見つけらず挙句の果てに倒れて結果逃亡を許してしまったんだから。


「はぁ...。クエスト失敗になるのかな。これ」

「仕方ありませんよ。ルナさんの身体のほうが大事です」

「ティア。...ありがとう」

「はい。あ、そう言えばお腹空いていませんか? 女将さんに何か軽いものを頼んできますよ?」

「うん。言われてみれば小腹が空いてる気もする」

「分かりました。すぐ戻ってきますね」

「うん」

 

 ティアが立ち上がって私に背を向ける。

 私はそのままティアが部屋から出ていくのを見送って――――。


 の筈だったのに。


 私は歩き出そうとする彼女の法衣を片手で掴んでいた。


「ルナさん?」

「あれ? どうして...? ごめん、私。あれ、放せない???」

「...ふふ、寂しいんですか?」

「そう...。かな? そうかも。ごめん、行かないで。食事は良いからここにいて」

「ルナさん、可愛いです。ルナさんもそういうこと言ったりするんですね」

「私をなんだと思ってるの」

「ごめんなさい。私からはルナさんは完璧な人に見えていたので」

「全然そんなことないよ」


 私は笑う。ティアはそれを見て微笑み、隣に座り直して。

 かと思ったらベットに入って添い寝しようとしてきた。


「ちょ。何してるの? 風邪移るよ」

「移してくださってもいいですよ?」

「良くないよ!!」

「心配してくれるんですね。ありがとうございます」

「当たり前でしょう。だから」

「大丈夫です」

「いや...あのね?」

「大丈夫です」

「・・・・・」


 ティアは私が何を言っても首を頑として縦には降らず、結局横に入ってきた。

 この子意外と頑固だったんだ。知らなかった。


「温かいです」

「それはまぁ、私がずっと寝てたから」

「そうですよね」

「自分で言って自分で照れないで」


 私も恥ずかしくなってくる。


「・・・・・」

「・・・・・」


 でも落ち着く。

 ティアがいてくれると安心する。

 

 なんだかまた眠くなってきた。


 ........。

 もう少し。もう少しだけ起きてたい。


「ねぇ、ティア。聞いてくれる?」

「はい」

「私ね...」


 なんでそんなことを話そうと思ったのかは分からない。

 身体の芯に残る熱がそうさせたのだろう。

 私はティアに自分が転生者であること、前世は寝たきりだったことを全部話した。

 途中からティアは泣いていた。

 心配させた上に私のつまらない話でまた泣かせてしまった。

 申し訳ないと思うのに口は止まらなかった。

 

「そんな身体だったから今こうやってちゃんと自分の意思で動いてくれるのが嬉しくて。私は今幸せ。ねぇ、ティア.....」

「...ううっ...すんっ...はい...」

「好き。貴女が――――。..........すぅすぅ」


 肝心なところで意識を手放してしまって後のことは知らない。

 そもそも熱に浮かされていた私は自分が何を話していたのかまるで覚えていなかった。


 翌日。

 

「ふぁ...っ」


 漸く起きれるようになって私はベットに半身を起こして伸びをする。

 久しぶりに気持ちの良い朝。

 まるで転生してきたあの日に戻ったような。


「.....夢だったりしないよね」


 今までのが全部夢だったら私は間違いなく数年は落ち込む。

 初めてのスライム退治、服から大金が出て来てびっくり事件、ギルドでステータスに驚き事件。

 そして仲間との出会い――――。


「ティア」

「はい」


 思わぬところから返事が戻ってきて驚愕する。

 私のすぐ横。頬を染めてぎこちなく笑っているティア。


「な、なんで?」

「覚えてないんですか?」


 えっ? 覚えて?

 ああ、そう言えば私が止めても強引に添い寝してきたんだっけ。

 頑固なとこあるんだなぁって思ったばかりだった。そうだそうだ。


「覚えてる。うん、覚えてるよ」

「そ、そうですか...」


 ティアは私から視線を外す。

 流れる一種異様な気まずい空気。


「あ、あの」

「うん?」


 ティアが私に覆い被さって来た。

 ベットに押し倒されてほんの数秒目と目が合わされ、それからほんの一瞬唇が重ねられる。


「わ、私。女将さんに朝食を頼んできますね」


 ばたばたと部屋から出ていくティア。

 私はその後ろ姿を見ながら終始茫然としていた。

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