お姫様抱っこ 後 風邪引きました。
この辺りの話から百合成分が増えていきます♪
今日も今日とて元気にクエスト。
今回もまたジーネさんに個人的にお願いされて久しぶりにホレイリーの町まで出向いてきた。
依頼はアンデット退治。墓場に不死魔族の君主リッチっていう奴が住み着いて墓を荒らしているのでそいつを討伐して欲しいという内容。
アンデットと言えばこっちには敵の宿敵であるティアがいる。
「主よ。彷徨える魂をお救いください。ターンアンデット」
さすが神官。
苦も無く次々とアンデット達を浄化していく。
安定している。
ただこの子の場合、対魔物となると思ってもなかったトラブルを引き起こすことがあるからしっかり見張っていないといけない。
油断はいけない。そう思っていたのに、私は何処かで気が抜けていたのだろう。
「あっ」
ティアは足元の石に気付かず躓き、アンデットを巻き込みながらこけた。
「ティア......。平気?」
「くっ...」
「くっ?」
「臭いですーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
そりゃまあ腐ってるしね。
かなり離れた距離にいても臭うんだから密着したらそれはもう凶器になるのは分かる。
「あたしはあれ、絶対に御免被りたいわね」
「珍しく気が合うな。自分もだ」
ステラとクレタは地面を転がって悶えるティアを見て可哀想な子を見る目。
そういう私も多分同じ目をしているんだろうなぁ。
ハイライトが消えて死んだ魚みたいな目。
陸に打ち上げられて苦しむ魚。
そんな感じで苦しむティアを私はただただじっと見続ける。
かける言葉が見つからない。
「.....っ。うっっ」
やがてティアは気絶した。
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「「「嘘だろーーーーーー!!!」」」
アンデットの魔の手に堕ちる前に咄嗟にティアを回収してお姫様抱っこ。
女性が女性をこうやって抱くのは普通の女性なら多分無理だろうけど私はステータス的に問題ない。
「「「「「「「「「「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ」」」」」」」」」」
襲い来るアンデットの集団から私達は背を向けて逃亡する。
ステラとクレタでは一対一ならともかく対集団となると少々分が悪い。
それなら私はと言えば全属性魔法を使えるだけあってやろうと思えば対アンデットに有効な光魔法も使えるだろうけど、実はちょっと自信がない。
光魔法って神様への信仰度によって威力などが変わるから。
元々現世日本の出身。神様への信仰なんて忘れつつある国。
私もその国の出身だけあって都合の良いときしか頼らないタイプ。
信仰なんてしてない。
実際ディアーナさんっていう死神さんに会って転生させてもらった身だから本当に存在してるのは分かっているけれど。
そんなんだから、ね?
「ルナ、起死回生の手は!?」
「あるならやってる」
「しかしティア殿は気持ち良さそうだな。幸せそうに眠っている」
「えっ? ...ほんとだ。可愛い」
「今そんなほのぼのパートじゃないでしょーーーーーー!!」
「だよね」
「だな」
走って走って無数のアンデット達から無事に生還する。
アンデットは足が遅いっていう弱点があって助かった。
「はぁ、はぁ...はぁ....はーーー....」
「ぜーぜーぜー...ぜぇぜぇ」
「はぁはぁぜーぜーぜぇはぁ」
墓場を抜けて走った先、ちょっとした広場を見つけて私達は小休止。
息を整えてこれからのことを話し合う。
「で、どうしよう? あいつら倒すのはティアがいないと辛いと思う」
「悔しいがそうだろうな。あれだけの集団となると少々骨が折れそうだ」
「それはともかくルナはどうしてティアを抱いたままなの? 降ろしても問題ないと思うけど」
「だってもし不測の事態が起きた時ティアをわざわざ抱きかかえ直すの時間かかるし」
「とか言って降ろしたくないだけなんじゃない?」
「っ」
正解。
腕の中の温もりが愛しくて降ろしたくない。
二人には言わないけど。
「まもなく夜が明ける。そうなればどうせアンデットは一度土に潜るだろう? 今夜は討伐を諦めて明日また改めてからということにしたほうが良いと思うのだが、どうだろうか」
「うん、それがいいと思う」
「あたしも意義はないわ」
アンデットの統領のリッチが出向いてくれたら別だけど。
用心深いのかその姿を墓場で見ることはなかった。
何処に隠れているのか分からない限り、無理してあそこに戻るより出直したほうがいいだろう。
「そうと決まれば」
「んっ..」
ホレイリーの町に戻ろうとそちら側に足を向けた時にティアが目覚める。
私にお姫様抱っこされていることにすぐに気付き、顔を真っ赤にしてティアは私の首に手を回して顔を私の胸に埋めた。
「うぅっ...。恥ずかしいです。ルナさんの顔が見れません」
「とか言いながら降りようとはしないのね」
「微笑ましいな」
「二人共余計なこと言わないで!!」
「・・・・・」
もう暫くこのままティアを抱いていたいし。
「あ、あの。私...もしかしたら足を捻ってるかもしれなくて。それで、あの...今無理をしたら悪化するかもしれないので、だから...ルナさん、宿まで連れて行ってもらえますか?」
「うん、勿論」
可愛い。捻ってる「かも」って自分で分かるでしょ。
「ふふっ」思わず小さな笑みが漏れる。
ティアはますます恥ずかしくなったのか、私にしがみ付く腕の力が少しだけ強くなる。
「ありがとう...ございます」
「気にしなくていいよ」
私達はステラとクレタの二人に生温かい目で見られながら宿に帰還した。
◇
ホレイリーの町の宿。
前日深夜から明け方まで起きていた。
つまり徹夜だったからか目覚めると時間は昼過ぎ。
それでもまだ寝たりない。
気を抜くと仲良くくっ付きそうになる上と下の瞼を気合を入れてくっつかないようにして、口から零れる涎をすずっと吸い上げて飲み込んで、私はベットからどうにか這い出た。
「眠い...」
身体がふらふらする。
もし床に転んだら、そのままそこで寝ちゃうこともあり得るかもしれない。
意識がぼぉっ...とする。
心なしか、身体が熱いような気も。
不老不死でも特別身体が丈夫になったわけじゃないしなぁ。
あくまでも人並み。
もしかして風邪引いたかもしれない。
「これは、よくない...なぁ...」
急速に意識が遠のいて私は床に倒れた。




